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SS置場6
転校生 番外 L

話の都合で10月6日は金曜日の設定になりました(  転校生シリーズの彼等です。








近頃キャスケットは そわそわと落ち着かない

もうすぐローの誕生日が来るからだ。
一月も前から誕生日にはどうしようかと頭を悩ませていたキャスケットと違ってローは自分の誕生日が近い事を
すっかり忘れているっぽい
そういうことなら・・・と、キャスケットは "こっそりお祝いの用意をして驚かせてやろう" と考えた

一旦そう決めると 楽しみでわくわくすると同時に、いつ ローが近付く誕生日に気付くかと心配になる。
自身のことにはあまり構わないから当日まで気付かない可能性も大きいとは思う
(でもちょっとしたきっかけで気が付いちゃうかもしれないなぁ)
そうしたら、その時は自分の方が忘れたふりをしてみようかと思いつく。
その日がローの誕生日だと一向に気付かないふりをして1日を過ごして、学校から帰ってローが自分の部屋に入ったら
ソッコーで準備しておいた料理やケーキでテーブルを一杯にして。 暫くして部屋から出て来たローに向かって
"忘れてると思っただろ。お生憎様!しっかり用意してあったんだよ。誕生日おめでとう!"


・・・うん。いいかもしれない
折角同じ家に居るのだから、それを生かしてその日はローの好むものばかりでテーブルを埋め尽くそう。
キラーやペンギン達にも声を掛けて 絶対に知らんふりだと念押しをして、
(みんなにはローが部屋に入ってから来てもらって。・・・呼び鈴は鳴らさずに こっそり入ってもらうのがいいかな)
次の日が休みだから遅くなったら泊まりもありかも。部屋はあるし雑魚寝でもいいし・・・
考え始めたら次々と ああしようこうしようと思い浮かぶ
(ケーキは買ってきてもらった方がいいかぁ)
今回は内緒である以上 全部自分1人で用意する事になるから料理以外は手が回らないだろう。
(でも、)
お菓子作り系には手を出した事のないキャスケットがケーキを手作りするっていうのも誕生日っぽくていいかもしれない。
当日は無理だろうけど、ボニーちゃんにコツを伝授してもらって 次の日には作ってみようかな

そんなこんなで、同じ家にいるローの目を盗んで出掛けてはジュエリー・ボニーからケーキ作りの特訓を受けたり
料理は何を用意しようかと頭を悩ませたりでキャスケットは結構忙しい日を過ごしていた
その誕生日がもうすぐというところまで近付いていては、そわそわもしようというもの。
いつ気付くかとどきどきしながら様子を窺っているキャスケットを知ってか知らずか、ローが自分の誕生日を気にする様子は
微塵も見当たらなかった
(それならそれでサプライズパーティ企画は続行だ)
明後日が誕生日当日。勝負は明日の夜からだと頭を悩ませながらメニューを決め終えたキャスケットは やるぞ!と
気合いを入れ直した







いよいよ迎えた誕生日。

夜のうちにローに気付かれないように下拵えするのはもの凄くすごーく大変だったけど自分はうまくやった。
これなら最初に考えたとおりのサプライズが実行できるはずだと キャスケットは にっこり口角を上げる

いつも、朝は自分の方が早く起きるからその点は楽だった
(とろとろのチーズオムレツ。クリスマスの時に好評だったサーモンディップもたっぷり作ってあるし、唐揚げは
トムヤムクムに浸して下味を付けてあとは揚げるばかりになってる。鳥とりで かぶるんだけど、ローの好きな
蒸し鶏のパリパリ焼きと…サラダはたことトマトであっさりだけどボリュームを出して。みんな結構食べるからなぁ)
キッシュに長芋のスモークサーモン巻き、シュリンプ&チップス。
ローが起きる前に綺麗に盛り付けまで済ませた皿を冷蔵庫にたくさん押し込んで、朝食を作るのは全て
自分任せだから大丈夫なはずだけど ローには冷蔵庫は覗かせないようにと少しばかり気を揉んだ。
だけどそれ以外は本当に普段どおりで、何も気付かれる事なく2人は揃って家を出た

並んで歩きながら こっそり様子を窺う
当日を迎えたというのにローは今日という日に気付いていないらしい
(今日が誕生日だって当日になれば気付くと思ったんだけどな〜)
第2案の方を気に入っていたキャスケットは少し残念だったけど、少なくともサプライズは成功しそうだと気を取り直す
登校中に一緒になったキラーも ローに見えないようにこっそり目配せを送ってきたが、その後は知らん顔で
昨日の野球の結果なんかを話していた
あまりに堂に入ったとぼけぶりにキャスケットの方こそくすくすと笑いがこみ上げてきそうで必死で表情を取り繕う。
言い出しっぺの自分がしっぽを掴まれては完璧に振る舞う友人たちに合わせる顔がない
それに、みんな ローの驚く顔が見たいのだ
(早く学校終わらないかな!)
楽しみすぎて今から放課後の事で頭がいっぱいで、却って目立ってしまったのか その日の授業でキャスケットは
やたらと教師に当てられた

「あぁ、今日は参った!」
どの授業でも指名されるんだものとこぼすキャスケットを "災難だったな"笑って鞄を持つローと教室を出る。
キャスケットとつるむようになって話しやすくなったとはいえ 気軽におめでとうと声を掛ける程には親しくない。
影での人気はあるローだから女の子の間では今日が誕生日だと噂になっているのかもしれないが、彼は
女子が取り巻いてきゃあきゃあ言うタイプとは違う。依然遠巻きなのは変わりなく、面と向かってローに
祝いの言葉を言う勇気のある子はいなかったらしい
結局、ローは最後の授業が終わっても自分の誕生日に気付かないまま、キャスケットと連れ立って家路に就いた





「災難が続いた割には随分と機嫌がいいな」
楽しみにしていた放課後に自然と軽くなったキャスケットの足取りをローがつつく
「そりゃ、もう授業はないからね」
今日はもう解放だー、自由!と声までが跳ねるような友人を疑問に思ったかもしれないが、ローの機嫌も
悪くないのか敢えてつっこまれる事はない
だいたいが キャスケットがにこにこしている時はローも不思議と機嫌が良くなるのだから、キャスケットが
教師も違和感を覚えるくらい笑みを振りまいていた今日の機嫌が悪いはずがないのだ
"横でご機嫌オーラ飛ばされてりゃ不機嫌にもなれやしない"と、いつだったかローが話していた
彼によるとキャスケットの『にこにこ』は伝染るらしい。
うきうきと足を進めるキャスケットと、まんざらそれが嫌でもないらしいローが自宅に向かってのんびりと歩く
こういうのも 楽しいよなと、少し遠回りして歩く時間を増やそうかと思ったりなんかしていたキャスケットは、
すっかり忘れていた
他にも、口止めすべき人物が居たことを。
この後のパーティが楽しみで浮かれていたキャスケットは、その特徴ある姿を見た時も そのことに気付かなかった


「あ・・・? おい、珍しいヤツが居るぞ」
見てみろと言われる前に目に飛び込んでくる強烈な存在感にキャスケットも うわ、と呟いていた
どうやら彼の方は先に自分達を見つけていたようで、にやりと満面の笑顔で バッ!と、大きく両手を広げた。
言わずもがなの、ローの"ちょっとばかし派手"な父親の登場である

彼が派手な服装を好むのも、デタラメな言動に悪気がないのも知っているキャスケットですら、ドフラミンゴの
大袈裟な仕草に苦笑が浮かぶ
隣のローが嫌そうに顔を顰めるのが分かったが、あまり邪険にしなくてもいいじゃないかと言ったところで、
ドフラミンゴの大きな声が届いた

愛する息子よ!と芝居掛かった台詞を叫ぶ彼の声は役者みたいによく響いた

恥ずかしくねぇのかよとぼやくローは彼の父親と違って既にげんなりした顔をしている

「てめえ、何しに帰ってきやがった。今月から海外出張だったろう」
仕事サボって逃げ出してきたかと言い捨てるローの元へ、彼の父親は笑顔のまま大股でズカズカと近づいてくる

「何しにじゃねーだろう!」と ドフラミンゴが言った時には彼は自分達の目の前にいた


――誕生日じゃねぇか。おめでとう、我が不詳の息子!


やけにハキハキと言って、彼は自分の息子を両腕に抱き締めた
これを言いに帰ってきたんじゃねぇかと言って、どこから取り出したのか小さな箱をローの手に押しつける
出張中で、今日もこれからトンボ帰りだと去っていく父親は 常識外れかもしれないが確かに自分の家族を深く
愛しているようだった
まさかこんな伏兵が現れるとは思ってもみなかったキャスケットの計画を台無しにしたと気付きもせずに、
ドフラミンゴは颯爽と異国の空へと旅立ってしまった








(あああああーっ!!!!)
彼の台詞を聞いた瞬間、キャスケットは絶叫する思いで呆然と立ち尽くすしかなかった

予想外の人物の登場に驚いていたキャスケットは彼の口を塞ぐ暇もなかったのだ
目の前では、反応のないローに向かって「どうしたロー。忘れていたのか?」と ドフラミンゴが話している
ぽかんと口を開いて固まったままのキャスケットの耳に、「いや、それくらい知ってるし」と受け答えするローの声が
聞こえて 立ち尽くした地面がガラガラと崩れ落ちるような気分でキャスケットは更に固まった

父親といくつか問答したローが笑みを見せないままドフラミンゴを見送りそうな事に気付いて我に返ったキャスケットが
慌ててローの足を蹴飛ばす
んだよ、と更に不機嫌な顔になったのでしかたなく後ろからほっぺたを引っぱって無理矢理笑顔にしてやった
後でたっぷり嫌味を言われるんだろうけど、自分の方も言いたい事があったから構わない
何より わざわざ海外から祝いを言うためだけに帰国した父親の見送りが顰めっ面というのはありえない!と、
そこは譲れないキャスケットは 結局彼の父親が見えなくなるまでローの笑顔をキープし続けた



「・・・・・」
嵐のような再会を終えて旅だったドフラミンゴを見送った後は気まずい沈黙が2人の上に降りてきた
普段なら彼の父親の出現の後は毒気を抜かれて脱力する事が多いのだが今日は違っていて ローの機嫌も
あまり麗しくないようだ
仕方ないので、血縁じゃない分立ち直りの早かったキャスケットが先に沈黙を破る

「せっかくお祝いを言いに来てくれたのに、なんでそんな顔してるのさ」
不機嫌とまでは言わないけど、というキャスケットの言葉どおり、ローは微妙な顔をしている
「・・・いや・・・見事に、KYだなと」
え、と仰ぎ見ると ローは口元を手で押さえて なんだか困ったような顔で ふいっと目線を上げて空なんかを見ている
別に飛行機を見送ろうだとか雲を眺めたわけじゃない、言い出しにくそうにキャスケットから視線を逸らしただけだ
「いつから、知ってたのさっ」
そうだよ、さっきのローは知ってるって言い返してた。それって、それって、とキャスケットの頬に血が集まる
トボケようとしていたらしいローはキャスケットのその勢いに観念したように手を挙げた
「一週間くらい前から。おまえがあんまりこそこそしてるから、何のつもりだと考えたら、なんとなく」
勘のようなものが働いたと白状するローは心底参ったというように肩を竦めて息を吐く
「なのに、あの馬鹿親父、場違いな登場しやがって。これじゃ知らないふりなんて出来ねぇだろ」
「い・・・・」

一週間!
そりゃぁ、昨日の下拵え中も今朝も。もっと言えばこっそり抜け出してジュエリー・ボニーと会うのだってうまくいったはずだ。
隠すべき相手のロー本人がキャスケットの行動に協力してるんだから!
(失敗なんてするはずがないじゃぁないか)
うわあああ、と恥ずかしさに顔から火が出そうになった
気付かれてないと喜んで。さっきまでだって浮かれてにこにこ笑顔を振り撒いて。
(恥ずかしすぎる。好きな相手の誕生日に浮かれて、調子づいてるとこ、全部知られてた!)

真っ赤な頬を両手で押さえて 声も出ないキャスケットの手首をローが掴む

この上、この赤い顔を晒せっていうの?!と眉を下げたキャスケットに ローの声が降りてくる

「で、さ。俺に何か言うことねぇの、おまえ」

うう、とキャスケットは口の中で呻いた
自分はローが好きなのだ。人前では友人だと言っても、本当は恋人の関係にあった
そのローが、キャスケットの言葉をねだっている・・・?

嬉しい、けど、恥ずかしさもキャスケットの中には たっぷりとあって。

「誕生日、おめでとう」

贈った言葉は小さな小さな声だった
赤い顔を見られたくなくて俯き加減の言葉は それでもローに届いたらしい
ありがとうという言葉がすぐ近くで聞こえて、ハッと気付けばローの気配が目の前まで迫っていた

「・・・っちょ!まっ、待ってロー!ダメだって、みんなそこに―――」
慌てて顔を背けながら逃げるキャスケットの反応でローはキスし損ねた
だが、キャスケットの肩越しに にやにやするキッドとボニーの顔が路地から覗いているのを見つけてしまっては
それも怒れない

「んだよ、他の奴等も呼んだのか」
「当たり前だろ!おめでとう、バカすけ!」
もう隠れる必要はなくなったとキラーやペンギンまでが祝いの言葉と一緒に次々に後ろから出てきた
「ごめん、みんな。俺失敗してたぁ」
情けなさそうなキャスケットの声が混じって、あたりが一気に騒がしくなる
(仕方ない。祝いのキスはこいつらが帰ってから改めて奪うか。)

あぁ、確か・・・明日はケーキが出てくんだっけ? そん時でもいいな

そんな事を考えながら、ローは綺麗な笑顔で 「おう、ありがとな」と礼を言って、彼等と一緒に 今か今かと出番を待つ
自宅のサプライズパーティ会場(※リビング)へと向かった





 サプライズ・パーティ









10月6日、船長誕生日おめでとうございます!出来があまりよろしくない上にメインがキャスなんです、
すいません! これ、うまいこと千堂からのリクと繋がってたりして〜と思ったのはついさっきです。
実はカラ色トリ籠の雛奈さんとお互いにリクエストをしていたのでした!千堂からのリクエストは普通に
去年のロー誕の続編のはずなのですが微妙にケーキ繋がりでリンクしたりして?と。…しないかw
いただいたリクエスト内容は「ロキャスで、キャスがローにサプライズを…」というものでした。それを
聞いた途端「サプライズ失敗」させたいと思ったのですが、あんまり失敗ぽくないかも。転校生シリーズに
しない方がよかったかもしれません。御希望のリクに叶っていない気がするので後日リベンジが必要かも


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