SS置場6 個人秘書 P 「失礼します」 呼ばれて、主人の部屋を訪ねたキャスケットは、入室した途端に次々と指示を受けて、言われた予定を 必死で頭に詰め込んでいく 来客の予定と、次の商談相手との会合にぴったりな食事会場の手配。 会議の日時の変更と取引先の人間の調査の依頼。 メモをする時間もあらばこその主人からの指示を記憶して、後にスケジュールに書き込めるのは 部屋を出て自分の席に戻ってからだ ここで働くようになってから随分と記憶力が上がった気がする うっかりしてミスでもすれば、また、ペンギンに馬鹿にされるのだ 好き好んでこの上司の下に就いたわけでもないのだが、キャスケットには職場を変える自由はない 上司の指示が途切れた事で用が済んだと退室しようとしたところへ、声が掛かった 「あぁ、待て、キャスケット。もう一つ・・・処理を頼む」 涼しげな声でさらりと与えられた指示は、本当なら秘書の仕事ではないものだ 「・・・分かりました」 意識して平坦な声を出す 声にも、顔にも、こんな時の自分の感じた事を表に出せば、その方が後で悔しい思いをするだけだ。 「失礼します」 上司の傍に近寄り、声をかけて椅子を動かす 机の下に潜り込むようにして跪いたキャスケットに協力して、上司であるペンギンが座ったまま 膝を開く だが彼の協力はそれまでで、ベルトに手をかけるのもジッパーを下ろしてソレを取り出すのも、全てキャスケットの仕事だ。 まだ平常の状態のソレに手を添え、顔を近付ける 本当であればこんな事はしたくないし、どうしても避けられないのなら せめておしぼり等で綺麗に拭いてしまいたい。 なのに そこまでのわがままは許されていないから、キャスケットは感情を押し殺して 上司の性器に口を寄せる ぺろり、と舌を伸ばして一舐めする 自分と同じ、雄の匂いのするそれを、ぴちゃぴちゃと唾液を絡ませながら舐め上げていく その間 手を遊ばせている事も怠慢と見なされるので、先を舐めながら竿を刺激し、時には袋の方にも 指を這わせて奉仕する (ここで我に返っては 負け) 必死で手を動かすのも舌で刺激し続けるのも、早く終わらせる為の手段だと、己に言い聞かせながら いつの間にか覚えてしまった手練手管を上司の性器に施していく ある程度、芯を得て大きくなってくれば、ぱくりとくわえ込む事が要求される。 命令されてそうするのはムカつくから、キャスケットはそうされる前に進んで口に納めるのが常だった じゅる、と絡めた唾液を飲み込むように啜り、男のアレを喉の奥まで飲み込むのはキャスケットにとって屈辱でしかない 春を売る女のような、手慣れた仕草で奉仕するのは たとえどんなに強要されても受け入れ難い行動で、なのに それをしているのは キャスケットには家族が負った大きな借金があるからだった 父が友人の借金の連帯保証人になっていると知らされたのは 逃げ出した友人の代わりにと借金の取り立て人が 家にくるようになってからだった 持っていたそれまでの貯金を全て手渡し、それでも全然追いつかず、取り立てのやかましさに音を上げた父の 早期退職金まで根こそぎ奪われて、さらに連日やってくる取り立て人。 母や妹を風俗に連れていかれそうになるまで追いつめられていたキャスケットに手を差し伸べ肩代わりしてくれたのは、 同級生だったこのペンギンだけだった "利子もない。催促もない。金は払える範囲で何年掛かってもいいから返してくれればいい" 疲れ果てていた家族が涙を流して有り難がったペンギンの申し出が、キャスケットが秘書として彼の会社で 働く事が条件だとは、自分以外の誰も知らない ぐちゅぐちゅと唾液の溜まった咥内を ペンギンが気紛れに掻き回す 息が詰まって苦しげに顔を歪めるキャスケットの頭を さわさわと撫でる手は、自分を女だとでも思っているのか 顰めっ面を楽しむように緩やかに動いていたペンギンの動きが 徐々に早いものに変わっていく キャスケットの口の中で、また 一回り大きくなったそれを喉に押し込むようにされて、肩の跳ねたキャスケットが えずくようにしていてもお構いなし。 後頭部を押さえつけ、ガツガツとつっこまれている自分は まるで彼の為のおもちゃみたいに されるがままだ 「・・・・っ」 一際、深くに押しつけられ、涙の滲む目をつぶった瞬間、喉の奥に迸りを感じる 吐き出そうにも彼の性器に蓋をされていて、仕方なしにキャスケットはソレをごくりと飲み干すしかない。 咥内に残る全てを胃に収めるまで ペンギンが抜く事はないから、残さず呑む事までが仕事なのだろう じゅ、と吸い上げて尿道に残るものまでも嚥下して初めて キャスケットの頭は解放されるのだ 汚れなく、綺麗に舐め上げて 上司の服を整えるまで、仕事は終わらない 全てを終えたキャスケットが立ち上がる前に、もう一度、ペンギンは頭を撫でる まるで自分の所有物のようなその仕草がキャスケットは大嫌いで、今日も、少しばかり嫌悪が顔に出てしまったらしい 「いい加減、その顔はやめないか」 「・・・生まれつき、こんな顔ですよ」 思わず言い返した事で、この上司を怒らせやしなかっただろうか 「最後、歯を当てないように気を付けろ」 「すいません」 気を付けるもなにも、キャスケットの頭を掴んで動かしていたのはペンギンの方だ。 だが、文句を言っても仕方ないので 謝って早くこの部屋を出て行きたかった 席に戻る前にトイレに寄って口を濯ぐくらいの自由は認められていた 「生まれつきじゃ、ないだろう?」 「・・・?」 はじめの会話に戻った事を不思議に思って顔を上げると、苦笑を浮かべた上司がそこにいた 「席でも、家でも。他の者には いつも笑顔だ」 ・・・こんな事をさせられて、その上で笑顔を浮かべろというのだろうか、この上司は。 (馬鹿にしてる。好きでこの仕事をしてるとでも、思ってるのか) 目の奥が座っていくのを感じて、沈黙したキャスケットを眺めた上司が肩を竦める 「もういい。さっきの手配、頼んだ」 睨むような目つきになっていたのに、咎める事無く背を向け仕事に戻った上司に一礼して、 本来の仕事に戻るべくキャスケットも"元友人の上司"に背を向け 部屋を後にした 私的秘書 ほんとうに望んだ関係は、こんなものじゃなくて [*前へ][次へ#] [戻る] |