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SS置場6
ハグ魔 P
海賊設定。今回ちょい役で出てくるバンさんは若い方。でもペンやキャスよりは年上。ローと同じくらいかな?
junkに置いたロキャスとかも含めて最近微妙なやつが多かったのでたまにはこんな感じでペンキャス。












酒に酔ったらキス魔になるというのはよく聞くが、それを言うとキャスケットはハグ魔である

抱きつくのもそうだが 彼は寧ろ抱かれたがる

酔って子供返りするのだろうか
誰かの愛情を感じていないと不安になる、そんな 年齢の子供に。

しかも酔っ払い特有の症状で キャスケットは相手を選ばない

あぁ。今日のターゲットは たまたま近くで飲んでいたバンだ

「バン〜〜、バンさん!バンちゃんv 抱っこv」
さっきまで抱えていた酒瓶もグラスも放り出して キャスケットは隣に座る男に凭れかかる
抱っこをねだりながら伸ばした腕がハグを求めて相手に巻き付いた

仲間内では彼の酒癖は有名で、バンの対応も慣れたものだった

"ハイハイ、キャスくんはまた酔っ払っちゃいましたね〜"
そんな子供に話すような口調でからかって なのに、ほらおいで、と笑って胸に迎え入れる
・・・自分達は慣れているのだ

抱きつくキャスケットを満足させるように 一度 ぎゅっと強く抱き締めてやる

くふん、と嬉しそうに笑みを浮かべて腕の中に収まる男は 普段の生意気な顔は何処へやら。
すりすりと甘えるように身を寄せて バンの腕に落ち着くと きゅ、と彼のつなぎを握りしめて満足そうな吐息を漏らした

重ねて言うが、酔ったキャスケットは相手選ばずの見境なしだ


初めて彼のその酒癖を知ったのは ペンギンが船に乗って一月といったところだったか

予備知識なく突然、仲間の1人から撓垂れ掛かられたペンギンは面食らった
周囲のクルーは慣れているのか「酔ってんだよ、好きにさせてやれ」と笑うだけで取り合わない
船内の人間の性格やなんかが頭に入って暫くといった頃合いのペンギンは 向こう意気の強くて活発な男が
酒に呑まれるとこんなに甘ったれた顔を見せるのかと驚いた

ペンギンより半年ほど先に船に乗ったというこの男は たかが半年の差ではそう変わりないというのに、それでも
その事に拘っていた
何かにつけ、競うようにペンギンを意識し、ライバル視していたキャスケットを 正直なところ若干苦手に思っていた。
持って生まれた身体能力が 少しばかりペンギンの方が彼より勝っていて、それがまたキャスケットの気に
障ったのだろう。 今から思えば、気に障ったというよりは 彼はその事を気にしていたのだ。
意地っ張りなところのあるキャスケットは、それをうまく"負けるもんか"という闘争心に替え自分を磨く糧としていた


日頃自分に突っかかってばかりの相手から、ハグを強請られる
その事に戸惑っていたペンギンは 周囲の助言で 恐る恐る、寄りかかってくるキャスケットを抱き締めてみた

腕の中で 安心したように小さく息を吐いた彼の、普段なら絶対に自分に向けられない蕩けるような笑顔に
ペンギンの中のどこかが ざわりと粟立つ
全幅の信頼を置いて相手に身を預け、嬉しそうに見上げるその顔に意識を取られ、あろうことか その男を
"可愛い" と思ってしまった
思わず 抱き締める腕に力が籠もったのだが、キャスケットは嫌がるどころか寧ろ甘えるように身を擦り寄せ
幸せそうな笑みを浮かべた
相手が女であれば誘われていると受け取ったかもしれない
女でなくても、そこが人目のある場所でなかったのなら 押し倒してしまったかもしれなかった

"ペンギン? あのさ、そいつ、ホントに天然だから。"
ハグ魔なんだよ、と 隣に座っていたバンから耳打ちされて ハッと我に返る
(あやうく、馬鹿な勘違いをするところだった)
夢から覚めたような様子のペンギンに バンは苦笑していた
「いや・・・、いや、大丈夫だ」
つっかえながら答えたペンギンに笑って肯いてくれたバンも、その言葉を信じちゃいなかったことだろう
"どこが 大丈夫なんだか・・・"
自分は すっかりこの男に意識を奪われてしまったのだと苦々しい思いで腕の中を見下ろすと、人の気も知らずに
キャスケットは すやすやと安心しきった吐息を立てて眠ってしまっていた

「可愛いもんだろ。まだ16だしなぁ」
ペンギンの肩越しにそう言ったバンに ぽよんと頬を指でつつかれたキャスケットは うにゅうにゅと何か呟きながら
抱き留めたペンギンの腕に顔を埋める
「そういやおまえも同じようなもんか? 17・・・だったか」
「2ヶ月後には18だ」
自分に凭れる温もりから気を逸らすように仲間との会話に集中するペンギンの目元は うっすら赤い。
それが酒に酔っての事じゃないのはペンギン自身が一番良く知っていた
己に生じた感情を否定するにはペンギンは現実主義過ぎていて、
(惚れちまったものは仕方ない)
そう、認めたのは それからすぐの事だった




「んな、睨むなよ。ほら、寝ちまった。連れてけ」
笑うバンに手招きされて "睨んでなんかいませんよ" と返しつつキャスケットを受け取りに向かう

正直に認めたペンギンが皆の前で『惚れてる』宣言した事により、キャスケットの保護者と呼ぶべき立場を
手に入れていた
キャスケット本人は断固として認めておらず、彼の気持ちをこちらに向けるのには まだ時間が必要ではあったが。
(時間はたっぷりある。そのうち、あいつがハグを強請る相手は俺だけにしてみせる)
それまでの間は この役得に甘んじる事で満足しておこう
しがみついて眠るキャスケットを彼の部屋まで運びながら このくらいは運び賃として貰ってもいいだろう、
勝手にそう判断して、眠る彼の頬に唇を落とした








 恋 に 落 ち る


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あきゅろす。
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