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戯言シリーズ・二次(中・長編)
戯言王国記4(ひといず)




***




さて、一か月後。

とうとう王家終結パーティーだ。
どれだけそのまんまの名前なんだ。

「じゃあ頑張ってね、汀目くん」
「おお…。」

今俺は超特大サイズの鏡の前を陣取っている。その隣には国王さんと欠陥製品。
鏡に映るあいつと俺は、ホントそっくり。まさしく鏡に映したようで。
・・・これで右頬のガーゼがなけりゃどれだけ、と思うんだが。

「意外とこの冠重いな。レプリカの割には良く作られてる」

しかもちゃっかり頭に収まるし。
ご丁寧に宝石までレプリカ用意してるみたいだし?すげぇ。

「ん?それ本物のはずだよ?純金製純金製。そして宝石が…なんだっけ、十種類くらいあったっけ?」
「記憶力が悪いのは僕と父さんで似てるよね」
「そうかな?」

・・・はあ?つまりホンモノ?!

「マジでか」
「王子が何で偽物被るのさ。一応周りには隠しておかないといけないことだからね」

そういえば今の欠陥製品の頭の上には冠は載っていない。……はっ!すっげぇ良い気分!
そういえばなんか行ってたな…複製を作ったら罰せられるとかなんとか。法律で。
王家の人間自身がそんなもん守るのか?罰するのは自分自身?傑作だな…。





「いーちゃんっ!」

突然ドアが凄い勢いで開けられて青い髪の少女が俺に抱き付いてきた。


・・・は?


「うにー。…ん?いーちゃんこんな匂いじゃないしこんな腰の細さじゃないし背が小さいしなんか違う。これじゃ僕様ちゃん充電できないんだねー。…誰?」
「友。それは僕じゃない。」

欠陥製品がくっ付いてきた少女に声をかける。
・・・何で全員が俺を見て背の高さについて傷をつけていくんだよ。

「うにっ!本物のいーちゃんだ!・・・・・・・・・じゅーでーんちゅー」

本物に気付いた途端、『・・・・・・・・・』の間に欠陥製品に抱き付く。
あー、こいつが例の?

「『玖の国』第二継承者、玖渚友王女。ようこそ壱の国へ」

王様が気障な動きで一礼する。
似合ってるんだから腹立たしい。様になってる。

「うにー。こんにちはなんだよー。ところでいーちゃんにそっくりなこの人誰?」
「…貴女に隠しても意味はありませんね。いーの影武者ですよ」
「あー。そういえばそんな情報もあったっけ……」

こてん、と首を傾げるこの王女。
それについては国王さんから話は聞いている。

『玖の国』。才能に抜きん出た人物が生まれることが多いと言われている。
王家の人間は蒼い髪と蒼い目を持つことが多い。工業や情報の面では常にトップを走る強大な国。
この国の王家関係に嘘をついたり隠し事をしたりしても大抵の事はこの第二継承者さんにバレるらしい。まあ彼女が父とかにそれを暴露するかは別らしいが。
よってバレる嘘はつかないというのが国家間での暗黙のルールなんだとか。
ってゆーか、王家関係にヒビが入らないか物凄く心配な情報なんじゃないのか、これ。
その国の王女、玖渚友。彼女がほかでもない、欠陥製品の身分を『罪人』から『王子』へと押し上げさせた張本人こと‘原因’。
ちなみに欠陥製品と玖渚友は婚約関係だとかそうじゃないとか噂されているらしい。実際はどうなんだと聞いたら曖昧に微笑まれた。なんだか知らんが玖の国第一継承者が断固反対の姿勢を崩さないんだとか。

「うなー…まあいっか。」

この王女が俺に興味を示さなかったのは幸いだろう。零崎であることを知られたら俺はどうなるか分からないし。

「じゃあいーちゃんは僕様ちゃんといちゃいちゃしてるから汀目くんはぱーてぃー頑張ってねー」

そう言って戯言使いの腕を引っ張って部屋を出ていこうとする王女。
その背中に王様は声をかける。

「このことは秘密裏にお願いしますね」
「了解なんだよ!いーちゃんが僕様ちゃんのものである限り大丈夫なんだね」
「それを聞いて安心しました」
「うにっ♪今日は一日中一緒に居られるんだよ」
「ごゆっくりそうぞ。自分の城だと思って寛いでください」

その言葉を聞くと同時に…と言うかいうその直前に玖の国の部屋を出て行った。

「滅茶苦茶な子だけど、彼女が玖の国第二継承者だよ」
「欠陥製品の奴も大変だな」
「君もこれから大変だよ。さぁ、王家終結パーティーの時間だ」
「う゛、もうそんな時間か?」
「昼から深夜までだからね。さぁ、頑張って」
「え?あぁ……」
「…多分そこまで積極的じゃないと思うから安全だよ、多分ね。多分」
「今何か不吉な事言ったか?」
「いいや?・・・王子や王女が王様、女王様と一緒にいるのは前半までだ。前半はフォローできるけど後半はフォローできないからくれぐれもボロを出さないように気を付けてね」
「…会場が壱の国であることが唯一の救いってわけか」
「まあこの国だから何かあったら君の良く逃げ回っている城の森の中にでも隠れたらいい。君がこの城内の中で一番あの森に詳しいんじゃないのかな」

皮肉交じりの説教とアドバイス。なんだこのコラボは。

「俺がたまにサボってんの知ってたのかよ」
「王様を舐めないで欲しいね。君がいーの代わりに部屋に居なきゃいけない時に窓から森に遊びに行ってることぐらい知ってるよ。王様たるもの城内情報ぐらい把握できなくてどうするのさ。…まあそれでもあの森に私もそこまで詳しいわけじゃないんだけどね」
「何でそこまであの森を問題視するんだよ」
「あの森は争いで死んだ全ての魂が眠るといわれる大墓石があるらしいからね」
「大墓石?」
「罪もなく殺されていった人たちの魂が眠るといわれる墓石だよ。関わらないように、って私の何代も前から語り継がれているんだ。理由は良く知らないけど…って、もうそろそろ会場に行っておいた方が良いかな」
「え?あぁ、じゃあ行くか」
「とりあえず、気を付けて、とだけ言っておくよ」
「何か危ないのか?」

「行けば分かるよ、私もなんだけどね」

気が重くなるよ、と溜息をつきながら言う国王さんと俺は部屋を出た。







***



ところ変わって旧『零の国』王宮跡地にて。

「ただい…ま…はぃ?」

帰ってきた舞織が見たのは、血だらけの双識だった。
腹から血を流して。
腹に大きな穴をあけて。
倒れていた。
針金細工のような体が。

「お兄ちゃん、どうしたっていうんですか!」
「ん?あぁ、舞織ちゃんか。…うっかり死神でもやってきたかと思ったよ」
「そ、んなこと…。誰に、殺られたんですか…」
「んー早r…否、君はこれに関わらない方が良い。零崎の生き残りとして生き延びろ」

普通に話しているが、片腹を薙ぎ払われたような有様なのだ。
こんな風に話しているが、意識を保っているのが奇跡のような傷痕で、もう命が長くないのが分かる。分かってしまう。

「何でですか!私だって零崎です!」
「だからこそ死んで欲しくない。ちなみに多分この有様じゃアスも危ない。トキは…あの人がいるから大丈…夫だろ、う」
「お兄、ちゃ……ん」
「生き延びて、くれよ?」
「え…?…う、そ。…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

数日後から、残り少ない零崎の遺体が次々と発見されるようになりだす。


物語は少しずつ、赤黒く。
誰も気付かないうちに、赤黒く染まっていく。


***

かなり迷いました。展開的に。
もしかしたらある日突然これを編集するかmイテテ石投げないで!
ごめんなさいでも悩みに悩んでこれで、でも優柔不断なので…ちょ、そんな目で私を見ないで!
これも私の性格よドーン(←開き直った)



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