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SS置場8
看護師(モブP?+SP?)
区分としてはもしかするとシャチペンかも。CP色は一応ないのですが。基本、シャチとペンギンしか居ませんが、
ところどころペンギンさんが酷い目に遭っている場面が入ります。実際の場面とも違うのですが、まぁ、モブxペンが
平気な人のみ進んで下さい。これ、かいても書いても終わらなくてポメラの文字越えたー。前半のエロエロ場面は
全カットしたのに長くて!そもそもコレ、書くつもりはなくてですね、悪役さんの台詞を「こんなんでこんなんでこう」
とか考えてて、じゃぁ船戻ってからは?と、今度はシャチとペンギンのやりとりを「こうでこうでこうで・・・」と考えてたら
シャチが書きたくて堪らなくなった!w なので主人公はペンギンさんですがシャチが美味しい配役してます。
書くだけで時間掛かったので誤字チェクとか後で…










目が覚めたら見慣れた顔が視界を掠めた

見慣れているけど、久しぶりに見る顔。
どうしてこの顔が・・・と、ぼんやりと考えているうちに相手の顔が笑みを浮かべる
「おはよ、ペンギン。喉乾いてねぇ?」
言われてみれば確かに乾きを覚える
というよりも、それまで感じていた乾きが相手の言葉で自覚されただけなのだ
頷くのが見えたのか、脇でごそごそする気配がして、横になっていたベッドの上半分が角度を変える。
医務室を連想したペンギンは 彼の背後に見える景色が医務室ではない事に戸惑った
(俺の、部屋?)
自室に こんな怪我人用のベッドはない。
そもそもペンギンは船に戻った記憶も自室に帰った覚えもないのだが、
彼の周りに見える景色は自分は救出され船に収容されたのだと考えるしかないだろう
「ん。これ飲んで? コップじゃなくて悪ぃな」
彼が差し出したのはコップではなく水差しだった。
少し起こしたベッドに横たわったままのペンギンにはその方が飲ませやすいと判断してのことだろう
そこから、一口、二口と水を飲む。
「ゆっくり飲めよ」
彼の言葉を聞くまでもなく、ペンギンは少しずつ、大きくはない水差しの8割ほどを喉に流し込んだ。
飲み終えて息を吐いたのを見てベッドが水平に戻される。
元から、ベッドサイドの柔らかい明かりしかなかった室内が、すーっと灯りを落とした
「シャチ?」
「腹減ってっか? おまえ、ほとんど喰ってなかっただろ。次に目ぇ覚めたらなんか喰わしてやる。けど、最初は重湯だな」
「そうか」
今はまだ眠れという事か。
そう思って目を閉じたペンギンは、ギシ、と音を立てたベッドにもう一度目を開く。
だが、暗い室内では視覚は当てにならなかった
代わりに 揺れるベッドの振動が隣に誰かが潜り込んだのを知らせる
「おい、」
相手に向かって声を上げる。
確かめるまでもない、隣に居るのはさっき見た仲間でしかありえない
「悪い、ペンギン。ここで寝かせて? おまえ 思ったより目ぇ覚まさねぇから、俺もう眠くて・・・」
くぁ、とあくびで語尾が掻き消される。
どうやらシャチはペンギンが目を覚ますまでずっとついててくれたようだ
幸い、自分が寝かされているベッドは大きめのもので 二人並んで横になってもまだ十分に余裕があった
(そういえば、このベッドはどうしたんだ。医務室から運んできたのか)
では自分のベッドは代わりに医務室に収まっているのかと考えたのを最後に、隣で規則正しく繰り返されるシャチの
寝息につられたように ペンギンの意識も眠りに落ちた




(・・・ん・・・、)
は、はぁ、とせわしない呼吸が喉から漏れる
(、ぁ・・・う、ん・・・)
真っ暗な闇の中、伸びてくる手がペンギンを押さえつける
「ぁ・・・!」
体を這い回る感触に ぐらりと頭が揺れる
否を伝えようとしたその動きは強い力に押し開かれた足を抱え上げる腕にさらに激しくなった
(は、な・・・せっ)
振り払おうとした腕が動かない。 そうだ、ペンギンの腕は縛られ自由を奪われていた
「ぅあ・・・っ」
腰が床から浮き上がるほど持ち上げられた足が、相手の肩に乗った感覚があった
無防備すぎる体勢に全身が身構える
来る――、と、衝撃に耐えようと歯を食い縛ったペンギンの額に、ひやっと冷たいものが触れた


「ペンギン?」

すぐ耳元で聞こえた声に、ハッと目を見開く。
視界には、見慣れた仲間の顔が広がっていて、彼から伸びた手はペンギンの額に乗っていた
「寝汗すごいな。少し熱あんじゃね?」
額に触れた手が動く
シャチは近くにあったサイドテーブルからタオルを取ってペンギンの額に押しつけた

ふわふわと柔らかい感触が額の汗を拭っていく。
首元まで軽く拭いて、つん、とシャチの指がペンギンの頬を突いた
「微熱程度だな。起きたついでに上だけでも着替えちまうか」
身を起こしたシャチが離れていくのが見える
室内は相変わらず薄暗い予備灯のみで照らされていて、一旦明かりの届かない場所に消えたシャチが
着替えとタオルを持って戻ってきた
手早く前が広げられ、湯で絞った温かいタオルが汗を拭っていく。
「袖、抜いちゃって」
「・・・ああ」
言われるまま、袖から腕を抜く
そのペンギンをごろりと転がしたシャチが 今度は背中を拭いている
先ほど目が覚めた時には気付かなかったが 今のペンギンは船員服ではなく上下の離れた病人服を着ているようだ。
新しい服を着せられタオルや着替えを片したシャチが再び隣に潜ってくるまで、ペンギンは彼にされるがままで寝転がっていた
・・・まだ、きちんと頭が働かないのだ
着替えの後、水差しから飲み物を貰うのまでシャチの言う通りに従って 再び目を閉じる
酷い夢の後だったが、疲れが溜まっていたのか 目を閉じたペンギンは再びすぐに眠りに引き込まれていく
"次起きたら飯だな"
シャチの声が聞こえた気がするが、ペンギンは返事を返す前に眠ってしまっていた




・・・眩しい。
瞼を通して入ってくる日差しが視界を明るく変える
まだ眠っていたいような、もう眠るのに飽きたような中途半端な気分で横になっていたペンギンは
鼻孔を擽る匂いにつられて目を開けた

「おはよ、ペンギン」
また、シャチの顔だ
開けた視界の中、真っ先に飛び込んできたのは仲間の顔で、今度もシャチは目を覚ますペンギンの顔を覗き込んでいたらしい
「・・・おはよう」
挨拶を返したペンギンに、にっと笑ってシャチが身を避ける
そこには彼が用意したらしい碗に入った朝食があった。
食事といっても、重湯なのだが。
ペンギンの視線が碗に向いている間にシャチがベッドを起こす
手早くタオルを敷いたシャチがまず軽く喉を潤せと水差しを寄越した
一口、喉を通っていく水は冷たくて目が覚める。
そういえば未だにペンギンはシャチの持つ水差しから飲んでいる。そろそろコップでもいいんじゃないかと
考えていると、「ほい、朝飯」という声と一緒に重湯を掬ったレンゲが目の前に差し出された。
思わずシャチの顔を見る
「ん? 腹減ってるだろ。食えって」
にこにことレンゲを差し出す彼はこの違和感に気付いている様子はない
自分で食える、と言いたいところだったが、ペンギンが食べると信じて疑わないシャチの顔を見ているとそれも言い出しにくい。
少しの逡巡の後、ペンギンは黙って口を開け、彼の差し出すレンゲから重湯を飲んだ

温かい液体が胃に落ちていく。
じわりと染み込んでいく温もりはそれだけで栄養を吸収したような気分になる
実際、用意された物はじっくりと時間をかけて煮込まれたスープを使った栄養たっぷりのものだろう。
だがそれよりも 温かいものを口にした瞬間、ぽつぽつと体に灯がともるような力の沸く気分がした

「・・・うまい」
無意識のうちに声が零れていた
それを聞いたシャチが満面の笑みで頷く
得意げな彼の顔を見ると、まるでシャチ自身がこの朝食を作ったようにも見える。
彼は昨夜ペンギンと同じベッドで眠っていたはずだから、そんなはずはないのだが。
「だろ? もっと食えよ、全部」
にこにこと笑顔で差し出される次のレンゲを口にする
用意された朝食を全部腹に納めると すっかり体力も回復したような気持ちになった
「さすがにまだ起きちゃダメだって。重湯くらいじゃすぐ消化しちまうぜ。次はもう少し粥っぽいもんにしてやっからまだ寝てろ」
言うが早い、シャチはベッドを倒してしまう
「目を覚ますまでは点滴で栄養補給してたんだ。ちゃんと固形物を食えるようになるまではベッドから出んな」
船長命令だかんなと言いつけたシャチが食べ終わった皿を盆に乗せて立ち上がる
扉から出ていく彼の向こうにちらっと人の姿が見えた
ドアが閉まりきる直前、話し声が漏れ聞こえた気がするが、その意味を理解する前に訪れた暗闇がペンギンの瞼を閉じる

『どうだ、様子は』
『飯が美味く喰えるみてぇだから大丈夫。心配ないスよ』
そんな会話が交わされていたのも知らずに 回復を待つ手負いの獣がそうするのと同じに ペンギンは体の要求に従って
眠りに就いた






(・・・ぅ、ん・・・)
ゆさゆさと体が揺れる
もういい加減解放してくれと疲労に痺れる頭で考えながら ぼんやりと目を開く
視界の先は真っ暗だ
いや、違う。目の前を何かが覆っていて、だから目を開けても何も見えないだけだ
きゅ、と胸に走った刺激に脚が跳ねる
それを逃げる動きと思ったのか、のしかかる相手はペンギンの脚を押し広げ、更に深くまで押し込んできた
(うぅ、う・・・っ!)
ガツン、と最奥に届く塊に仰け反る
もう何も反応を返す力も残っていないというのに、押し込まれたそこがひくひくと蠢いて締め付けた
丸一昼夜、繰り返し与えられる刺激を覚えた体は持ち主の意に反して勝手に快楽を貪り続ける
もういやだ、と叫ぶ声が出ないのは、声を出すべき口が塞がれているからで、
さっきからじわじわと刺激のある苦みが舌を刺していた
ぐい、と咥内を占めていたそれが更に奥へと進もうとする
咄嗟に逃れようと振りかけた頭を、何者かの手が押さえる
喉の奥まで押し込まれ、噎せそうにえずくペンギンの咥内で、青臭いそれが弾けようとしている
(ぅうう!うぅ!)
暴れて逃げようともがくペンギンの咥内で、ぶるんと震えたそれが大きく膨らむ
――いや、だ
そう思った瞬間、ふわりと頬を何かが包んだ

「ペンギン、目ぇ開けて」

聞こえた時には声に従って目を開いていた。
目の前には、いつもの仲間の顔。
(・・・シャチ)
掠れた呼び声は外には出なかったはずだ
だけどシャチはその声に答えるように笑顔を見せた
「服、着替えような。汗ひでぇわ、おまえ」
両頬を包むシャチの手が すり・・・と軽く顔を撫でて離れていく
「下着も全部替えちまおう。ついでに清式済ませっから。ああ、シャワーは明日・・・や、明後日まで我慢な?」
夢から覚めての突然の日常に頭が追いつかない。
そんなペンギンを分かっているのかシャチはどんどん話を進めていく
ピン、とペンギンの鼻先をシャチの指が弾いた
「明日の体調次第で髪も洗ってやれっから、今は洗髪は辛抱な?」

言われた言葉にペンギンが頷くのを確認して シャチが離れていく
着替えと湯桶、タオル等を取りに行ったのだろう
そこでようやく現実が戻ってきてペンギンは大きく息を吐いた
確かに、酷く汗に濡れて気持ちが悪い。
船で目が覚めてからシャワーも浴びていないからついでに清めてもらうのは有り難かった
仲間の手でというのは少し気恥ずかしいものがあるが、ペンギンもシャチも医療行為には慣れている
普段おちゃらけているがシャチはあれでいて治療や看病にあたる時はきちんと医師や看護師の貌になるのだ
「おまたせ。上から拭いてくから気持ち悪いとこあったら言えよ?」
戻ってきたシャチがさくさくと清式を済ませていく
慣れた手つきは上手いもので、拭かれていくペンギンに不満はなかった
「髪も洗ってやりてぇけどなぁ」
着替えを手伝うシャチが髪に指を伸ばしながら漏らした
「止せよ、汚れている」
「これくらい平気だって。空気洗髪っつーか、手櫛だけでもちょっとは気持ちよくね?」
ぱさついて油が浮いているはずの髪をシャチの指が梳いていく
そういえば、シャワーも浴びていない男の隣で よく平気で眠れたものだ。
そんなことを考えていると、隣に潜り込む気配がして驚いた
「おい、シャチ」
「いいじゃん、一晩くらい。俺おまえの世話任されてんの。一緒に寝ても誰も文句言わねぇって」
そういう問題だろうか。
そもそも一番文句を言うべきなのはシャチなんじゃないのか?
「汚れているぞ」
「あ、てめ。俺の清式に文句付ける気か?汚れなんか残してねーよ」
おやすみーと背後で暢気な声が上がる
シャチにベッドを出ていくつもりはないらしい
そろそろと身を動かして彼の方を見る
眠るため、目を閉じたシャチの横顔を映す明かりを見ながら、そういえばシャチは予備灯しか点けていなかったが
やりにくくなかったんだろうかと今頃になって気付いたペンギンも、シャチの寝顔を眺めているうちに眠ってしまっていた





「じゃーん!今日はお粥に少しおかずがあんぞ」
どうだ、固形物!と他人事なのに嬉しそうにシャチが言った。
起こしたベッドに座ったペンギンの前にセッティングしていく手つきもどことなく楽しげだ
お粥の碗を取り上げようとしたシャチの手を制して 「自分で食べる」と言ったペンギンを見て、
うんと一つ頷いてシャチは碗をペンギンに譲った
「まぁ、もう平気だろ。うん。てめーで喰え」
何の事だろうかと思いながら碗とレンゲを手に取る
持った手の、袖から白いものが見えて、なんだと眺めると包帯が巻いてあった
「擦過傷があってさ。暫く動かさない方がよかったんだよ。まぁ、もう平気だろ。痛くねぇよな?」
「ああ。平気だ」
水差しも粥や重湯のレンゲも、これまで全部シャチが持っていたのはその為か。
言われてみれば納得の処置だが それならそうと言えばよかったのに。
とはいえ、ペンギンも理由を聞かなったのだから人のことは言えないだろう
両手首に巻かれた包帯に今まで気付かなかったのも鈍いが、これまで殆どを眠って過ごしていたのだから仕方ない。
座って食べるペンギンを見ていたシャチが、それと・・・と言葉を続ける
「その様子だと洗髪も大丈夫そうだな、ってぇか、シャワーもオッケーだ」
「そうか」
持っていた碗から目を上げたペンギンは嬉しそうな顔をしていたのだろう
シャチが釘を刺すように付け加えた
「けど、手の傷を濡らしたくねぇから洗うのは俺だかんな」
「・・・そうか」
「こら、そこでテンション下げんな、清式も俺がやってんだから変わんねーだろが!」
まぁなと頷いて食事を続ける
タオルで拭くよりもやはり流水で身を洗えるのは嬉しかった
髪も、いい加減洗いたくて仕方なかったのだ。まぁ、これはどちらかというと隣でシャチが寝ているから余計に
気になっていたというわけだが。
「んじゃ、喰ってちょっと休憩したらシャワーにすっか。昼間の暖かいうちがいいもんな」
でもゆっくり喰えよと言われて、おうと頷く
といったところで粥と少々のおかずではどうしたって食べ終わるのは早い。
わざとじゃないぞと思いながら食べ終わってみれば、やはりシャチの予想よりも早かったようだ。
苦笑を浮かべる顔がそう語っている
「朝食片づけてくるから、戻ってきたらシャワーにしよう。おまえの部屋、簡易シャワー付いてるから医務室じゃなくて
こっちにしたんだ」
「そうだ、俺のベッドはどうした」
医務室にあると答えながらシャチが出ていく
やはり最初に予想したとおりこのベッドは医務室から拝借したものらしい。
戻ってきたシャチの肩を借りてシャワーに向かい、明るい場所で服を脱いだペンギンは、
どうしてシャチがずっと予備灯の中で作業していたのか、その理由に初めて気付いた

目立った傷はさほどなかった。
どちらかというと包帯を巻いた手首の傷が一番大きな怪我だろう
だが、洗っていくシャチの手を目で追いながら、自分が寝ている間に消えた跡がどれだけあったのかと考える
腰のあたりには指の跡が浮いていた。
相当長い時間、強く掴まれていたのだろう
脚にも少し 指の跡らしいものが付いている。
鬱血は殆どない
多分、ペンギンが眠っている間に消えたのだろう。
そして薄っすらと残る歯型のようなものが見える
(今日で、何日目だ?)
初日に見れば 目を背けたくなるような酷い有様だったのではないか。
シャチは それをペンギンの目に触れさせたくなくて、ずっと予備灯しか点けなかったのだ
(昼間も大抵眠っていたしな。カーテンも引いて暗くした部屋で)
殆ど食べていないペンギンの体力が落ちていたのが幸いして回復の為に眠っていたから出来たことではあるが。
「頭洗うぞー。目ぇつぶっとけよ」
久しぶりのシャワーは気持ち良く、洗うシャチの手つきも丁寧で随分とすっきりした。
だが、汚れを落とした体と反対に、何か黒い塊を飲み込んだように気分だけがすっきりしない。
(シャチは 見たのだろうな)
でなければ彼の気遣いがあんなに細やかであるはずがなかった。
見られたくなかった、と思うのは我が儘でしかない。
分かっていても気分が沈むのは止められなくて、シャワーの後、ベッドに戻ったペンギンの元になかなか睡魔は訪れなかった


「ペンギン、眠れねぇの?」
昼間うとうとしただけのペンギンは夜にはぐっすりと眠れるはずだった
だが妙に目が冴えて眠いはずなのに眠れない
「ここのところ寝てばかりだったからな」
「そりゃ、体力回復には睡眠が一番だろ」
シャワーも浴びて疲れてるはずなのになと漏らしたシャチが声音を変える
「明日っから飯は食堂で喰うぞ」
昼間、シャワーを浴びた時にシャチにも聞かれた。
ずっと寝ていた為筋力は落ちているがそれ以外に痛いところや不調は感じないかという質問は、
ペンギンの足腰を心配したものだろう。
そういう意味ではもう痛みもなくて、特に変なところはないと答えたから大丈夫だと判断されたようだ。
胃が普通の食事を受け付けるようになれば体力もすぐに戻る。
これ以上寝たきりで筋力を落とすのは馬鹿のすることだ。
では、明日から通常業務に戻ると考えていいのだろう
(シャチが隣で寝るのも今夜で終わりか)
ある種の気不味さが胸に残っていたペンギンは、その事にホッとすると同時に、どこか寂しさのようなものを覚えて
その夜はあまり寝付かれなかった




「よお、ペンギン。風邪はもう治ったのか」
「大変だったらしいな、風邪ウィルスが胃にキて喰えなかったって?」
「そういやちょっと痩せたな。暫く無理すんなよ」
久しぶりに食堂に顔を出したペンギンにあちこちから声が掛かる。
なるほど、自分が部屋にこもっている間はそんな事になっていたらしい。
では 本当の理由を知っているのは船長とシャチくらいなのか。
敢えて救出時の事は尋ねていなかったから、ペンギンは何も聞いていないのだ。
目が覚めた時はぼうっとしていてそれどころじゃなく、状況が分かってから聞く機会があったとすればあのシャワーの時だ
だが、ペンギンは体に残った痕に気を取られていた。
その後は気詰まりで 自分から話題に触れる気になれなかったのだ。
(シャチからは話してはこないだろう。無理して柄でもなく気を使いやがって)
いや・・・、無理をして、というのは語弊かと思い直す。
ペンギンの目が覚めてからこっちのシャチの気の使いようは彼らしい配慮ばかりだった
(ああいう、知らん顔で気遣うのはあいつの得意分野だ)
気遣われた相手がそれと分からないくらい、シャチの態度は上手い。
普段と全く変わらない調子だから彼が知っていてとぼけていると気付く者は少ないのだ。
あいまいに頷いて 久しぶりに顔を合わせた仲間と朝食を終え、自室に戻るとシャチがベッドを担いでやってきたところだった

「手伝うか?」
「あー、運ぶのはいいけどドア開けといて」
確かに、枕を上げたばかりのペンギンが下手に手を出さない方がいい。
見かけは軟弱だがシャチは船で上位に入る力持ちでベッドくらい運ぶのは軽いものだ
先に立って中に入ったペンギンは ベッドの消えた空間を避けて扉を押さえた。
そこへ入ってきたシャチが空いた位置に持ってきたベッドを置く
「ん? おい、ベッドが違うぞ。広い」
確かに怪我人用のベッドではなくなったがこれまでペンギンが使っていたものよりも幅が大きい
「あ? 間違ったかな。ま、いいじゃん。ちゃんと入ったんだから」
「よくないだろう、部屋が狭くなるじゃないか」
いいじゃん、もう運んじまったんだからとシャチがへらりと笑う。
昨日まで置いてあったベッドと変わりない大きさではあるが、そもそもその医療用ベッドが元からペンギンが
使っていたものより大きかったのだ。
「だいたい、どこから持ってきたんだ」
「ん?医務室」
取り替えてこようとするペンギンをシャチが引き留める
「おい、まだ病み上がりだろ。一人で運ぶなって」
それじゃおまえが手伝えと言おうとしたところへペンギンを呼ぶ声が掛かった。
航路を決めるから航海士は集まれと呼ばれては行かざるを得ない
寝込んでいる間の航路も知りたいし早く行って会議が始まる前に日誌に目を通したいところだ
「それ、戻しとけよ」
「えー・・・」
面倒、とかほざく声が聞こえたのを無視して会議に向かったペンギンは、だからその日仕事を終えて
戻ってきた室内に同じベッドが置いてあるのを見て「シャチのやつ・・・」と顔を顰めて溜息を吐くはめになった

こんな時間に医務室にお邪魔するわけにもいかない。
誰か患者が眠っているかもしれないのだ。今日の今日、復帰したばかりのペンギンでは全クルーの状態を
把握しているわけじゃないのだ
仕方ないと今日のところはこのベッドを使うかと肩を竦めたペンギンは、向こうから歩いてくるシャチを見つけた。
面倒臭がって放置した事に文句の一つも付けてやるかと足を向けたペンギンは、シャチを呼び止める人物に気付いた
(船長?)
呼ばれたシャチが足を止める
いくつか言葉を交わしているらしい2人の側へ 気配を消して歩み寄った

「てめえの役目は終わりだろ。さっさと自分の部屋へ戻れ」
「でも船長、」
「大丈夫だと報告したのはおまえだろう」
言葉を返そうとしたシャチが ぐっと詰まる。
最初から聞いていたわけではないのだが、ペンギンは自分の話だと なんとなく感付いた
「いつまでも付いてる必要はない。部屋に戻って寝ろ」
命令されてもシャチは答えない
ローの方が正論だと分かっていても従いたくないのだろう。
「せめて、もう一晩だけでも・・・」
「不要だ。俺は一人で寝る。自分の部屋へ戻れ、シャチ」
割って入った声にシャチが驚いた顔で振り向く
なんのことはない、ベッドを間違えたのはわざとで、取り替えに行かなかったのもわざとだ。
ペンギンの隣に潜り込む為に シャチは大きいベッドを運び込んだのだ。
「本人もこう言ってる。余計な世話だとさ」
ローとペンギンを見比べて、シャチはもう一度ペンギンの方を見た
「なぁ、ペンギン。今夜だけでもさ」
「断る。ベッドも明日には元のに戻す」
最後まで言わせずにぴしゃりと切り捨てる。
余計な気遣いは不要だと どこか苛々した思いで言い切った。
――2対1。しかも、本人からの拒否ではシャチに勝ち目はない
「・・・分かった。そうする」
酷く後ろ髪引かれる様子でそう言って、シャチは来た道を引き返していく。
途中、自分の部屋とは違う方へ曲がったが、ペンギンの部屋へ戻ってくる様子はなかった


「すいません、心配を掛けました」
会議で顔を合わせてはいたが、クルーの目のないところで会うのは復帰後初だった
救出に関わっているメンバーが誰かは知らなかったが、船長が何も知らないはずはない
「知ってるのは俺とシャチだけだ。何も言う必要ねぇよ」
大丈夫だと報告したシャチの言葉を信用すると言ったローに頭を下げる
体調も急には万全じゃないだろうから訓練も仕事も様子を見ながらにしろとだけ言い残した言葉に従い、
ペンギンはそのまま自室に戻って休むことにした





(・・・っく、・・・ぅ)
ぐちゅぐちゅと耳障りな音がする
「ひ、・・・っ」
聞こえてくるのは自分の下半身からだ
"ほら、もうすっかり覚え込んでやがる"
耳元で声がする
どうやらペンギンはそいつの体に背を預けて座っているらしい
ぐい、と後ろから伸びてきた手がペンギンの膝を広げた
相変わらず腕の自由は利かない
その上で足を押さえられて、身動きのとれないペンギンの足の間をさっきから3本の指が抉っている
びり、と時折走る痺れに身を捩る
その度に閉じそうになる膝を後ろの男が広げるのだ。
乱れがちな自分の呼吸が耳に付く
「・・・ん、」
ばらばらに内部を弄っていた指が抽送する動きに変わった。
下腹に熱が集まってくるのが分かる
ゆらゆらと揺れそうになるのを堪えたペンギンの腰が耐える限界を訴えてぶるっと震える
"さすがに一晩みっちり教え込めば覚えもするだろ。ほれ、見てみろよ。押し込む時は奥まで届くように緩むし
引き抜く時は引き留めるみてぇに締まりやがる。すっかりセックス用の穴になっちまったな"
くちゅ、と思い切り奥まで指を押し込まれ、仰け反った弾みで先走りが竿を伝う
そうして初めてペンギンは自分が勃っている事に気が付いた
動揺が余計な力を体に送った
きゅ、と指を締め付けたそこは余計な痺れを生み、「ぁ・・・っ」ひく、と覚えた快楽に戦慄く
"男の味を覚えちまったなぁ、此処。おい、先にいただくぜ"
するっと前立腺を撫でて指が出ていく
更に大きく開かれた膝に、この後の男の行為は避けきれないと硬く目をつぶる


『ペンギン、起きろって』


聞こえてきたシャチの声に ハッと目を開ける。
だが、そこには薄暗い室内が見えるだけで 目を覚ませばいつもそこにあった仲間の顔はない。

シャチは知っていたのだ。
ペンギンが毎夜 あの悪夢を見て魘されるのを。
だから彼は隣に眠ってペンギンを起こした
目を覚ます度に覗き込んでいたのは そうしてペンギンの意識が現実に戻ってくるのを確かめていたのだ

「・・・・」
はぁっ、と大きく息を吐き出して、身を起こした。
今すぐ目をつぶれば先ほどの続きを見るような気がして すぐには寝直す気になれない
(酒でも飲むか)
だが室内にはアルコールは置いていない
いくつかあったものはシャチが全部片づけてしまっていた。
チ、と舌打ちしてベッドを出る
まだ眠れないのならラウンジに行って何か飲もう。
時計を見ればそんなに遅い時間じゃない
誰か起きていれば気分転換に言葉を交わしてもいい。とにかく、今眠るのは避けたい

そうして向かった先には やはり何人かのクルーの姿があった。
まずは酒だと棚に並んだ瓶に手を伸ばす
さすがにラッパ飲みは駄目だとグラスを探して注ごうとした手が、後ろから伸びてきた手に掴まれた

「おまえはまだ酒は駄目」
病み上がりだろ、という声に見開いた目が後ろを見る
「寝れねぇの?やっとお粥から卒業したとこの胃にこんな強い酒はねぇだろ」
唖然とするペンギンから取り上げた瓶を棚に戻してシャチが取り出してきたのは牛乳で、卵、砂糖と混ぜ合わせたものが
ペンギンの目の前に置かれた
「エッグノッグ?」
不満の声を聞いてか、ブランデーが数滴垂らされる
これじゃ、殆どアルコール抜きのエッグノッグじゃないか。
「これ以上は駄目」
にこにこと小憎らしいくらいの笑顔で言われて、ペンギンは猛然とグラスを掴んだ
ぶっかけられるとでも思ったのか、ぎょっとしたシャチの顔を横目に 一気に飲み干す
「ちょ、おま、一気て!無茶すんなよ」
慌てるシャチの首根っこを引っ掴んで席を立つ
無言でラウンジを出ていくペンギンの背後では 「あ、バン!わり、それ片づけ頼む!」というシャチの声がしている
ちらっと見れば笑って手を上げる仲間の姿が見えたから任せよう。
そのままずんずんと自室まで戻り、真っ暗な中、ベッドにシャチごとダイブする

「え、と・・・ペンギン?」
下敷きになったシャチが 躊躇いがちに呼びかける
それを無視するように伏せたまま、ペンギンはシャチに言葉を投げつけた
「おまえがいないと落ち着かないんだ」
顔を上げていないので見えてはいないが、シャチが目をぱちぱちと瞬かせている気配がする
「あ、あー、うん。俺、ここで寝ていいの?」
わざわざ聞くなと思ったペンギンは無言を貫いた。
否定をしない事が答えだとシャチなら分かるだろうから問題ないはずだ
「靴くらい脱げよなー、ペンギン」
もぞもぞと動く気配がしてシャチが自分のブーツを床に放り投げた
ついでにペンギンのブーツも脱がされる感触がしたのでそのままシーツにしがみついておく。
どこかにころがったブーツは明日拾えばいい
そのまま動かずにいれば、シャチがごろんとペンギンを仰向けに転がした。
ちなみに彼が力持ちであるのは前出の通りだ
「はい、よく眠れるおまじない」
「?」
これは今までなかったなと薄目を開けたペンギンは 近づいてくるシャチの顔に慌てて目を閉じた

ちゅっと額に唇が触れる

あまりにも子供騙しの扱いに却って恥ずかしいと目を開けられないまま 頬に血が集まってくるのを感じて
眠ったふりを続けていたペンギンは いつの間にか夢も見ない深い眠りに落ちていた











 自分専用看護師







シャチかキャスか迷ったのですが会話をいくつかシャチで考えてたのでそのままシャチにしました

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あきゅろす。
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