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SS置場6
双子の恋 C&E

キラキャスでシャチペン。 キラーが残念なキャラになっててごめんなさい!もしこの話の番外を書くことがあればちゃんと
恋に現を抜かしていないキラーさんを出しますから^^; でもこの話、萌えどころが一場面もなかったことに最後に気がつき
ました。おかしいな、もっと萌えたシチュだったはずなのに…  クーラー病絶賛悪化中です。熱が下がりませぬ〜
(あ、シャチペンもキャスペンもC表記になっています)












「どうした、キラー。最近ばかに機嫌が良いな」
キッドがそう聞いたのは このところ有り得ないほどのご機嫌続きの友人をからかうためで、浮かれたキラーの
話を聞き出すのが目的ではなかった
どうせくだらない事を喜んでいるだけだと思ってのその言葉が、まさかそれを切っ掛けに普段お堅い友人が
にやにやと相好を崩して"そうなんだ。聞いてくれるか"と話し始める事になるとは思っていなかったのだ。
聞いているキッド自身がうんざりするくらいぺらぺらと話し始めたキラーの惚気は、途中でキッドが止めなければ
日が暮れるまで続いていただろう

「いいじゃないか。俺の機嫌が良くても都合が悪くはないだろう?」
「・・・なわけねぇだろ、にやけたキラーなんて気持ち悪ぃ」

割と暴言を吐いたはずのキッドにも、"酷いな。気持ち悪いはないだろう"と返すキラーの笑顔は崩れなかった。
つまるところ、恋人が出来たてのキラーには何を言っても構わないくらいに世の中が薔薇色に見えているらしい
「・・・今日の酒はお前の奢りな」
「構わないが、飲み過ぎもほどほどにしておけよ?」
キッドの酒量を知らないではないキラーのこの台詞に 今度こそ本当に苦笑が零れる
「だめだ。地に足がついてねぇどころか空を漂うくらいに浮かれた相手じゃ話にもなんねぇ。 恋に浮かれすぎて
しっぺ返しを食うんじゃねぇぞ」
盲目になるほどの恋に破れると相当痛ぇぞというキッドの忠告も 恋愛真っ最中の友人には馬の耳に吹く風程の
効果も上がらない
「キャスケットに限って、そんな事はない」
でれっ、とさらに崩れた友人の顔を眺めながら、 そうか、出来たての恋人の名前はキャスケットというのかと
名前を教える事すら忘れて舞い上がるキラーの肩を 「浮かれすぎて振られんなよ」と ぽんと叩いた

そんな風に 同席しているキラーがふわふわと手を付けられないくらいだったから 見知った別の顔が
店に現れた時はキッドは漸くまともな酒の相手が来たと思った
だが、キッドを挟んでキラーと反対側の席に着いたペンギンの様子がどこかおかしい
普段は人の話によく耳を傾け聞き逃す事のない男が、時折、「すまない、今何か言ったか」と聞き返す
並んでグラスに口を付けているくせに どこかぼうっとしているのがこの男にしては珍しくて 少し眺めた後、
キッドは大きく溜息を吐いた

「ジーザス、おまえもか」
「え? 何がだ?」
聞き逃したのか意味を捉え損なったのか取り繕うようにキッドの方を見る男に言ってやる
「当ててやる。 恋人が出来たんだろう、ペンギン。」
ずばり直球で指摘すると、ぎょっとした彼は慌てて否定した
「違う、まだ・・・・・・っ!!」
「へぇ・・・。 "まだ" 」
今更口を噤んでも遅い
咄嗟に口を覆った手の向こうで、にやにやと唇を歪めるキッドにバレたと思ったのだろうペンギンの顔が
じわじわと赤くなる。
おお、珍しいもん見た、と眺めていると、観念したのか溜息を零しながらもペンギンは白状した

「・・・本当に、まだ、そんなんじゃないんだ。」
渋るペンギンの口を割らせてみれば どうやら最近知り合った男に口説かれている最中らしい
興味が無ければあっさり振り払ってしまうこの男が未だ口説かれ続けているということは、ペンギンの方も
憎からず相手を想っているか、あるいはそこまで至らなくても無視しきれない程気になっているのだろう
「右も左も、春到来だな・・・」
思わず漏れた一人言を、今度はペンギンは きちんと聞きつけた
「そういえば、"おまえもか" というのは何だ?」
・・・上の空で目に入っていなかったのか。
「こいつは、完全に頭が春だな。最近恋人が出来たらしい」
キッドの隣でひたすら機嫌良く酒を呷っているキラーを親指で指し示すと、その幸せそうな空気に
ペンギンも気付いたらしい
「・・・確かに、幸せそうだな」
同意したペンギンにキッドも笑っておまえもそう見えるんだよと告げ 彼が口を曲げるのを見ながら情報を補足する
「なんでも、気立てが良くて可愛くて、明るい・・・なんだっけ?」
「素直なんだが、恥ずかしがりやで。少し褒めると真っ赤な顔でそんなことない、と否定するから 少し謙虚すぎる
ところもあるな。」
"俺の言う事が信じられないのか"と言ってやれば慌てておろおろと俺の顔色を覗う。困った顔がまた可愛らしくて、
ついつい苛めすぎてしまうんだが、あれはきっと泣き顔も可愛いぞ。

恋人について話し始めたら止まらないキラーを目を丸くして見るペンギンに目配せしてキッドは口角を引き上げた
"な? 言ったろ?"
苦笑を浮かべて肯いたペンギンの耳元に、
『晴れて口説き落とされてみろ。おまえもこの幸せを味わえるぜ』
そう囁いたら 困ったような照れ臭いようなといった苦笑を浮かべた男は、この様子なら近いうちに相手の申し出を
受け入れるんだろう
そういや、相手の男はなんて名だ、と何気なく尋ねたキッドに 少し恥ずかしそうな様子のペンギンは、それでも
どこか嬉しそうな声で 「シャチというんだ」 と答えた







そんな幸福の極みという恋愛ライフを味わっていた友人のキラーを 次にキッドが見掛けた時には先日と
真逆の表情を浮かべていた

「・・・なんだ今日はまた。えらく暗いな」
声を掛けるのを躊躇う程の陰鬱な空気をどっぷりと背負ったキラーと まともに目が合ってしまったキッドは
仕方なく話の皮切りになるような言葉を掛けてしまったのだが、案の定キラーは死んだ魚のような目でキッドを見た
「おまえの言う通りだった・・・」
この様子では間違いなくキラーは振られてしまったのだろう
聞きたくはなかったがここで話を切り上げるわけにもいかず、嫌な予感に駆られながら言葉を押し出す
「・・・何が?」
キッドの言葉を受けて、友人は先日と同じようなフレーズで振り仰ぐ
「聞いてくれ。 おまえの言うとおりだったんだ」
それはさっき聞いた、という言葉は賢明にも言わずにおいたキッドの服を、無意識にか掴んだキラーは
ぎゅうぎゅうと引きながら訴えてくる
「キャスケットだよ!二股、かけてたんだ」
信じられるか、あんな・・・あんな天使のような顔をして男2人を手玉に取ってたんだぞ?!

そうは言われてもキッドとキャスケットには面識がない
天使の顔ばせというのは恋するキラーの欲目だろうなと当たりを付けながら 素直な良い子だと
言ってなかったかと聞いてみた
キラーが苛めて楽しんでいたというくらいだからそんなに器用なタイプだとは思えない
勘違いか何かの誤解じゃないのかと言ったキッドに向かって、キラーは更に落ち込んだ様子で苦しげな声を出した
「しかも、その相手が」
「・・・なんだ? 顔見知りか?」
何故か のし掛かるように詰め寄るキラーは、どんよりと澱んだ目でキッドを見た
「ペンギンなんだ。 二股の相手は」
「何?!」
唸るように絞り出したキラーの声は長い付き合いのキッドですら聞いた事のないような声音で予想外の名前を挙げる
「それこそ、何かの間違いだろ。ペンギンに聞いてみたのか?あいつの相手は名前が違うぞ。この前聞いた時には、
"シャチ"っつってた」
「シャチ?」
訝しげに繰り返したキラーと互いに顔を見合わせ、次の瞬間 声を揃えて呟く
「「・・・双子・・・?」」
呟いてから、キラーは大きく目を見開いた
「そうだ!双子! でなきゃ、キャスケットが俺に隠れてペンギンとデートしてるだなんて、おかしいじゃないか!」
ポケットから携帯を取り出して、誰かに掛けるキラーの動きは素早かった
キッドが口を挟む前に もう相手に繋がっている
「ペンギン?すまない、ちょっと聞きたいんだが・・・あぁ。 シャチって言ったか?そいつについて少し教えてほしい」
目の前のキッドそっちのけで友人のペンギンと暫く話したキラーは、晴れ晴れとした顔で通話を切り上げた
「間違いない。キャスケットとシャチは双子だ。見掛けはそっくりだが、性格が全然違う。なにより、ペンギンによると
シャチは左利きらしいんだ。俺のキャスケットは右利きだし、同じ人間のはずがない」
ありがとう、おまえに話して良かったと礼を述べたキラーは 誤解が解けた途端、恋人に会いたくなったらしい。
失恋したと思っていたキラーは このところ恋人とは会っていなかったようで、現金な事に直ぐにも顔が見たいと
ぬけぬけと曰うと、キッドの返事も聞かずに さっさと会いに行ってしまった
「・・・まぁ、落ち込んでるよりはいいんだけどよ」
恋の病とはよく言うけど、ホントに病気だな
キラーの熱気に当てられて毒気の抜けた顔でキッドはそう呟いた






「・・・やっぱり、こんなの、よくないんじゃないかな」
浮かない表情のキャスケットが申し訳なさそうに呟く
「何言ってんだ。うまくやっただろ? 最初にわざと疑いを持たせる。1度晴れた疑惑が再び疑われる事はそうない」
得意げに話すシャチにも、やっぱりキャスケットは気が進まないように俯いてしまう
「それとも、おまえは浮気でもしてるつもりなのか?」
親しげに肩を抱くシャチに囁かれて、思わず首を振ったキャスケットを そらみろ、と眉を上げてシャチが肩を竦める
「ペンギンと会ってるのは俺、キラーと会ってるのはおまえ。これのどこが二股なんだ」
シャチの言う事はある意味正しい。だけど、全てが正解じゃない。
「だって・・・ これって、2人を騙してる事になるんじゃ・・・」
ぐずぐずと納得しない様子のキャスケットを、やれやれと溜息を零したシャチが ひょいと身を屈めて覗き込む
「嫌なら、いいんだぜ。とっととキラーと別れろ。それで丸く収まるだろ。言っとくけど、俺はペンギンを離さない。
カップルは一組だけになるし、おまえも後ろめたくなくなる。」
ついでに一生表に出てこなきゃいいよ。この体、全部俺に寄越せ
シャチのその一言で思わずキャスケットが声を上げる
「だめだよ!もともと、俺の体じゃないか!後から生まれたのはシャチなのに最近シャチばっかり表に出てて狡い!」
「しょうがないだろ、キラーが誘って来なかったんだから。デートの予定の無いときは俺がペンギンを呼び出したって
構わないって言ったのはおまえじゃん」
「俺だってキラーと会いたいよ!」
このところ、ずっと"シャチ"になっていて、"キャスケット"は恋人と会うことが出来なかったのだ
会いたい、とキャスケットが叫んだタイミングで キャスケットの所持する携帯が鳴る
「あぁ、ほら。愛しの恋人じゃないか。久しぶりのデートのお誘いだろ?さっさと電話に出れば?」
くすくすと笑うシャチが、意地悪そうに にやりと唇を引き上げる
「ふっふーん、このタイミング。 "俺達は双子だ" って嘘を吐くのは、俺じゃなくておまえだな、キャスケット」
嫌なら正直に話してもいいけど? "この体で、ペンギンを抱いてます"って。
ケラケラと笑うシャチはキャスケットの迷いを愉しそうに眺めて携帯を手にとった
なんなら俺が話してやろうかと笑ったシャチが通話ボタンを押したところで、キャスケットは主導権を取り戻す
「もしもし。 キラー? なんだか久しぶりだね、電話、待ってたんだよ」
――お願いだから、聞かないで
双子の兄弟が居るのかって、聞かないで、キラー。
俺に嘘を吐かせないで

(お願いだから)

キャスケットの痛いほどの願いを あっさりと裏切るキラーの言葉が、携帯の受話口から流れ出た








 裏切りなんかじゃない

貴方と一緒に 居たい だけ




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