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SS置場7
告白 P
前半と後半で全く雰囲気が違うww 最後のとこだけ先に書いてたのですが先日の後編を先に仕上げなきゃで
結末以外はメモ書きしてたのですよ。そのまま2日経って頭から始めたらなんだか最後のとこだけ雰囲気違う!な罠に
はまりました。拙宅ではよくあるパターン。またオチらしいオチがない代物ですが構わない方はスクロールして下さい









「好きだ。付き合ってほしい。返事はすくでなくていいから考えてみてくれ」

自分が、告白されたのだと気づいたのは彼が部屋を出ていってからだ。
去っていくペンギンの手が押した扉が閉まってもまだキャスケットは状況が飲み込めなくて

「え?」

間抜けた声が出たのもたっぷり数分が経ってからのことだった


(・・・えっ? 何? 俺、今 告白された?)

本気の告白? ペンギンが!俺に・・・?
事実が頭にしみ込んでいくにつれ、キャスケットの目が大きく見開かれていく
(嘘だろ!だって、ペンギン今までそんな素振り全然・・・っ)
うわ、俺、どんだけ鈍いんだよ・・・と、頬に血が集まってくる
(返事? 返事が要るって、言ってた・・・よね? え、どうしよう。ペンギンの事、そんな目で見た事なかったのに!)
そうか。だから、彼も直ぐには返事を求めなかったのか

"考えてくれ"って言われた。
それって、ペンギンと付き合うかどうか、ってことだよね?
ていうか、ぶっちゃけると良い返事を聞かせて欲しいって意味なんだろうけど。

「う、わ〜〜」
熱くなってきた頬を手で挟んで、キャスケットは意味もなく声を上げる

どうしよう。俺、ペンギンの事 好きになれるだろうか
いや、勿論ペンギンは大切な仲間だし好きに違いはないけれど。
(こ、恋人として、見れるかって事だよね。俺が・・・ペンギンと?)
確かに彼の言うとおり、直ぐには返事が出来ないかもしれない
だって本当にキャスケットはペンギンからそんな事を言われるとは思ってなかったから。
親しい仲間だとは思っている。だけどそれがイコール恋愛感情の好きに繋がるとも限らない
(でも、ペンギンは そうだったんだ)
うわ、俺 知らなくて。 うっかり変な事言ったりしなかっただろうか
(だってほら、風呂場で会う事だってあるじゃん。俺は全然意識してなかったけど、やっぱり好きな相手と
一緒になったりしたら、色々困ったりしない?)
ほら、目のやり場とか・・・と顔を赤らめて 誰にともなく言い訳する。
(あああ!こないだ飲んだ時にも、好みの女のタイプとかで盛り上がんなかったっけ!)
あの時、ペンギンも同じテーブルに居たはずだ
もしかしたら彼をやきもきさせたり傷付けたりしなかったかな・・・
結構お酒も入ってたし、何をしゃべってたかなんて、あんまり細かく覚えちゃいない
(あっ、もしかして)
それで焦って告白する気になったのだろうか
(・・・そうかもしれない。あの話題に後押しされて、俺が恋人を作っちゃう前にって、思ったのかも。)
どうしよう。俺、男の恋人なんて 考えた事なかったんだけど・・・
ペンギンは常識を弁えた良い奴だ。
その彼が告白してくるくらいだから、ペンギンも真剣に考えての事に違いない
軽い気持ちで返事なんて出来ないと キャスケットは部屋の中をうろうろと歩き回った

「あれ? キャス、どしたよ、赤い顔して」
前触れ無く開いたドアから入ってきたシャチに驚いて飛び上がる
すっかり考えに没頭していて、いつもなら兄の足音に気付くのに今日は扉が開くまで耳に入ってなかった。
熱でもあんじゃねぇのと言われて 慌てて首を振る
「ないない!熱なんかないよ、平気!」
どれ、と無造作に伸びて来た手が額に当たる
熱のないのを確かめたシャチが 酒臭くないのに、酒でも飲んだのかと笑うのを適当に誤魔化して キャスケットは
さっさとベッドに潜り込んだ
自分が赤い顔をしていたと言われて走った動揺はどういう意味だろう
それに、何て答えればいいか早く結論を出さなくてはいけない。
「何、ホントにどっか調子悪ぃの?」
何も知らない太平楽の兄と話していては答えを出すどころじゃないと、キャスケットは布団を被る
「んん、ちょっと眠いだけ。先に寝るね、おやすみ、シャチ」
なんだ、眠くて赤い顔してたのかよと笑った声がおやすみと告げるのを聞いて キャスケットは毛布を頭まで引き上げた




爽やかな朝日の中、ベッドの上で寝不足の青い顔を上げる
(眠れなかった・・・)
あんなに早くに布団に潜り込んだのに、結局キャスケットは眠れないまま朝を迎えた。
ぐるぐると考え込みすぎて妙に目が冴えて気付けば外では鳥の鳴く声がしている
(新聞の配達かぁ。それじゃ、もうちょっとしたら朝食だ・・・)
もそ、と寝返りを打ってあくびを漏らす
昨夜は一晩中、ペンギンのことで頭がいっぱいだった
いつから好きだったんだろうとか、一緒に行動した作戦の事とか、そんなことばかり考えていて結局結論は
出ないままだ

朝食・・・と、考えたところで キャスケットはハッとした。
食堂にはクルーが揃う
当然、ペンギンだって食べにくるはずだ
(ちょ、俺、どんな顔すりゃいいのさ?)
やばい。この分じゃ おはようと言う短い単語すら噛んでしまいそうだ
それどころか目が合った瞬間自分の顔が真っ赤になるような気さえしてくる
(だいたい、ペンギンだって平気な顔をしているか分かんないぞ)
2人してギクシャクしたり顔を赤くなんかしてたら、絶対怪しまれるに決まってる
船長はもとより、暢気そうなベポもあれで目敏いところがあるのだ
(き、気合い!動揺なんかしてませんよって顔で食堂に行かなきゃ)
パァン!と頬を叩いて気合いを込める
「いって!」
自分ではたいておきながら力加減を誤ったキャスケットが叫ぶのを、ちょうどベッドから出ようとしていたシャチが
呆れた顔で眺めていた





「おはようございま〜す」
食堂に入った瞬間、船長と並んで座っているペンギンが目に付いた
ついでに船長とばっちり目があったのでぺこりと頭を下げる
ペンギンの顔を見た途端、どきんと跳ねた心臓に戸惑うキャスケットを そうと気付かず引っ張っていく兄の存在が
ありがたかった
「ちょ、ちょっとシャチ、待ってよ!」
さっさとトレイに皿を乗せて、すたすたと先を行くシャチはこのままじゃ船長達の向かいに座ってしまう。
かといって大抵船長の側に陣取る自分達が今日に限って違う席に座るのも変だ
(前言撤回!シャチがいてありがたいってのナシ!)
などと思いながら結局並んで席に着く
遅れて座ったキャスケットを眺めて ローが くすりと笑ったので、ますますキャスケットは冷や汗を流した

「寝ぼけた顔してんな。寝不足か?」
どうやら、態度が怪しかったわけじゃないらしい
違いますよと口を尖らせながら、"あ。船長のバカ、ペンギンの前で寝不足とか言わないでよ"と焦る。
ちら、と目で窺えば 幸いペンギンが気にした様子はなかった
むしろ彼はキャスケットの寝不足顔に気付かず兄のシャチと話し込んでいる
「こいつ朝から変なんスよね。さっきも力加減過って自分でほっぺた殴って"イテェ"とかって。ほらここ、赤いっしょ?」
船長の言葉を聞いて、横からシャチが絡んできた。
つんつん…と少し赤味の残る頬を突っつかれて 余計な事言うなとその手を押し返す
斜め向かいに座るペンギンも「なんだ。寒さで赤くなってたわけじゃなかったのか、その頬。」とからかうような
コメントを寄越して笑っている
その態度があまりにも普通なのでキャスケットは一瞬違和感を覚えた。
同時に、俺がこんなに昨日の告白を引きずってるのに!という妙な腹立ちも感じる
(いや、もともとペンギンってあんまり顔には出さないから、内心は分かんないか)
付き合うようになったら彼の表情も読めるようになるのだろうか
ていうか、読めないと付き合ってても不利だよね、俺なんて顔に出やすい方だから・・・と考えたところで ふと気付く
(あれ。・・・俺、付き合う前提で考えてない?)
えっ、もしかして、気になってきたのかな、と思って もう一度ペンギンの方を見たらペンギンもこっちを見ていてドキッとする
「それ・・・」
「え?」
なんだろう、何を言われるのだろう
どきどきと 少しばかり早まる心音を気にしながら、ペンギンの言葉に耳を貸す
「なくなってるぞ、もう」
言われて、指された下を見れば キャスケットの皿はもう空になっていて、何もない皿の上で手にしたスプーンが虚しく空気を
掬っている。
全然味なんかしなかったのに、無意識のうちに全部食べてしまっていたらしい
「〜〜〜〜っ」
か――っ、と顔が熱くなる
それに気付かずにいつまでもスプーンを動かしていたキャスケットを見て、ぶふっ、とシャチが噴き出した
気付けば船長もくつくつと笑いを溢している
「ごち、そう、さまっ!」
バン!とテーブルに手をついて立ち上がる。そのまま皿を下げに行くキャスケットの後ろではシャチがとうとう声を上げて
笑い出していた
どうせペンギンも笑っているのだろうと背後を窺えば、彼は笑い転げるシャチの方を見ている
ペンギンに、キャスケットの失敗を笑っている様子はない。
だけど、何かが引っかかった

「・・・・。」
くるりと、顔を戻して洗い場へ皿を置きに行く
そのキャスケットの脳裏には、目を細めて兄を見ていたペンギンの顔が いつまでも離れなかった






食堂を出たキャスケットは真っ直ぐに自室へと戻った
(俺、ピンと来ちゃったかもしれない)
今朝のペンギンには、自分は視界に入っていなかったように思う。
普段だったらそんな事はなかったはずだ
キャスケット自身も浮ついていたけど、落ち着いて思い返してみればペンギンの口数はいつもより多めだった
(極めつけは、あの、目。)
笑い転げるシャチを見るペンギンの目は、愛しそうに細められていた。
でもなんで、昨日彼はあんな事を言ったのだろう
(昨日・・・?)
昨日は本当ならキャスケットは寝不番だった
それが、別の日に寝不番に当たった船員に頼まれて当番を代わったのだ。
だから本当なら自分は昨夜は見張り台に居たはずで・・・
仲間からの申し出があったのは夕食を終えてからだ。それをペンギンが知るはずがない

すとん、と何もかもが理解できた
同時に どういうわけか膝の力が抜けて、自分のベッドに倒れ込む


なんだ。ドキドキしたりどう返事しようか悩んでみたり、バカみたいだ。

俺じゃないんじゃん。 あの時、ペンギンは部屋に居たのが一人だったから、俺をシャチだと思ったんだ

なぁんだ、と思ったら、急に笑いがこみ上げてきた
バカみたいだ。間違いの告白にあんなに悩んだり浮ついたりして。
一人で舞い上がって、ホント、バカじゃないか

こみ上げる笑いの奥に何か別の感情があるように思えて、キャスケットは笑う声を飲み込んだ。
一度笑い始めたら箍が外れてしまう予感があった
笑い声以外のものが溢れてきたら、どうやっても言い訳出来なくなる

ふ、と肩の力を抜く。
シーツに沈み込んだところで、コンコン、とノックの音がした




「はい?」
同室のシャチならノックなんかしない。
深呼吸してドアを開けた先には、予想外の人物がいた

さっきとは違って、少し焦りの浮かんだ顔のペンギンが、そこに立っている

「入っていいよ」
どうぞ、と室内に招き入れる
シャチはまだ食堂に居るのかなと関係ない事をぼんやり考えていると、ペンギンの方が口を開いた
「その、・・・ちょっと、聞きたいんだが。いや、さっきシャチに聞いたんだが、」
「うん?」
言いにくそうにするペンギンは、何を聞いたのだろうか
「夕べ、寝不番じゃなかったのか?」
あぁ、そのことかとキャスケットも頷く。
きっと自分の去った食堂では"あいつ、まだ寝ぼけてるな"とかそんな話になったのだろう
昨日の交代を知らないペンギンが寝不番だったのだからしょうがないなんて言ったんじゃないだろうか
(相変わらずのフォロー魔だなぁ。俺に、惚れてるわけじゃないのに)
やっぱりペンギンは良い奴だと改めて思った。
彼が 自分に惚れてないのが、少しだけ、残念だった

事実を知って慌てて後を追ってきたに違いない
自分に気がありそうな素振りだったキャスケットに、謝ろうと考えて。
"そんなこと、言わせない。"
そう思ったキャスケットは、何か言いかけたペンギンより先に声を上げた

「俺!!」

キャスケットの声で ペンギンが言葉を飲み込む。
何かを言うのなら聞こうという姿勢の彼に キャスケットは言葉を畳み掛けた

「いくら双子だからって、俺達を見分けてくれない奴なんか嫌だね!シャチは優しいからどうだか知らないけど、
俺は、そんな恋人は願い下げだ!」
だからお前の告白は受けられない、俺は断る。

キャスケットにすれば精一杯の強がりと憎まれ口を一気にまくし立てる

どう? 俺はペンギンの事なんか何とも思ってないし、だからペンギンからの告白はこっぴどく断るんだ。

「だから、」

喉に詰まりそうな声を キャスケットは一生懸命押し出した

おまえは振られたんだよ、ペンギン。
だから、俺に謝る必要もないし 悪く思う必要もない

「・・・だから、さっさとシャチのところに行けよ。あいつなら振られたお前を慰めてくれんだろ」

どうでもいい事のように言い切って、ほら行けよとキャスケットは追い払うように手を振る

自分の言葉を彼が信じたかどうかは分からないが、キャスケットに謝ろうとしていたペンギンは 結局何も言わずに
頷いて くるりと背を向けた

「・・・分かった。そうする」

短く言い置いて出て行った彼は 今度こそ本当に想う相手の元に向かったはずだ
(そして、シャチだって、きっと・・・)
これから出来上がる恋人たちの事を思って、キャスケットは笑おうとした
二人は似合いだもの。きっと素敵な恋人になる
大好きな二人に訪れる幸福はキャスケットにとっても嬉しい事のはずだった

笑って 二人の仲を祝福してあげたい

顔を上げたキャスケットの目には 窓に映る自分が見えた。
それは、頼りなげで今にも泣き出しそうな顔をしている

ペンギンが何も言わずにシャチのところに行ってくれて良かった
こんな顔を見せたら、折角の二人の幸福に影を落としてしまうじゃないか

「平気だよね。昨日まで意識もしてなかった相手だもん。すぐに、忘れられる」
呟いて、窓ガラスに映る自分の影に手を伸ばす

きゅ、きゅ、・・・っと、音を立ててガラスを滑ったキャスケットの指が、眉の下がった自分の顔の上に 笑みの形の眉を描き足した






 泣き笑いの窓

指でなぞった線から落ちる水滴も明日には乾くだろう
それが涙のようだなんて思うのは 弱気が見せた幻








逆の配役の方がはまりそうでしたが、キャラの違うキャスがシャチみたいなツンデレ系の口を利く場面が書きたかったので
こうなりました。普段と違う口調になってます。




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