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小説
ぱずけん 解
「さて、それじゃ解読を始めよっか」

「そうですね。えっと、まず、この暗号はどういうタイプの物だと思いますか?」

「うーん、どうだろね。文章自体に意味が通ってる気もするから、変換タイプではないと思う」

「変換タイプっていうと、キーボードのひらがなで置き換えたりするアレですか?」

「そうだね、その認識でいいと思うよ」

「ふむ。確か、こういう暗号を解く時って、まずは全てひらがなに直してみるんですよね」

「そうだね。取っ掛かりとしてはそれでいいんじゃないかな」

「それでは早速紙に書いてみますね。えーと『あきをしろくしあすをもとめよ』ですか」

「『おめともをすあしくろしをあき』。逆から読んだら意味が分からないね」

「全てローマ字で書くというのはどうでしょうか。

『akiwoshirokushiasuwomotomeyo』」

「あ!」

「どうしました、まいすさん! まさか、これが解けたのですか!」

「ホームズになるの忘れてたっ」

「激しくどうでもいいです!」

「どうでもよくないよ! これを着ることで私の推理力が五十アップするんだから!」

「ちなみに、上限はいくらなのですか?」

「五十三万だね」

「着る意味ないじゃないですかっ」

「あ、でもでも、可愛さも五十アップするよ?」

「何ぐずぐずしてるんですか、まいすさん。早く着替えて下さい。あ、そうだ、もしよろしければ着替えるのをお手伝いしましょうか?」

「しなくていいよ! っていうか、宗くん変わり身早過ぎだよ……。まあ、いいや。それじゃ、着替えるよ」

「え? ここでですか? やったー! まいすさんの生着替えだひゃっほーう!」

「まあ、外套を上から羽織るだけなんだけどね」

「そんなことだろうとは思ってましたよ! でも可愛いから許します」

「ありがとっ。じゃあ、もう一回解読を始めよっか。うーん、『oyemoto......』。違うね」

「逆読みですか。『イカ』『ウザイ』『もっとも』。どうも無理矢理感がありますね」

「やっぱり、何かに置き換えなきゃいけないのかな。でも、置き換えるにはヒントが少ないね」

「ええ、片端から試すのは後にして、今は別の考え方を試してみましょう」

「やっぱり、文章自体に意味があるんじゃないかな」

「『秋を白くし明日を求めよ』ですか。『明日を求めよ』というのは、単純に明日を待て、という意味かもし
れませんね」

「なら、『秋を白くし』っていうのがポイントだよね」

「秋か、今は5月なんですけどね。秋にはほど遠いですよ」

「そもそも、秋って白く出来る物なの?」

「僕の知る限りでは出来ないと思いますが」

「だよねぇ。ううむ、秋かぁ」

「ああ、秋といえば、ウチの学校の名前って『秋雨高
校』ですよね」

「それだああああああぁぁぁぁ!」

「はい?」

「それだよ宗くん! きっとこの暗号の『秋』っていう
のは、この高校のことを指していたんだよ!」

「ええー、まじですか。それは流石にこじつけ過ぎじゃないですか」

「ううん、これにはちゃんと根拠があるんだよ!」

「根拠、ですか?」

「うん! ほら、『秋を白く』しろって書いてあるじゃない? これって、文字通りにペンキで白く塗りなさい、ってことだと思うの」

「白く塗るって、校舎をですか? 流石にそれは違うのでは……」

「違うよっ。白く塗るのは、校門のネームプレート! ほら、文字が掠れてるよね?」

「あ」

「そう、あのネームプレートの『秋』の部分だけを白くしちゃえばいいんだよ! そして一日待てば、我々パズル研究会の勝利だよ! QED!」

「な、なるほど?」

「よーし、そうと解れば行動あるのみ! 宗くん、明日を楽しみにねっ」

「あ、ちょっと、まいすさん! ……行ってしまった。うーん、何か違う気がするけど。まあいいか、明日になれば解るんだし。僕は一足先に帰らせてもらいますね」



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あきゅろす。
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