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小説
星 written by 紺猫
 彼が目を覚ましたとき、その星にはイキモノはいなかった。最後に見たのは、たしか人類がノストラダムスがどうとか騒いでいた光景だった。

「つまらないな。」そう呟き星を破壊した。

 そして、彼は新しく星を創造し、生命を誕生させた。

 大きな力を使った彼は、生命の成長を願い、静かに眠りについた。
 
 
 それからとても長い時が流れた・・・
 
 
 次に彼が目を覚ました時、辺りは一面の麦畑であった。
 
 村人があわただしく集まっていたり、道を馬車が走っていたりするのどかな風景だった。

 麦は刈り入れの時期らしく、村人総出で作業していた。
 
 聞いたところによると、この後収穫祭があるのだという。それは、ここら一帯では有名な祭で、この村の麦酒目当てに辺りの村々から大勢の人々が食材を持ってやってくる。

 君も祭りを楽しんでいってくれ。そう言われた。

 彼は村に残ることにした。

 それから三日三晩飲めや歌えや騒ぎ通しだった。

 そこで彼はとても良くしてもらい、仲良くなった青年がいた。

 この青年は若くしてこの村の村長なのであった。

 素性が知れず、そのうえ無一文だった自分の為に、家に泊めてくれたり、村を案内してくれた。

 彼は青年に何かお礼がしたいと言ったが、青年は別に構わないと断った。しかし、彼には納得がいかなかった。

 彼は、お礼は何がいいかと考えた。そして、その青年にこの時代には釣り合わない量の知恵を与えた。

 青年は戸惑っていた。しかし彼は力を使いまた疲れたので、一言、頑張ってくれ、と言い残し眠りについた。

 彼はとても息苦しくなって目を覚ました。

 見渡すと、周りには口にだすのもはばかられる歪な建物や、空を目狂ましく飛び回るたくさんの名状しがたい車の様な物、そして、多くの底知れぬ暗澹たる恐怖を放つ謎の生命体群があった。

 それらは、生き物としての形状をすら成していない者がほとんどだった。

 その光景はまるで、遠い昔に本で読んだファンタジーの世界であった!
 彼は戸惑いつつその中から、幾分ましな女性に声をかけた。

 その人は、耳のとがっている、所謂エルフ耳をした女性だった。女性は驚き、旧世代の人間なんて始めてみたわ! と言った。

 彼は疑問に思い、詳しくたずねた。

 もう随分前に他の惑星からの生物が来たり、天変地異、そして、一番の原因である人類が戦争で星を汚染し、普通の状態では生きられなくしたのだ。

 今は、旧人類は遺伝子情報の書き換えによってかろうじて生き残った者のみとなり、宇宙から来た生物が大半を占めているのである。

 彼は「しまった……」と自分を責めた。未発達の人類に、人智を越える知恵を与えるべきではなかったのだ。

 しかし彼はまたそれを忘れるために、逃げるように眠りにつくのであった。
 


 彼は再び全てを忘れ、また目を覚ます。
 
 そして、こう言うのであった。

「つまらないな。」、と。



 彼の名前はシュレディンガー

 存在するようでもあり、存在しないようでもあった。
 
 それは、この星と運命を共にするものである。




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