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小説
オフィスらぶ 第三話
「巨乳だヒャッホーぅ!」

 目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。

 驚くほどふかふかのベッドに、全裸で。

 そして隣には、巨乳の美女が、美しき課長が、生まれたままの姿で寝ていた。

「これなんてえろげ」

 あれ、なんだか無性に山登りがしたくなってきた。
 柔らかくて、おっきな、双つの山に!

 というわけで。

「アァ、テガッカッテニー」

「おはよう、マリア。いい朝だね」

「おはようございます!」

 伸ばしかけていた手を、人間の限界を超えた速さで引っ込める。

 気付かれたか? 
 横目で課長の様子を窺うと、むにゃむにゃと目をこすっていた。
 
 ……かわいい。 
 
 というか、思わず返事してしまったけど、マリアって誰だろう。

 なんだか聞き覚えがあるような……。

 しばし頭を働かせようと試みるが、どうも上手くいかない。
 
 解らないことは考えないに限る。

 というわけで、思考を中断し、隣で目を瞬かせている課長を見つめる。

「課長、自分は星野です」

「ああ、星野か。……どうして君が、私のベッドで寝ているんだ?」

「そんな怖い顔をしないでください! むしろ、自分が聞きたいくらいです」

「ふむ、寝起きだと頭が回らんな。とりあえず、コーヒーでも飲もうか」

 課長はそう言ってガウンを羽織ると、キッチンへと歩いていった。

 ああ、お胸様が。

 登頂できなかった無念を噛み締めていると、課長がコーヒーカップと砂糖を持ってきた。

「インスタントだが、我慢してくれ」

 用意をしている背中に、構いません、と返す。 

「砂糖はいくつ?」

「二つでお願いします」

「了解」

 課長がコーヒーを作っている間に、現状を整理してみることにしよう。

 察するに、どうやらここは課長の部屋らしい。
 しかし、どうして課長の家にいるんだろう。

 昨晩は確か、たしか、……あれ、何かあったっけ?  
 何も憶えていない。何も思い出せない。

「できたぞ。さあ、飲みたまえ」

 課長から渡されたカップに口を付ける。
 しばらくお互いに無言でコーヒーを飲む。
 先に沈黙を破ったのは、課長のほうだった。

「マリアは、私の妹だ」
「妹さんがいるんですか」
「ああ。そして弟もな。マリアとはいつも一緒に寝ているのだが、今週は修学旅行に行ってしまってな」

 そう言って課長は寂しそうな顔をした。

 しかし、こちらの表情に気付くと、慌てて言い繕う。

「だが、勘違いするなよ。君を連れ帰ったのは、人肌恋しかったからじゃあ、ないんだぞ?」

 人肌恋しかったかららしい。

 というか、まさかの即席ツンデレだった。
 
 何この人、かわいい。
 

 課長は一呼吸つくと、しかし、と切り出した。

「まさか、君があんな無茶をするとはな。君はもっと分別があると思っていたのだがね」

 その言葉に、しかし思い当たるところの無いこちらは困惑する。

 ムチャとは、いったい何をやらかしたのだろう。全く思い出せない。

「あんなことは、二度としないでほしい」

 やばい、何か怒られているっぽいぞ。心当たりがまったくないのに!

「あのー、自分、何かやらかしたのでしょうか?」

「まさか、憶えていないのか」

「すみません」

 素直に頭を下げると、課長の目が妖しく光った。

「君はまさか、あんなに熱い夜を忘れてしまったのか」

「熱い夜!?」

 まさか、それは、その言葉から当然連想されうるような不健全イベントが、あったというのだろうか。

「ああ。君は、私に全てを預けてきたぞ」

「自分は受けだったんですか!」

「そして、最後には中に入っていたものを、全てぶちまけたんだ。この私に向かってな」

「なんですと!」

 なんてこった。どうしてそんなおいしいイベントを忘れてしまったんだ! 

 こうなったら仕方ない。倍返しだ!

 努めて真剣な顔を作り、課長に向き合う。

「課長、第二ラウンドといきましょう」

「ふふ、そう言うと思ったよ。だが、二ではなく、五だぞ」

「どんだけやってんですか、過去の自分!」


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あきゅろす。
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