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SS置場6
R-girl4 P
おお、すみません。別の話を書いてたので後半校正してないです。誤字とかあとで修正します!









act.10 バン+キャスケット


「ねぇ、このペンギンってどんな人? 声、渋いよね!」
かっこいい? と興味津々で聞いてくるキャスケットに、さぁなぁ・・・と、惚けてみる

「なんだよ、プライバシーとか気にしてんの? だったら 俺のプライバシーはどうなんだよ。顔出ししてるし
服まで俺のやつじゃんか!」
バンのケチ!と、ぽんぽん文句を言ってくる従妹を諫めて勿体付けるように にやりと笑う。
まぁ 焦らしても仕方ないしとバンは あっさりと口を割った

「背は結構高ぇよ。 俺よか、こんくらいは高いかなぁ」
手で 自分との身長差を示しながらキャスケットの様子を覗う
それで?それで? と、目を輝かせて続きを強請る従妹はどうやらプレイヤーであるペンギンに相当興味を
持ったらしかった
「まぁ、大学名だとか連絡先だとかはホントの個人情報だから教えらんねぇけど・・・」
「そんなのどうでもいいって。 見た目どうよ? イケメン?」
「何を期待してるんだ おまえは」
笑うバンに向かって キャスケットは だってさーと頬を膨らせて上目使いに睨んできた
「この前 初めて会話モード使ったんだけど、すっごい大人っぽくってさ!あの人、ホントにバンと同じ年?」
「あのなー、俺だって出るとこ出りゃちゃんとしてるっての」
キャス相手に格好つけてどうすんのよ、大体 この話纏めてきたの俺だぜ?

相変わらずの親しい間柄の気安さで じゃれ合いながらも きちんと仕事はこなさなきゃなと、バンは
用意していたセリフを舌に乗せる
「ま、見た目かなりイケてるぜ? 多分 キャスの好みだと思うんだけど」
スカウトする時 気に入りそうだって思ってさ、と思わせぶりに話を振りながら携帯を取り出す

従兄の言葉に思い切り食い付いた様子で手元を見つめるキャスケットに ペンギンを写した画像を見せてやると、
「ふ、ふぅん・・・確かに、そこそこ、格好いいね」
一生懸命虚勢を張った従妹は そう言葉を返しながら ぽっ、と頬を桜色に染めた





act.11 キャスケット(バン視点)


「よぉ、キャス。 お疲れ」

ペンギンが大学の研究室に顔を出している時間帯を選んで食事を運んできたバンが 軽い調子で
ノックと同時に扉を開ける

モニターに向かって座っていたキャスケットが、ぎょっとしたように振り返った向こうでは、今は起動
していないはずのゲームの画面が起ち上がっていた

どうやらペンギンは順調にこのゲームにはまっているらしい。
外出中も頻繁にゲーム画面が呼び出されているから 移動中の電車の中や待ち時間の合間など、
手の空く機会は逃さずゲームに興じている
(まぁ、ゲームにハマってんのか キャスケットにはまってんのか、分かんねぇけど)
手が離せないらしいキャスケットを気遣って、すぐ横のテーブルに持って来た食事を置き、その
ついでとばかりに画面を眺めると、げしんと結構な勢いでキャスケットから足を蹴られて、いてぇ!と呻く。

見ればキャスケットは これでもかというほど顔を顰めて "さっさと出て行け" と身振り手振りで合図を
寄越すと、慌ててゲームの画面に視線を戻した

「なんだよ、乱暴だなぁ」
外出中で 普通の選択モードである為 バンの声をマイクが拾う心配もない
ちょっとくらい見ててもいいだろうがと態度で示せばキャスケットに思い切り睨み付けられた

顔が赤い上に やりにくそうにしている所を見ると、ペンギンとゲーム中の自分をバンに見られるのが
恥ずかしいらしい
最近やけに楽しそうにバイトに励んでいるキャスケットの、彼女らしからぬ変化に目を細めて眺める
これはバイトの相手、プレイヤーであるペンギンを 異性として意識し始めているとみて正解だろう
(こういうとこ、やっぱ女の子なんだよなぁ)
なんとなく感慨深い思いでいたバンの隣では、いつまでも立ち去らない従兄に痺れを切らしたキャスケットが
ガンガン足を蹴りつけている
(・・・恋する乙女の言動にしちゃ ちょっとアレだけど)
まぁ 気になる男が出来たからといって急におしとやかになるような奴じゃねぇか

モニタリングの対象としてではなく 従兄としての目でキャスケットを観察していると、不意に彼女の手が
キーボードをカタカタ叩き始めた

「ん?」
画面を見れば、モニターの中では 従妹の演じる"キャスケット"が
『ごめん、ペンギン。ちょっと待ってて!』 と発言している

おい、こんなイベント用意してねぇぞと目を瞬かせるバンを、立ち上がったキャスケットが ぐいぐいと
扉の方へと引っ張っていく
「もう!邪魔しないでよ、バン!」
ぐいっ、と部屋の外へと押し出した従妹は、そう捨て台詞を吐いて扉を閉め切る
「え・・・」
部屋の外で ぽかんと閉まる扉を眺めていたバンは
「ええぇ?!ちょ、まずくねぇ?」と思わず漏らす

普段のキャスケットなら ここまで嫌がる事はないだろう
邪魔だと追い出す事も有り得なくはないが、その場合でも 放り出したバンに べっ!と舌を出すくらいは
やりそうだ
(おいおいおい。 ちょっと、ヤバくねぇか?)
そんな余裕もないくらい、ゲームの相手に夢中なのだろうか、キャスケットは。

恋愛に憧れる女子高生がゲームの中で少しばかり疑似恋愛を見せてくれればと思って 従妹に
持ち掛けたバイトの話――

「"ゲームの中での恋"だって、分かってるよな・・・?」

まさかと半信半疑で自らの疑問を打ち消しながらも、バンは不安そうに呟いた





act.12 ペンギン


『ごめん、ペンギン。ちょっと待ってて!』

そう言ったキャスケットからの反応が途切れた事で 不意に現実に呼び戻される
ゲームの画面から目を離して辺りを見回せば、窓の外には見慣れた景色が広がっていて
移動中に電車の中だったのだと思い出す
このところ、移動の時間や睡眠時間もそっちのけでゲームに浸かりきっていた
"恋愛シミュレーションゲーム"
この手のゲームにはあまり興味が無かったのだが、始めてみれば意外にも夢中になってしまっていた

・・・可愛いのだ。ゲームの中に居る、ヒロインが。
バン達開発者の手で作られたキャラクターだというのに、それが売りなだけあってか 相手役の
"キャスケット"が非常にリアルに感じられる
本当に、実物の人間と話しているような気がして、ゲームの中のキャラクターなのにペンギンは
キャスケットの言動に振り回されていた
(バンには、見事な出来だとしか言いようがないな)
テストプレイの約束は2週間。
このゲームは ヒロインとうまくいって彼女にした段階では終わらないシステムになっている。
その後の"できたてほやほやの彼女とのリアルタイムの生活が楽しめる"のが売りだと
バンは言っていた
手をつないで歩くのもまだ照れくささの残るような、そんな初々しいつきあい始めの二人が
徐々に距離を縮めていく様を ゲームで疑似体験出来る
『むしろ落とした後の方がお楽しみだぜ』 と、バンは得意気に笑っていた
かなりの自信がある口ぶりの説明を半信半疑で聞いていたのだが どうやらバンの過信じゃ
なかったようだ
(2週間・・・なら、そろそろ付き合いを始めるべきか)
すでにキャスケットとは何度かデートらしきものをしていて、告白する機会さえあればうまくいくのは
目に見えていた
どのタイミングで告白イベントが来るのかと待っている段階で、思えば 自分がここまではまったのは
あの"会話モード"を体験してからだ
(今日も早く帰れたら、会話モードにしてもいいな)
キャスケットの声は耳障りが良い
少し尻上がりに話すしゃべり方も気に入っていて、話し始めたらいつまでもインカムを手放せなくなる事も
多い為、次の日の予定が早い日は会話モードは避けるようにしてる

『ごめん、ペンギン! ちょっと電話が掛かってきてて』
待たせてごめんと画面から自分を覗き込むキャスケットの顔は やっぱり可愛かった
『電話、誰からだったんだ?』
気付けば、探るような選択肢を選んでいる
『んん。 学校の、友達』
――男か?
そういう選択肢があれば、間違いなくペンギンは選んでいただろう
幸い 画面に表示されている中には そんな嫉妬めいた台詞はなく、無難に会話を続けていく
(・・・はまりすぎだろう。 ゲームのキャラを相手に、嫉妬?)
自分でも苦々しく思いながらも ちり、と胸が痛んだのが分かった
電話の相手が男じゃないのかと勘ぐるくらいに、自分は"キャスケット"にはまっている

「・・・まずい、よなぁ」

2週間のテストプレイを終えた後、ぽっかり胸に穴が空くような羽目になるんじゃないか
ペンギンは、そう 心配しながらも ゲームから目が離せずに そっと、画面に映るキャスケットの輪郭を
指でなぞった



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