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SS置場7
相談者5 L
はっきりしたオチは付けませんが終わります!








"おはよう"
登校中、声を掛けてきたのは昨日昼休みにローに告白した生徒で、断られたわりには元気そうな様子だった
「昨日、お昼付き合わせてごめんね」
告白が放課後じゃなく昼休みだったのには理由があった
うまくいったら一緒にと彼女は手製の弁当を持参していたのだ。
"・・・まぁ、それもありか"
別にローがいなければペンギンと話せないというわけでもないのだから、ここは邪魔者は消えてやるべか。
そんな風に気が向いて、付き合いは断ったが昼食は一緒に摂った
今朝、声を掛けてきたのは多分それが嬉しかったのだろう
「いや、どうせ買いに行くつもりだったしな」
手間が省けたと答えればそれでも嬉しかったと素直な感想が返ってきた
「振られた上に余ったお弁当を捨てるんじゃ踏んだり蹴ったりだもんね。悪い思い出にならなくて良かったから」
どうやら一緒に食べたお昼は変な期待を持たせずに良い思い出として処理されたらしい。
面倒な事にならずに済んだと考えるローは平和で普段と変わりない登校風景を過ごした








「あ・・・」

今朝は登校中に珍しくペンギンと一緒になった

普段は朝練がある彼とは時間が合う事がない。 それが、今日はたまたま武道場が使えない日らしく、
試験中でもなければ滅多にないギリギリの登校を味わっていたらしい。

珍しいねと声を掛けて、そんな事情を聞きながら学校に向かっていたところで ペンギンが何かに
気付いたような声を出したのだ。
「え、何?」
声につられてキャスケットもペンギンの視線の先を辿る
「あっ」
そうしたら、気付かぬうちにペンギンと同じ言葉が口から出た

ローだ。
見間違えるはずがない、腐れ縁の仲であるローの後ろ姿が見える。
だけど2人が声を上げた理由は別にあって、そのローの隣を女生徒が並んで歩いていた
キャスケットの知らない背格好のその生徒はローとは知り合いなのだろう。歩きながら 何か話し掛けている様子だった。
二言、三言。 ローも言葉を返して何か話しているように見える

「やっぱり・・・?」
隣を歩くペンギンが疑問符付きの言葉を発して、キャスケットの意識が2人から離れた
「何が?」
やっぱりって何と重ねて聞いたらペンギンは途中で止まった言葉の説明をしてくれる
「あの子だ。 ローを呼び出したのは」
「えっ」
もう一度、キャスケットは2人を見た
正確には、2人じゃなくて ローと並んで歩く女の子を。
後ろ姿の為 顔や、どんな表情をしているのかは見えなかったけど、ほっそりとしたスタイルの良い女子高生。
(それもそうか。ローに告るくらいだもんな。それなりに容姿に自信がなきゃ出来ないよ)
待ち合わせて一緒に登校しているのだろうか。
「付き合う事にしたのかもな」
ペンギンの感想が耳に入って、キャスケットは眉根を寄せる
(聞いてない。 昨日、そんなの言ってなかったじゃないか)
とはいえ、気にならないと言ったのは自分だ。
そんなの意地張っただけだと分かっていながらローが何も言わなかったとしても彼が批難される謂われはない

「昼にでも問い詰めてやろうか」
黙ってしまったキャスケットを盛り上げるつもりか ペンギンがらしくなく級友をからかおうと提案してくる
「昼、食べにくるだろ?」
昨日のもやもやを晴らそうと弁当箱には少しだけ、出汁巻き玉子が入れてある
・・・だけど
「いかない。今日は自分の教室で食べる」
その時にでもからかってやろうと続けようとしたペンギンの言葉を遮って行かないと告げたキャスケットは そこで彼と別れた
「俺 教室こっちだから」
「あ・・・ああ、またな」
面食らったような様子ながらも挨拶を返したペンギンに手を上げて、教室に入ってから改めて自分の態度を振り返る
(何を怒ってるんだと思われちゃったかな・・・)
そう思いながらも やっぱり彼等の教室で食べる気分になれないキャスケットだった






「よぉ、キャスケットくん。ちょっと顔貸せよ」
暫く顔を合わせたくないと思っていたのに相手の方から出向いてくるなんて想定外だ。
その上、わざわざ君付けして呼ぶところが ローの方でも何か怒っているように思えて"今ちょっと手が離せないから"
と、断ってみた。
多分 無駄だと思うけど。
「俺の用より大事なもんなんてねぇよ。すぐ済むから来い」
ほらやっぱり
いやだってのにと顔を顰めるキャスケットを引き摺ったローが教室から出て行く
見送る級友達が驚いた顔をしているけど、幸い ローとキャスケットが古くから付き合いがあると知られている為
誰も大きく騒いだりしなかった
でなければいじめと捉えられていたかもしれない。
彼を良く知るキャスケットは ローがそんな幼稚な事するわけないのにと思うのだが、親しくない者は大抵が印象で
物事を判断するものだ
「用って何?」
聞かなくても分かる気がするけどさっさと話を終わらせようと出した声はローからの締め上げを早めただけに過ぎなかった


「ペンギンの誘いを断ったってのはどういうこった?」
いきなり、聞かれたくなかったことをずばりと言われて 一瞬、ぐっと押し黙る
「別に、自分の教室で食べたっていいじゃん」
返した言葉は質問に答えちゃいない
分かっているけど、他に言いようがなくて、言った後 キャスケットは唇を尖らせて ぷいと横を向く
「なんだそれ」
案の定、答えになっちゃいねぇだろと不服の声を上げたローはあいつと何かあったのかと訝しげにキャスケットの顔を
覗き込んできた
「なんにもないよ、ペンギンとは」
言ってから、口が滑ったかもと ひやりとしたものが背を伝う
勘付かれないように そっとローを窺えば、彼は 意外な事を聞いたという様子で 「ペンギンじゃなきゃ誰だ」 と聞いてくる。
答えられなくて黙ったまま、ますます尖らせた唇がイキナリむにっと掴まれた。
「むーむーむむー!(=なにすんだよー)」
放せよと頭を振って抗議する
却ってローは面白そうに目を光らせて、ぐっとキャスケットとの間にあった距離を詰めた
「あいつじゃなきゃ誰だっつんだ。俺しかねぇよな、何があった?ペンギンより優先してどうすんだ、てめえが好きなのは
あいつだろ」
ペンギンの誘いを断ってまで俺を避けるたァどういうこった?
矢継ぎ早に問い詰められて、キャスケットに逃げ道なんかない

「だってっ!! しょうがないじゃん、ローの方が気になんだからっ!」
絶妙のタイミングでローが放した唇は 正直な思いを大声で吐き出した

ああっ!何言ってんだ、俺!?と慌てるキャスケットの目前で、にやりとローが唇を引き上げる

その笑みに キャスケットのどこかが ぎくんと身構えた気がした
だけどそれが何かを考える時間なんて、目の前の友人は与えてくれない。
にっ、と見ようによれば狡猾にも見える笑顔のローが口を開く

「そういうことなら、遠慮はしねぇ。それで、俺の何が気に触ったんだ?」

それを白状することは観念するのと同じじゃないかな。
ぼんやりと考えるキャスケットの口を割らせようと企むローの唇が、吐いちまいなと囁く息で告げて ゆっくりと 近付いてきた








  相談する者

一度ひとたび土俵に上がれば見逃してやれない
意識しているのなら、自分のものに。








一応おわりなのだー!だってホントにちょっと簡単に「恋の相談にのってもらってるうちに気付けば好きな人よりも
ローの事が好きに」っていう定番中の定番を読み切りで簡単に書くつもりだったんですよ。長くなっちゃったけど…


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