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SS置場6
吸血鬼パロ番外2 (L)
先日の吸血鬼パロのその後の場面。その後といっても前回の場面から結構時間が経過してます。










押し倒し、ペンギンの動きを封じるように両肩を押さえ 首に歯を突き立てようとしたキャスケットは、殆ど無我の状態だった
それが 自分の忌み嫌っていた "食事" だということすら 頭から消し飛んでいて
目の前の男から香る欲をそそる匂いに思考の全てを支配されたも同然の体は体内から沸き起こる欲求に従って
自分の肉体に適合した食料を摂り込もうとしていた


抗いがたい欲求に素直に従おうとしていたキャスケットが、ふと感じた視線に 直前で動きを止める

この時点で、まだ キャスケットの理性は戻っていなかった
なのに 身に馴染んだその視線は食事の手を止めたキャスケットの顔を上げさせた



瞬間、視界が捉えたのは ローの目だった

何の感慨もない、じっと キャスケットの行動を見守るだけの、観察者の視線。

止めることもしない
かといって、いつも彼が言うように食事を勧めることもしない

感情を排除したローの視線を浴びた瞬間、キャスケットの頭に理性が蘇る

慌てて身を起こしてみれば 不審そうな、物問いたげな目でキャスケットを見るペンギンが自分の下に居た

「・・・っ、」

たった今、自分のしようとしていた行動を理解した途端、血の気が引く
"食事"なんかしないと あんなに何度も口にしていたくせに、込み上げる衝動にあっさり理性が飛んだ

(ローが見てなかったら、我に返る事なく彼の血を啜っていた?!)

こうなる予感があった。
だからこそ、"彼" には近付かないようにしていたのに――

初めて ペンギンに会った瞬間、どくりと全身の血が騒いだ
ヒトの中に紛れ人間と同じ生活を過ごしてきたこれまでの経験の中でも こんなに激しい吸血衝動を
感じたのは初めてのことだった
戸惑い 混乱したキャスケットはペンギンに対して 初対面にも関わらず酷くそっけない対応をした。
普通の人間なら 意味もなくあんな失礼な態度を取られたら ムッとしたはずだ
・・・嫌われてしまったかもしれないが、キャスケットには寧ろその方が都合が良かった

本能のようなものが、告げている

"この人間の血は 自分には 特別だ"

これまで、体の中に流れる半分の血を否定して生きてきたキャスケットには 吸血鬼としての知識はあまりない。
ハンターを生業とした為、彼等の習性については多少の知識を得ているが、キャスケットの知っている事といえば
自らも吸血鬼のくせに微々たるものでしかない

(だけど、どうしてだか 分かる)

"彼"の血は キャスケットの体と抜群に相性が良い
自分の為に生まれたかのようなそれは 他の人間の血の何倍もの力を、キャスケットに与える

人間でいえば、血液型・・・とりわけ、骨髄液や臓器移植可能なドナーに近いのかもしれない
多分、細胞レベルで合致する、双子かクローン並の適合率の血液。
キャスケットが吸血鬼であれば、餌として飼っておきたいと望むに違いない、ペンギンは そんな人間だった

知識に乏しいキャスケットが知る由も無いのだが、何百何千の人間の血を吸ったところで巡り会えるとは
限らない程の稀少な存在。

吸血鬼にとっては思わぬ僥倖であるその出会いは、キャスケットにとっては最悪の出会いで
月の満ち欠けに関係して時折強くなる衝動を抑えるには、彼という存在は非常に危険だった

近くにいれば、いつか彼の血を口にしてしまう

だからキャスケットは 出来得る限り彼との接触を避け続けていた









弾かれたように立ち上がったキャスケットは 真っ青な顔を強張らせていた
激しいショックを受けたように、酷く取り乱して部屋を出て行ったキャスケットの戻ってくる気配はない
代わりに、部屋に残ったのは いつからそこにいたのか、初めて見る若い男だった

華奢で、どちらかと言えば貧弱な体のキャスケットに押さえ込まれて動けなかった事も意外だったが、それよりも
出て行く前に彼が見せた表情の方が気になった
この男の掛けた言葉で キャスケットは余計に顔を歪めたような気がする

飛び出していったキャスケットは嫌悪というよりも悲痛な目をしていて、状況の見えないペンギンは 男の言葉に
傷付いたのだろうか?と推測したものの、そうとは言い切れないものを感じて惑う

彼は 何と言ったのだったか・・・
そうだ。 たしか、『なんだ止めるのか? そんなとこまで中途半端だな、お前は』 というような事を言っていた。
あれは、どういう意味なのだろう

「あんた、誰だ」

部屋に残ったものの ペンギンの事は見事に無視していた男へ話し掛ける
じろりとこちらを見た男の目は 白目の部分の青みが濃く、不思議な威圧感を感じさせた

「別に俺が居ても不思議はない。 ここは 俺の家だ」
「・・・あんたの?」
大きくもなく、張り上げたわけでもないのに 男の声は良く耳に響いた
だが、ここはキャスケットの家のはずだ
家族は居ないと聞いていたが、それは間違った情報だったのだろうか
「あんたは、奴の家族か」
「いや。 ただの同居人だ」
答えた男は ゆっくりとこちらに歩み寄り、まだ床に手をついて身を起こしただけのペンギンに腕を伸ばした

立ち上がるペンギンに手を貸した男も スリムな見た目と違って力があった
だが、近くで見れば分かる。 キャスケットと違って、この男のラフな服装の下にはきちんとした筋肉がついているようだ

「待ってもあいつは戻ってこないぜ」
帰りな、と 家人に勧められてはいつまでも粘るわけにもいかない
それに 出て行った時の様子では 男の言うとおり、キャスケットは戻って来そうになかった


素直に立ち去ろうとしたペンギンを見送る男が告げた一言に足を止める
眉根を寄せて振り返っても 同居人を名乗る男はもう興味を失った様子で、説明を求めるペンギンの視線を
あっさりと無視して背を向けた

その背を見送って佇むペンギンの耳に、男の言葉の残滓がこびり付く


"深入りするな。 あんたにもだが、主に、あいつの為に"

語る男の存在もまた、くっきりと強烈な印象をペンギンの記憶に焼きつけていた











 踏み込んだ先

"近付かないで お願いだから"

ペンギンが触れたのは 彼が避け続けていた 場所












ローはキャスが我に返るの知ってて見てたと思います、多分。皮肉っぽい言葉は親しんでない二人の間では
普通の事で、キャスに理性が戻ってるの知ってて普段通りに振る舞ったんじゃないかな。本当はその台詞の後
「中途半端に止めるとこっちにまでとばっちりがくる(ペンギンに吸血鬼の存在を知られるのは迷惑だから餌に
するならしろ、殺すなら殺せくらいに考えてるロー)」みたいな会話にしようと思ってたんですが千堂の思った以上に
キャスがショック受けてて追い打ちになる台詞を続けられませんでした。



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