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戯言シリーズ・二次(短編)
未練(ひといず)



*決別後。報われてません




「えー?人識は寂しくないの?僕にもうあえないのに?僕の顔がもう見られないのに?僕ともう殺しあえないのに?僕の声さえも、もう聞く事が出来ないのに?」

そんな会話をしたのはいつの事だっただろうか。
随分前のことのような気がする。
だからだろう、こんなにあいつの声や顔が、ぼんやりするのは。
人識はそう思って立ち上がり、ベッドのそばの引出しからカセットテープを取り出した。古い。
角が丸くなっている事から相当使い込まれていることが分かる。
すぐそばにあるデッキにそれをセットする。
再生ボタンを押す。
流れ出した声に頭の中の声がはっきりするかと思ったがそうでもなかった。
だってそれは、人識の記憶の中の声とは随分違っていたから。
否、そう思うのは人識だけなのかもしれない。

だって人識のなかで流れるその声は、ついさっきまで殺しあっていたときに零れた出夢の声を昔のセリフに当てはめただけ。
心なしか流れてくるその声は人識の記憶の中の声よりも子供っぽく聞こえた。
あの日の決別から何度かあって殺しあった。
けれど、その間に流れる会話の冷えたことといったら。冷たさといったら。
完全にあいつの中で吹っ切れてしまったのだと理解するのに時間はかからなかった。

このテープは以前、二人で面白がった出夢と共にいつもの会話を録音した物だ。
カセットテープなんて古いだろ、と人識が笑うと出夢は、携帯とかだと僕たちの場合すぐ壊れそうだろ、保管できたほうが良いだろ、と至ってまともな意見を返された。
全く同じ内容、会話を録音したテープが二つ。
そのうち一つを俺に押し付けて出夢は帰っていった。
ただ単に、本当にそれだけがしたかったらしい。

あいつが持って帰ったテープは今どうなっているんだろうか。
十中八九あの後破壊されたんだろうと思う。
あいつの人喰い(イーテングワン)を受けて壊れないテープなんてあるわけが無い。
あいつが拒絶した‘そういうもの’の象徴であったあのテープをあいつが壊さないわけがないのだから。

そこまで考えて、あいつがテープを壊した事を当たり前に、正当化しようとしている自分に気付く。
それと同時に、自分はテープを壊しておらず、むしろ大切にしている自分に気付いて自分を笑った。

馬鹿らしい。

こんなことをしていても自分が惨めになるだけだ。
・・・していなくても惨めになるが。

瞬間的に自分の考えに突っ込んでしまった自分に悲しくなる。
出夢の所為だ。

自分の中で渦巻く気持ちを全て出夢の所為にして、人識はベッドへ倒れこむ。
途中、彼が自分の口癖をつぶやいた事に気付いた物は誰一人としていなかった。



***

ちょっと暗め。
だーかーらー!自分のいつも書いているひといずが1個もかけてない!
どうする、アイ○ル〜♪
一種のスランプなのか!?どうなんだ!
出夢攻め攻めの私の小説はただ今迷子になっています。
保護するまで少々お待ちください。



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あきゅろす。
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