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SS置場6
unlucky
調子が出なくてダラダラと進めただけの駄文。なんちゃって現パロ。時間なくて校正前のままUP。あ、変な設定ですがローは普通に人間です









とうとう、人気の無い場所に追い詰められたペンギンは 背中をひやりと伝う汗に眉を顰めた

目の前に対峙する男は 通称『死の外科医』と呼ばれる曰く付きの輩で――奴に目を付けられて
生き延びた人間は居ない、というのが通説だった

自分と関わる事は一生ないと思い込んでいたその男、死の外科医とペンギンの人生が交わったのは
ほんの少しの偶然の結果で、
(そもそも、奴の仕事の現場になんぞ、鉢合わせるはずじゃなかったのに)
運悪く、ペンギンが死の外科医が請け負った仕事の一端を目撃してしまった事に因る

それも、その瞬間や現場自体を見たわけじゃない
完全なるプライベートで友人と待ち合わせた場所に向かっていたペンギンが、僅かな時間の遅れを気にして
近道をしようとしたのが原因で、たった今、仕事を終えた帰りの奴と擦れ違った
・・・それでも、ふと感じた微かな違和感に振り返ったりしなければ良かったのだ
(そうすれば今頃 ただの通行人として何事もなく放っておかれただろう)

どこにでもいるサラリーマン風の、細身の男と擦れ違った
男の行動に何も不審な点はなく 気にも留めずに擦れ違ったペンギンは、ふと、何かが引っ掛かって足を緩める
振り返って眺めてみても やはり奇怪しいところは何も無い
なのに、男が身に纏った空気の何かがペンギンに注意を喚起した
危ないと感じていながら振り返ってしまったのは明らかに失敗で、ペンギンと同じく後ろを振り返っていた男と
目が合った時点で確信に変わる

――関わってはいけない輩
ぞくりと足元から這う怖気が全身を強張らせる
自分が、見てはいけないものを見たのだと直感したペンギンは 知らぬふりで目をそらして元の道を歩む様子を
見せながら、この危機を乗り越えるにはどうすべきかと脳内でめまぐるしく思考を巡らせる
『このまま立ち去ったところで見逃してくれるのだろうか
大勢の人目に触れる場所まで逃げ切れるか?
待ち合わせ場所に向かうのは論外だ』
何も気付いていないふりで足を進めても無駄な気がした
平静を装って大通りに向かった背後に 人の歩いてくる気配がする
かといって、振り向きもせずに駆け出せば、それだけで何か恐ろしい事になりそうな予感がしてならない
徐々に距離を狭めてくる背後のソレが牙を剥かぬよう祈りながら、叫び出しそうな喉を抑え付けて歩くペンギンが
迫り来る気配に追いつかれる、と覚悟を決めた途端、
プァン、と鳴るクラクションに弾かれたように顔を上げ前を見た

それを境に ざわざわという雑踏の音と、通りを抜ける車の立てる音が聞こえてくる
夢から現実に戻ったような不確かな感覚に戸惑っているうちに、気付けば背後の不穏な気配が消えていて
慌てて振り返ってみてもそこには薄暗い路地が広がっているのみで誰の姿もなくて――
「助かった・・・のか?」
そう自問しながらも これで厄介事から解放されたとも思えず、結局その日ペンギンは約束を反故にして
うろうろと出鱈目に街を歩き回って帰宅したのだった




(撒いたつもりだったが、素人の勘では及ばなかったんだろう)
自分は あの時の男に自宅までつけられてしまったらしい
暫くの間、警戒しながら過ごしつつ情報を集めていたペンギンは、あの時会った男が 『死の外科医』 と呼ばれる
アンダーグラウンドでは名の知れた男で、そいつが先日の仕事以来消息を絶っているという噂を聞きかじった

ひやり、と背筋が冷えたのが分かった
あの死神は 目撃者である自分の事を狙っているのではないか
この業界に身を置いているとはいえ、単なる運び屋である自分は アンダーグラウンドとはとても呼べない程度の
仕事しか請け負っていない
死神に関わるつもりも、彼の邪魔をするつもりも全くないというのに、何の因果でこんなことになった
"目撃者になるつもりもないしあんたの邪魔をするつもりもない"
分は弁えている、だから俺の事は放っておいてくれ
伝えようにも死神と連絡を取る術がなく、その手段があったところで結局は彼と関わりあわなければならず、
それはそれでペンギン的にも困るのだ
(あんな輩と顔見知りになっても良いことなんかない)

どうするべきか迷っているうちに ついに死神が行動を起こした



「ま、待ってくれ。俺はあんたに関わる気はないんだ」
頼むから放っておいてくれ、と言い終える前に舌が凍り付く
こちらの意思を伝えようと死神の顔を見たことで彼と目を合わせてしまっていた
「く、く、く・・・。 ある程度、『死神』について調べたんじゃねぇの? 迂闊だな」

聞こえてきた声は想像のような冷たいものと違って ごく普通の人間の声だった
寧ろ女の耳元で囁けば10人が10人とも魅了されるような響きの音。
「それとも、噂の真偽を疑ったか?」
一歩、また一歩と近付く男と目を合わせたまま、その場に縫い付けられたようにペンギンは動けない
『死神と目が合った者は彼の意思に従うしかない』
聞いたペンギンが 催眠術か?と首を傾げた彼についての噂は、身を以て経験して初めて分かる、
信じられない事に本当の事のようだ
恐怖に足が竦んでいるわけじゃない。ましてや、疑っていたペンギンが自己暗示に掛かったとも思えない
男が気を変えるよう説得しようにも舌の先すらぴくりとも動かせないのだ
どう切り抜ける!? と、焦るペンギンの背を冷や汗が伝う

「さぁ、どうしようか。 一生口が利けないように、自分で舌でも切り取ってもらおうか?」
それともいっそ車の行き交う道路に飛び出してみるか?

にやりと唇を引き上げた男に、間近に見つめられて 嫌な汗が体中から どっと噴き出した
そんなこと、自分の意思でするはずがないというのに、彼の口から出た言葉に唯々諾々と従いそうになる
馬鹿な、と目を瞠ったところで、ふいに 場違いに暢気な声が自分の名前を呼ぶのが聞こえて ぎょっとして
動かないはずの肩が跳ねた

それでも、男から目が離せない
――だめだ、来るな、巻き込んでしまう!
この時ほど動かない舌を憎く思ったことはなかった
自分のごたごたに友人を巻き込むのだけは避けなければと焦るペンギンを嘲笑うかのように 死神が
にやにやと笑って眺めているのが腹立たしい
「二人いっぺんか。面倒だな・・・いっそ、互いに殺し合うか?」
死神の言葉にギリギリと歯噛みするペンギンは呪縛から逃れようと必死で腕に力を入れる
そうする間も声が近付いてくるのだが、こちらの状況は友人には全く伝わっていないのだから 彼が足を
止める理由は何も無かった。方法を思いつく前に、無情にも友人の姿が視界の端に写る
(来るな、キャスケット!)
手が、意思を裏切ってポケットに忍ばせていた護身用のナイフに伸びていくのを絶望的な思いで
眺めたペンギンの目の前に 場にそぐわぬ笑顔が飛び込んで来た

「久しぶりだな、ペンギン! おまえこの前ドタキャンして以来ちっとも連絡寄越さねぇんだから。なんだよ、
この薄情者!」
元気か? と笑う友人は緊迫する空気に気付いていないらしい
自分一人でもマズイ事態なのにこの上彼まで死神に操られたらと気が気じゃないペンギンの様子を気にも留めず、
キャスケットは くるりと身を返して死神の方へと向き合った
「あんた、ペンギンの友達? 初めて見る顔だよな、俺 キャスケットっつーの。よろしく」
そう言って死神に握手の手を差し出した友人はしっかりと目を合わせている
手遅れだ、と目眩のようなものを感じたペンギンを余所にキャスケットは自分のペースを崩さない
ペンギンの方はというと死神と視線が外れたというのに体の自由を取り戻せずに固まったまま、ポケットのナイフを
握り締めて死神の命令を待つ状態でいた
「・・・ローだ。」
何をさせられるのかと緊張に顔を強張らせていたペンギンが、素直に答えた死神の声を聞いて眉根を寄せる
正体不明の死神が、名乗るだと・・・?
しかも、答えた男の声には先程までと違って若干の戸惑いが含まれているように感じる
間近で顔を見合わせて言葉を交わしているのに友人にはペンギンに起こったような変化はなく、死神はキャスケットに
対しては その力を使っていないようだった
意を決して死神の顔を見れば、眉を顰めて目の前の男を訝しげに観察している
そいつが 不意にペンギンの方へ視線を向けた
ぎくんとした時には既に遅く、体に沿って下りていた手が 急に顔の方へと上がった
ナイフを握る手は相変わらずポケットの中で、空いた手がペンギンの頭を覆う帽子を掴んで地面に捨てる
軽く頷いた死神が再びキャスケットの方へ向き直るのを見て、どうやら自らの能力をペンギンに使う事で
確かめていたのだと分かった

「ん? 何?」
握手を返してくれそうにない男に改めて見つめられたキャスケットが小首を傾げて見つめ返した
男の方も キャスケットに何かをさせるつもりか、合わせた目を逸らす気配はない
だが、ペンギンの心配を裏腹に やはりキャスケットは普段の彼と変わりなかった

「おまえ、何者だ?」
問われて、キャスケットが "えー?”と声を漏らしながら もう一度 自己紹介を口にしている
「ペンギンの、ダチ。 何、ペンギンって一度も俺の事話してないの?」
話題にも上んねぇのかよ、と苦笑してこちらを振り返ったキャスケットが足元に転がる帽子に気付いて
数歩近寄り ひょいと身を屈めてそれを拾う
「ペンギンも 何やってんの、おまえ。 トレードマーク転がして、何ぼんやりしてんのさ」
はい、と帽子を差し出した友人に顔を覗き込まれて、凍り付いた舌の代わりに目で訴えようと じっと
キャスケットの目を見返したペンギンは、フッ・・・と、体を覆っていた何かが薄れ、突如として呪縛から
解放されて目を瞬かせた

「・・・違う」
「へ?」

ペンギンが声を出した事に死神が目を瞠る
「そいつ、友達でも知り合いでもない、離れろ!」
「えええっ?!」
ぐい、と友人の腕を掴んで引っ張った――つもりだった
状況を把握していない友人は棒立ちで、簡単に引き寄せられるはずだったのに流石に死神の現状把握は早かった
掴んだはずの腕が空振る
ぎょっとしたペンギンの目の前で、キャスケットは死神に背後から羽交い締めされて彼の腕の中に収まっていた

「おもしれぇ。 何の原理か分からねぇが、こいつにゃ暗示が通じないらしい」
キャスケットの頬に顔を寄せた死神が異名の種明かしのような台詞を吐くのを聞いて、本日何度目かという
冷や汗を感じる
今のはもしかしなくてもアレか。 "知られたからには生かしちゃおかない?"
話につれれて、男の目を見そうになって慌ててペンギンは視線を逸らした
油断できない相手なので男の顔から目を離すのは危険だ。 だが、少しでも気を緩めると男の話術につられて
目を見てしまいそうだ
ピリピリと神経を尖らせるペンギンを見て、男が 面白そうに唇を歪める
「この世界、不敗神話が崩れたら面倒なのは知ってるよな」
挑発には乗れない。だが、今は耳を傾けるしかなくて 無言を貫く
「とすれば、選択は2つだ」
・・・ふたつ?
"消される" 以外の道があるのかと驚くペンギンに2つの道が提示される
「関わる人間もろとも、その事実を消してしまう」
そうくるのは予想の範疇だ。もう一つは、何だ?
「或いは、そいつ等を仲間に引き込む」
はっとして、死神の顔を見たペンギンが しまったと思う前に視線が固定される
絡み合った視線の先で、男の目が不気味に光るのを見た途端、ぎしりと音を立てて体が強張った

(暗示と分かっているなら、退けられるはず・・・!)
ギリ、と歯を食いしばったペンギンが 目を逸らすという行為とは逆に、男を睨む
余裕で薄ら笑いを浮かべる男とは対照的にピリピリと張り詰めるペンギンという構図の中、
「ん? 仲間?なればいいじゃん。そんじゃ、今日からあんたも友達だね」
脳天気すぎるキャスケットの声が響いて、目を剥くペンギンの目前で "死神"が声を立てて笑いだした







「だいたいおまえは考え無しだ!相手は"死の外科医"だぞ?!俺みたいな一介の運び屋が連れになってどうする!」
このばか!と叱り飛ばすペンギンの横でキャスケットが手を頭の後ろで組み口を尖らせている
「ったってさー、俺 ペンギンの仕事もよく知らないのに」
そもそも死の外科医って何さ。死神? 何それ。

門外漢、全くの一般人であるキャスケットに説いても無駄だった、とペンギンが頭を抱える
「命拾いしといて何が不満だ。俺にしても、"解除係"が居るのは都合がいいかもしんねぇし」
更に頭の痛い事に、キャスケットを挟んだ隣に問題の死神が平気な顔で歩いているのだから始末に負えない
そもそも自分達のようなトーシロに近い人間と組んで死神に何の得があるというのか
「ま、一口に言や"興味が湧いた"んだ。 単純なのか鈍感なのか、全く無反応な人間は初めてだ。そのうえ、
目を見ただけで暗示を解くだって? 興味は尽きねぇな」
「あんたも物好きだな」
「トラファルガー・ローだ。本名を聞いたからにはケツ捲って逃げるのは無理だぜ。"知っている"というだけで狙われる」
俺の手の内だと見なされてる間は無事だろうが、単独で逃げたとなりゃ どうなるか知らねぇよ
「・・・・・。」
選択の余地なんかない、進退窮まった事態に眉間に皺を寄せて絶句する
聞いただけで気が滅入る事態。とんでもない厄介事だ。 こんな奴と関わってしまうなんて全く!
「残念だったな。俺は運が悪い。そんなのを仲間に引き込んで、何が起こっても恨むなよ」
せめてもの意趣返しとばかりに悪態を吐けば、はん!と鼻先で笑われた
「どこが運が悪いんだ? 運良く キャスケットのような友人がいて、しかも無敗の死神の懐の中だ」
仏頂面のペンギンと違って、死神はすこぶる上機嫌だ
もう無敗じゃないだろうと冷静につっこめば、死の外科医は にやりと笑ってこう言った

「無敗だろ? てめえら身内じゃねぇか。別に負けちゃいねぇし仲間内で勝負はつけねぇ。俺ァ身内がやられるのも
許さねぇからな、足引っ張らねぇよう鍛えてやるから音を上げんなよ」
「やっぱり不運だ!」
「馬鹿だな。守ってやるって言われてんじゃん」
口を挟んだキャスケットの言葉に死神が笑いを零した
素人のこいつの方が勘が良いじゃねぇかと言われて 単なる相性の問題だろうと肩を竦める
どちらにしろ、キャスケットと死神の相性が良かったおかげで助かったようなものだった

「巻き込んじまった・・・のか?」
ぽつりと漏らした一人言は 隣のキャスケットにしっかり拾われた
「何がよ? 俺は面白ければ何でもいい!」
暢気な友人の言葉に救われながら 渋々仲間入りを認めたペンギン達が加わった事で死神の評判が更に上がったのは
それから暫くの事で、彼等がこの業界から足を洗ったという噂が囁かれるようになるのはその更に数年後になる









 

 幸運と不運を手に入れた死神

彼が手に入れたのは仲間という家族












ローの能力については詳しい設定はないです。強力な暗示が掛けられるんじゃないかな。悪魔の実は関係ないです
引退したのは他に楽しい事を見つけたから。きっと3人で堅気の仕事を始めたんだと思います。そこでは案外キャスが
役に立ったりして? 今回ただのバカっぽい子になっちゃった


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