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戦国BASARA
【小政】たまには寝坊も三文の徳
(戦国)(人物捏造アリ)



朝、久々に自分の力で身を起こした。
時刻は正午手前。

「Oh・・・こいつは寝すぎだな」

昨日は10時には床についていたはずなのに。
未だ布団にくるまりながら、クスリと笑みを零す。
それにしたって、いつも起こしにくるはずの小十郎はどうしたのだろうか。
俺に声もかけず、城下に買い物でも行ったのか?
それとも、普段頑張ってる俺へのご褒美・・・とか?
・・・できれば、目覚めのkissの方が嬉しかったなぁ。
そんなおめでたいことを考えていれば、ドタドタと慌ただしい足音が耳に届いた。
どうやらその主は俺に用があったようで、忙しない足音がなくなると同時に、

「まっ、政宗様ァア!」

と、襖を思いっきり開けて、俺の前に姿を現す。
何となく床を駆けるspeedとかで、小十郎だと予想していた俺はほとんど驚かない。
それよりも、

「Oh・・・お前、めちゃくちゃ色っぽいな」

息を切らしながら、額に張りついた前髪をかきあげる様はひどく扇情的だ。
こんな恋人の艶姿は、あまり他の奴らに見せたかねェなー・・・。
なんて呑気に笑っていると、小十郎の頭が鈍い音をたてて畳に叩きつけられた。
いわゆる、・・・土下座。

「申し訳ありませぬ・・・っ、この小十郎めの失態をお許しください・・・!」

切羽詰った様子で、額を畳に擦りつける小十郎。
ぽたり、と畳表に小十郎の頬より汗が滴り落ちた。
・・・珍しい、emwrgencyか。

「Ok、・・・で、どんな状況なんだ?」

どうやら俺が寝ている内に、奥州に攻めてきた奴らがいるらしい。
俺は柔らかな温もりから抜け出て、戦装束を衣装棚より引き出した。
瞬間、ごくんと小十郎が息を呑みこむ音が聞こえた。
不思議に思い後ろを見やれば、グっと唇を噛みしめた色男の顔。

「・・・っ、政宗様の手を煩わせる気はありませぬ」

「・・・Why?それは、どういう・・・っ」

俺が寝巻きの上を脱ぎ崩した矢先、小十郎の袂より、鋭利な小刀が取り出される。
・・・切腹をするときに使う刀。
驚きに固まってしまった俺を見ることなく、小十郎の左手にしっかりと刃が握られる。
その瞬間に俺の背筋が凍りつき、同時に本能のまま身体が動いていた。

「Wait!小十郎っ、待てってバカ・・・ッ」

愛しい腹心の名を叫んで、そのたくましく割れた腹部にとびつく。
そうすれば小十郎の動きがぴたりと止まり、頭上より聞こえるは荒々しい息づかい。
ポタリ、と透明な雫が頬に伝う。

「まっ、政宗様・・・!危ないではありませぬか!!」

「Shat up!・・・お前の方がdangerousだバカこじゅ・・・ぅ」

あまりに激しい展開に、自分の声まで震えているのが分かった。
らしくなさに自嘲じみた笑みを浮かべながら、小十郎が生きていることに安堵し次々に涙が溢れる。
小十郎の固い腹に強く頬を押しつければ、優しい大きな手の平が俺の頭を撫でてくれた。

「・・・政宗様、小十郎の失態を・・・許していただけると・・・?」

「許す・・・っ、だから、死ぬなら俺も・・・一緒に逝くからぁっ・・・」

置いていかないで・・・と消え入りそうな声で呟いた。
小十郎の失態、ってのは、伊達軍の奴らのことなんだろ?
お前は自分の読みが甘かった、って自分を責めてるんだろ・・・?
そう嗚咽混じりに言えば、小十郎は遂に黙りこんでしまった。

「・・・俺は奥州の筆頭だっ、自分の死に際ぐらい弁えて・・・!?」

そう呟けば最後、小十郎の手により俺の身体が抱き上げられる。
いとも容易く、しかし慈しむように繊細に持ち上げられた男の体躯。
瞳を見開いた俺は、小十郎の血の通う温かな腿の上に強制的に座らされた。
慌てふためきながら竜の右目を覗き込めば、その瞳は困ったように弧を描いていた。
そうして何を思ったのか、先程まで手にしていた短刀に床に落とす。

「・・・どうやら、政宗様は勘違いをなされているようです」

微笑しながら囁かれ、俺はなおも理解できず困惑の表情を浮かべた。
頭の中がぐるぐるとして、冷たくなった涙が小十郎の着物に落ちる。
・・・そういえば、どうして小十郎も寝巻きなんだろう。
その考えに至ると同時に、ひょっこりと見知った頭の影が見えた。

「・・・何やってんの、こじゅ兄と梵・・・って泣いてるゥ!?」

「・・・し、成実・・・お前、生きてたのか・・・っ?」

「はい・・・!?何勝手に死んだ設定にしてんのさっ、梵」

生きてるも何も、ここ最近死んだ人間なんていないでしょうが・・・――。
成実が心底呆れたように言うから、思わず小十郎の方を凝視した。
小十郎の口角が上がり、ゆっくりとその頭が上下する。

「・・・What?・・・わ、わかんね・・・じゃあ、こじゅの失態って・・・」

「それは今朝、小十郎が寝坊をしてしまったことにございます」

Ahh・・・それで、誰も俺を起こしに来なかったってわけか。
じゃあ何だ?俺は、そんなことで小十郎と、しかも成実に泣いてる・・・とこ・・・・・・
shortした思考回路の中、楽しげな家臣たちの話し声が頭に響き渡る。

「それにしても、梵・・・その齢で泣くとか・・・相変わらず可愛いよねぇ」

「黙れ成実、この愛らしい政宗様を目に移していいのは俺だけだ」

「うっわ、相変わらずスゴイ独占欲・・・あ、この脇差こじゅ兄の?危ないから部屋置いとくよー」

エ・・・可愛いとか何?愛らしいとか、何?俺が?Why何で?
呆然とした俺とニヤけ面に小十郎を置いて、廊下をさっさと歩いていってしまうシゲ。
いつもなら穏やかで幸せな二人だけのお昼時。
でも今回ばかりは駄目だ、こじゅの顔見れねェ・・・っ//
こじゅの弧を描いた視線が痛くて、何とかこの場から逃げようとするのに足に力が入らない。
バタバタと無様に足掻いていた俺に、小十郎が苦笑まじりに声をかけてきた。

「政宗様」

たったそれだけの言葉なのに、俺の身体は自分でも驚くほどに跳ね上がって動きを止める。
恐る恐る小十郎と目を合わせれば、自分の顔に一気に熱が集まってくるのを感じた。
先ほどとは別の意味合いで、とてつもなく泣きたくなってきた。
瞳を潤ませながらも、身を焦がすような小十郎の瞳から目を離せずにいる。
そうすれば何故か、呆れたようなため息が小十郎の口元から零れた。
訝しげにその口元を見つめ、小首を傾げてみる。
すると小十郎の目線が徐々に下がり、薄い唇が吐息混じりに開閉した。

「・・・お召し物は、そのままでよろしいので?」

「んなっ・・!?」

バッと自分の身体に目を向ければ、惜しげもなく露になっている白い上体。
Maxに顔が熱くなって、瞬間的に全身が高熱を発したような気がした。
慌てて着崩された着物に手をかければ、それを制するように小十郎の手の平が重ねられる。
直せと言いながらも制止をかける小十郎に戸惑い、どうしたらいいのかと視線を向けた。
すると小十郎の口角が持ち上がり、それはそれは男前な顔で、

「・・・誘っておられるのでしょう?政宗様は」

と熱く耳元で囁かれた。
それと同時に全身が弛緩し、甘く痺れるような不確かな感覚に陥る。
いつもの自分らしさなど欠片もなく、動転しながら拙い言葉を紡いだ。

「っさ、誘ってなんか・・・!元はと言えば、お前がンなどうでもいいことで切羽詰まって」

「そんな涙目で怒られましても・・・煽られてるとしか思えませぬな」

早口でまくし立てた言葉も、小十郎の一言二言に遮られ勢いを失う。
そもそも煽ってるじゃねェ!これは目から汗が出てんだYou,see!?
そう叫びたいが、そんなこと言ったって見透かされて馬鹿にされるだけだ。
それに今の小十郎は・・・男の色気とやらが半端じゃなくて、格好よすぎて頭がグラグラする始末。
けれど絶対素直になんてなれない俺は、要領を得てない言の葉で小十郎に食い下がる。

「しょうがねェだろ!だってお前がっ、・・・ぇう」

「小十郎が?小十郎がどうかなさいましたかな・・・?」

俺の狼狽ぶりに笑みをたたえながら、小十郎はさも楽しげにそう聞き返す。
言えない、言えない、言いたくない・・・っ!
そう思っているのに、俺の唇は勝手に言の葉を紡いで止まってくれない。
俺の中で、小十郎への想いが飽和して溢れて零れでていく。

「・・・っお前が、急に、俺の傍からいなくなろうとするから!怖かった、んだ・・・もうやだ、から・・・ッ」

羞恥心に目蓋がきつく閉じられ、叫ぶように勢いよく言葉を放った。
途中居た堪れなくなって、小十郎の身体に体当たりしながらの所業だったが。
しかし言い終えた後、何ともいえない沈黙が二人の隙間を占めていく。
少しだけ不安に思って、たくましい胸板に埋めた顔を上げた。
一つ目玉に映りこむのは、小十郎の整った顔のみ。
ただし獣じみた・・・って、ヤバいよな?この状況・・・ッ

「・・・たまんねェな」

「!?・・・ちょっ、待てこじゅ・・・だ、だめッ・・・ふにゃあああああああああああああ、あ、あ、」

―――とある珍しい朝と、特別甘ったるい昼下がり。
伊達の主従は今日もなかよしこよし。








オマケ

「・・・たまには寝坊も悪くないですな」

「次やったらマジで切腹だからな!」

「小十郎が死んだら、困るのは政宗様ですぞ」

「・・・一緒に死ぬからいいもん」

「また可愛らしいことを・・・襲いますよ」

「Sorry、マジ勘弁してください」





お粗末様でしたァァ



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あきゅろす。
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