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戯言シリーズ・二次(中・長編)
5




***

5.

いつも通りの、ハズだった。
とあるビルの屋上。呼び出しを喰らって、見事に追い詰められてしまっていた。

「私達は今までのようにはいかない」
「たとえどんな行動を取ろうとも、貴様達一人を必ず殺す」
「どちらも殺しても構わないとは言われたが」
「一人でもいいとも言われた」
「選べ」
「どちらが死ぬ?」

それに対して二人は。

「「どっちも生きる、だ。殺人狂共」」

そして今日も、戦いが始まった。
こんな戦いには慣れているつもりだった。
でも、誰が思うだろうか。
お互いを毛嫌いしている各呪い名が、各殺し名が、いくら異端児達を殺そうと躍起になっていたとしても、共同で、戦線を組むなどとは。



最初は優勢。
けれど。

力、呪い、毒、針、爆破物、槍、幻覚幻聴、思考工作、身体侵害、…数え切れない、力の数々。

ただでさえ最前線から身を引いた自分達には、キツイ戦いである。
キツ過ぎる、戦いだった。


「…なあ、出夢」
「なんだ?…まさか、自分が死ぬからお前は逃げろ、なんてかっくいーこと言うんじゃねぇだろーなぁ?」

軽口を叩いているがその目は『そんなこと思ってたらぶん殴る』である。

「そんなんじゃねーな」
「おう、なんだよ。それ以外なら意見を認めてやる」












             、
「俺が死ぬから、お前達は生き延びろ」



は、という前に、目の前に有り得ない光景が広がる。
足場が崩れた。人識のナイフによって脆くされていた足場を踏み付けてしまったらしい。
といっても、無理矢理その場所を踏み付けさせられたんだけど。

「何、言って…」

目の前に、空が広がる。
信じられないが、足場を崩されて宙に放り出されたらしい。
まあこのくらいの高さならなんとかならないわけではないが。
ただ、僕を圧倒的に、決定的に混乱させているのは、直前の人識の、あの行動。

僕のおなかに、耳と手を当て、微笑んでた…?

有り得ない話ではない。
そうすれば、人識の言動の説明はつく。
確かに、体調の変化は訴えていた。そうか、そのとき複雑な顔をしたのは。
けれど。
落ちていく体に重力の偉大さを身にしみて感じながら僕は考える。
あいつは・・・?

人識のいた場所に、一生懸命目を向ける。
太陽の逆光でよく見えないはずだけど、僕は確かに見た。

一人の影と、それを貫く凶器の数々を。
そして、同時に散った逆光で色がよく見えない黒い飛沫を。

自然と涙が溢れる。
それと同時に決意する。
裏世界ではちょっとした判断の早さが生き残りを決めるから。
人識の遺志は必ず護る。
たとえ、僕自身がどうなろうとも。
そして、地面に着地した。
僕はもう、迷わないし、迷えない。





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あきゅろす。
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