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戯言シリーズ・二次(短編)
こんな最後でも全く構わなかったのに(ひといず)

※「匂宮出夢との人間関係読み返せないよ(切なすぎて)。こうだったら何回でも読み返すのにな」
というような、100%創作者の願望で作られています。
内容とかよく分からないところがあるかもしれません。
委員長の性格などを勝手に捏造しています。
原作がお好きな方・原作以外の道を知りたくないという方は回れ右。




















殺気を感じ。嫌な感じが増すのを感じ。
身に覚えがある殺気を感じ。いや、身に覚えがないのほうが正しいのか。
そんな殺気を感じ。教室にたどり着き扉を開け。
室内が血の海で。肉の海で。
3年間ともに歩んできたクラスメイトが虐殺され。虐殺され。虐殺され。虐殺されていて。
教室の中心の、机の上。一人だけ虐殺されていない誰か。学校指定のセーラー服を着た誰かがいて。
その誰かは血まみれで。肉まみれで。
その誰かの腕は異様なまでに長くて。その異様に長い腕で俺の良く知るクラスの委員長の頭を抱いていて。
その誰かは言うまでもなく匂宮出夢で。出夢は笑って。
狂気の目で笑って。狂乱の表情で笑って。俺を見て、愉快そうに笑って。
俺は状況が理解できなくて。ただ聞くことしかできなくて。
教室の中に入って。後ろ手でドアを閉めて。クラスメイト達の身体を見て。それからまた質問で怒鳴って。
それに対して出夢は笑って。
そして突然怒号をあげて。椎名の頭を叩きつけて。狂ったように叫びだして。俺は応えられなくて。息をのんで。
またあいつは笑って。苛立ちを隠そうともせず机を蹴り飛ばして。
でも、言ってることはやっぱりわからなくて。

でも一つだけ、たった一つ。分かったことがあって。

これまでの付き合いの中で築いてきた絆が。それが断ち切られたことがわかって。
絆が切れて。切られて。一方的に拒否されて。拒絶されて。
新たな関係が結ばれようとしていて。
初めて他人の気持ちが、出夢の気持ちだけは伝わってきて。本気で俺は怒って。
「殺して解して並べて揃えて晒して刻んで炒めて千切って潰して引き伸ばして刺して抉って剥がして断じて刳って貫いて壊して歪めて縊って曲げて転がして沈めて縛って犯して喰らって辱めてやんよ」
「俺にできること全部してやる」

そう言ったら嬉しそうにあいつは笑って。

「全部ってことは愛してもくれんだよな?」
「もちのろんだ」

そう応えたら出夢は俺に飛び掛かってきて。対して俺は叫んで。

「愛してんぜ、アホが!」
「こっちの台詞だ、ボケ!」

今までため込んでいたものを吐き出すかのように。すべてを吐き出すかのように。
それ故に。
だからこそ。
一片の迷いもなく。
悔いもなく。
情熱的に。
どんな言葉で表現してもどんな言葉で修飾しても表すことができないような情熱さで。
とにかく情熱的に。
俺たちは。




殺しあっ―――――――



















ガラガラガラッ!!

































は?





「すげぇ!とにかくすげぇ!」
「愛されてるねぇ!愛してるねぇ!」
「見せつけてくれんじゃん、このバカップルぅ!」
「びっくりしたぁ!本当に二人が殺しあっちゃうかと思った!」
「すげーよな!二人とも天才俳優と天才女優になれるぜ!」
「にしても出夢ちゃん羨ましいな!」
「そうそう!心の底から『愛してる』って言ってもらってた感じだったし!」
「にしてもこの小道具の完成度高いよな」
「私密かに汀目くん狙ってたんだけどな〜」
「止めとけって。あの二人の仲はもう誰にも裂けられないって」
「出夢ちゃんだけの呼び名もあったしね」
「人識、だっけ?そういうのいいよね」
「汀目くんって一人に執着しないタイプだと思ってたんだけどな」
「凄い親しげだし。こうやって見るとお似合いのカップルなんじゃない?」
「この前は学ランだったから不審に見えただけで、出夢ちゃん可愛いもんね」
「全く、こんな彼女もって汀目はいいよな」

「「「「「「「全く、この幸せ者がっ!!」」」」」」」





・・・・・。





「・・・・・・・何が何だか分かんねぇよ!!!」

そんな人識の声は誰にも届かなかった。






***


「おい、どういうことか説明しろ」

あの後クラスメイトにもみくちゃにされるなか、やっとの思いで抜け出して体育倉庫まで逃げてきた俺は、若干睨むようにして出夢に質問した。
この体育倉庫にこいつといる事なんて前の時で最初で最後だと思ってたんだけどな。全く、人生何があるか分からない。この後自分にそっくりな奴にでも会うんだろうか。
・・・ったく、今の俺に出夢に状況を聞くだけの気力が残っていたことに驚きだ。そのくらい凄まじい質問というか、そういった類の嵐だった。女子は恋バナが好きだって聞いたが、男子も大概だ。
明日からの俺には今までと同じような学校生活、否、人間関係はないだろう。

「え〜・・・聞きたい?聞きたい?教えようかな、どうしようかな〜?ぎゃはは!」

ちなみに出夢は超ハイテンション。俺とは真逆にハイテンション。

「じゃ、回想行きますっ!もわもわ〜っ!」
「口で言うのかよ」


〜回想開始〜

「あのぅ・・・」

椎名春香に声をかける僕。ちなみにセーラー服。
何で声をかけたかって?
人識求めて入ってきたら、あいついなくて気まずかったからだよ!

「はい?あ、え〜っと・・・」
「出夢ですっ」
「あ、出夢ちゃんっていうんだ。やっぱり女の子だったんだね〜」
「はい」
「あのさ、聞きたくて聞きたくて、というか皆気になってしょうがないらしいんだけど」
「?」
「単刀直入に聞くよ・・・ぶっちゃけ、汀目くんとはどんな関係で?」

二人で話しているが、ほかの人が密かに聞き耳を立てているのがわかる。
あいつあんまり関わってないとか言ってたけど、少なくとも興味は持たれてんじゃん。

「聞きたい?」
「・・・」

無言でうなずく委員長さん。

「彼女でっす☆」

途端に、僕の周りに人が押し寄せてきた。
口々に質問してきてます、聞き取れません。
と、ここで鶴の一声こと、委員長の一言。

「よっし!じゃあみんなを代表してきくね。汀目くん人を寄せ付けないところあるから私たちどうすればいいのか分からなかったから」

と言って微笑む委員長と僕の周りにはにっこり笑ったクラスメイト。

「汀目くんをよく知ってるみたいだし?最近できない恋愛トークも兼ねて・・・質問に答えてね?」

これで分かった。この僕を取り囲んでる奴ら、万が一にも僕が質問の途中で逃げ出さないように囲いを作って立ってたってわけか。振り払えないわけじゃないけど、迫力がすごい。
一般人も捨てたもんじゃないかも。
・・・ってか人識、どれだけ関わりを避けてたのか避けられてたのか知らないけど、興味津々じゃねぇか、こいつ等。

「じゃあその@!・・・二人の馴れ初めは?」
「えーっと、竹林の中で違う女の子に人識がアタックしてる最中に僕が乱入してー」
「おぉ!・・・泥沼展開?!」
「人識くんに熱くて痛いのを思いっきりぶつけられちゃってさ」
「マジで?!」
「それ以来僕は人識に一目惚れしt「要らん誤解を招くようなこと言うな!」

〜回想強制終了〜


「んだよ人識、まだまだ質問はあったぜ?優しい出夢ちゃんは全部に答えてやったけどなぁ」
「うわあぁぁぁあ!くそっ、なんで俺はそこにいなかったんだ!」

せめて俺が突っ込んで止めさせていれば、と人識は頭を掻き毟る。
ただし
人識が居ようと居まいと彼らが止まるかは定かではないが。

「まだ出来事についてまで辿り着いてないぜ?まっだまだ回想という名の質問タイムが残ってるけど?」
「・・・質問はもう省いてくれ。これ以上頭痛が酷くなったら俺は死ぬ」
「ぎゃはははははっ!じゃあ質問省いて最後の方にいっきまーす☆」
「何か精神的疲労がとてつもないことになってきてるんだが」
「知りまっせんっ!ぎゃははっ」



〜回想開始〜

「ねえねえ出夢ちゃん、汀目くんとの仲を確かめさせてもらっていい?」
「は?」
「一部の女子がねぇ。・・・まあ、汀目君自身は気付いてないけど、モテるから」
「はぁ・・・」
「それに、」
「・・・?」
「みんな暇だから!興味津々な子もいるから!私だけど!」

キラッキラの笑顔で親指を立てていう委員長に何も言えなくなった僕。
いや、僕ら付き合ってないんで。あの、嘘です。人識をいじめるのが趣味のただの殺し屋です。。とか、今更言えるレベルじゃなくなってきてないか?
・・・しまった。やらかした。

「作戦はね・・・

出夢ちゃんが誘拐されたよ!

相手はこのあたりを仕切ってるヤクザだよ!

さあ汀目くんはどう出る!?

・・・なんだけど。どうかな?」


100%信じてもらえないって!と、言いかけた口を無理やり塞ぐ。
この僕がヤクザごときに誘拐されるとか聞いたってあいつは鼻で笑う。見間違いだろうと疑う。これは絶対だ。僕が人識に負けることぐらい有り得ないし。

「う〜ん・・・。僕には勇ましいボディーガードがいるから無理って、あいつは知ってるよ?」

嘘です。ボディーガードなんていません。
だけどどうにか諦めてもらわないと困る。
何よりこんなバカげた案を実行されたら逆に僕自身が恥ずかしい。

「え〜。・・・じゃあどうしよっかなぁ?」

この委員長、状況を完全に楽しんでると見た。
・・・と、ここで天才的な案を思いついた僕。思いついてしまった僕。

「その役柄さぁ・・・僕を被害者じゃなくて加害者にすればいいんじゃね?」
「え?」

・・・そうして話した案に、まさか乗ってくるとは思わなかった。
最後には僕が折れて作戦実行。
あ〜あ、人識怒るだろうな・・・。





***


「うわぁ・・・」

思わず呟くいいんちょさん。
そりゃそうだ。こんだけ大量の血とか肉とかは見たことがないだろうから。
悲鳴も上げず卒倒もしないのがすごい。こいつ本当に一般人?

「そっくり、そのまんまだね。あ、この臭いすごいや。・・・本物じゃないよね?」
「当たり前だろ?」

持ってきたのは大量の死体的な、血的な、肉的なもの。
匂宮で密かに開発されていたものの失敗品だ。
大量の在庫をどうにかさばいてほしかったらしい。これで好感が回復しただろうか。
・・・実は匂宮は案外単純で、好感の浮き沈みが激しいのだ。

「で、これが今回のキーアイテムだ」

そういって取り出したのは、椎名春香の(つまりこいつ自身の)首。の、作り物。

「・・・う。」

限りなく本物に近く製造されてるってのに、こいつの精神大丈夫か?
と思ってたらそれなりにダメージありだった。顔を歪ませるだけってのもまた凄いけどな。

「徹底的にやるねぇ、出夢ちゃん」
「・・・まぁな。でもさ、この教室血だらけにしてもいいのか?」

徹底的にしたいって言ってたのは誰だ、という言葉を飲み込んで聞いてみた。普通なら遠慮なんかしなくてもいいんだが、まあ、あいつの学校だし。

「大丈夫大丈夫。私がお金出してまた今度作り直してもらうから!」
「・・・」

この子、お嬢様か。金銭感覚おかしいんじゃないだろうか。
後で分かったことだが彼女は人望まで厚く、このくらいのことなら校長先生を説得できるとか出来ないとか。そこまで来ると逆にどんなことなら説得できないんだよ。
・・・普通こんな状態だったら僕の方がボケのはずなのに僕を突っ込ませるとか・・・こいついろんな意味ですげぇよな。

「じゃ、それ撒き散らしてくれる?血肉をそこらへんにドバっと。怪しまれないようにね?私たちクラスメイトは教室端のビデオカメラでみてるからっ♪」

断言する。こいつの神経はおかしい。
・・・ま、ここまで来たんだし。折角だからやっちゃおうか。
人識の反応も実際、見てみたいし。

あ、そうそう。何があったのか知らないがこの委員長の突拍子もない行動はみんな慣れているらしく、この状況を楽しんでいるらしかった。僕が言うのもなんだが、慣れって怖い。
ってかそれ以上に、汀目俊希の恋愛事情に興味があるらしかった。
人識も大変なクラスメイトを持ったもんだ。

〜回想終了〜




「今回は途中で首突っ込まなかったじゃん、とっしー・・・って、おいおい」

人識はマットに突っ伏していた。

「生きてるかなぁ?人っ識くん?」
「・・・てめぇ」

地を這うような声が返ってくる。

「いやぁ・・・あそこまで来ると僕にも止められなかったし」
「そういうことじゃねぇ、そういうことじゃねぇんだよ」
「へ?」

きょとん、とした顔に、自分でもなるのが分かった。

「俺はクラスメイトの前で『殺して解して〜』って言っちまった・・・」
「ぎゃはは!ドンマイ、とっしー!」
「・・・どんまい、じゃねーよ!」

がば、っと起き上がる人識。
そのままつかつかと歩いてきて僕の肩に手を乗せた。
・・・何、この状態。

「・・・・・・・・・あ〜もう・・・殺戮好きだし俺より強いし男か女か解らねぇしテンション常時おかしいしシスコンだし変態だし変な依頼持ってくるし弱いのは嫌とか言ってるくせに俺を頼ってきてくれてるし無自覚で恥ずかしいこと言ってるし・・・何で俺こんな奴の事嫌いじゃないんだろうな?」


・・・は?


「え?・・・え?」
「人識お前・・・僕の事嫌いじゃねぇの?」

「あ?・・・俺が心底嫌いなやつからのキスをそう何回も何回も受けると思ってんのか?」
「・・・」

あ〜。
もう、どうしてくれようか、この天然タラシ男。
恥ずかしくて恥ずかしくて。
僕の顔、絶対、真っ赤だ。

「お前の方はどうだか知んねぇけど」
「し、知らねぇよ!きっ・・・嫌いじゃないなら何なんだよ!」
「さぁなァ?」

「・・・それから、」

そう言ってあいつはニヤッと笑って。

「俺の中の最強は出夢だ。俺は別に出夢が俺より弱いから、舐めてるから、お前に付き合ってやってるわけじゃない。それでも俺はお前に負けるとは思ってねぇけど。傑作だよな」
「・・・!聞いてたのかよ、あの仮面の奴の話・・・」

もうこんなことを至近距離から言われてみろ。思考回路がうまく働かない。
耳良いからな、とか呟いた後に、

「シスコンもいいけど自分のことも大切にしろよ」

肩から手を降ろしながら言う人識。
気にしてたことばっかりを言い当ててくるもんだから。
嬉しい事ばっかりを言い当ててくれるもんだから。

「なぁ人識、」
「あ?」
「僕本当に、人識のこと好きなのかもしれな・・・ん?」

言いかけたらこいつもまた、きょとん、とした顔になって。

「おま・・・。目、つぶれ」
「・・・」

言われたとおりに目をつむる僕。
そして。

お互いの唇と唇の距離があと数センチというところになっt・・・














ピピピッ!





「「え?」」

驚いて倉庫の入り口を振り返るとそこには。

「あ〜、いい所だったのに・・・何で時間制限来ちゃうかな〜」

携帯のムービー機能を使っている委員長がいた。
撮影時間短いよ〜、まあ他のいいところも撮れたしいっか、と呟いた委員長は。

「じゃあ、今日はありがとう!いいもの見せてもらった代わりに、校長先生に出夢ちゃんの入校許可でも貰ってこようか?まあ返事は後でいいや。ここから先は二人でごゆっくり〜」

と言って微笑んで、そのまま教室のほうに歩いて行ってしまった。

「「・・・・・・」」
「・・・とんでもない委員長のクラスなんだな、人識」

後に残された僕は。
そんなことを言うことしか思いつかなかった。

「・・・・・なあ出夢?」
「あ?」
「俺もだぜ?」
「へ?」

数秒後に文脈の流れを理解した僕は。

「・・・・・      !」


ここの言葉が明かされることは後にも先にもなかったが、この学校にこの後。
『この学校のとある教室で命を懸けた告白をすれば良い恋が実る』という言い伝えができたらしい。




そして
この二人の小さな運命の歯車が狂わなかったこと。
それが。
のちに大きな歯車が狂うことを阻むという現象に繋がることになる。




***

甘い甘い甘い甘い。
砂糖を吐いちゃいそう。嫌いじゃないんですけどね。
とりあえず一つ謝る。

チキンで申し訳ありませんっ!!




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あきゅろす。
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