D.G
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「………」
リナリーが私を止めてから、気まずい沈黙が続いていた。
「……;;」
さっき警察が来て、今は取り調べが行われてていると聞いた。
「少女達も無事に帰されたみたいだし、私達も………ってマリア!?」
また勝手にどっか行っちゃうんだから!とリナリーが叫んでいる声が後ろの方で聞こえたような気がした。
私はどうしても帰る前に、父親に売られた少女に会いたかった。
名前や容姿は知らなかったけど、教会に入ってすぐにわかった。
他の少女達は皆親が迎えに来た中で、1人残っている子がいた。
クリッとした瞳をしたブルネットの巻き毛。なかなか可愛い顔立ちだ。
「帰らないの?」
「もう帰るところがないもん」
この子は多分、自分が売られたことを知っている。
「あなた、名前は?」
「ケイト」
「ケイトは何才?」
「13才」
私は自分の団服に付いていたボタンと装飾を全て剥ぎ取った。
こんなことならもっとボタンの多いデザインにしておけばよかった。
「全部上等の銀よ。あげるわ。
お金に替えればかなりの額になる。
町に出て新しく暮らす資金にしてもいいし、元の家にもどってお小遣いにしてもいい」
少女は両手に溢れそうな銀を見つめて考えている。
そう、いつだって選ぶ権利は子供にあるべきだ。
それを大人が自分の都合で振り回している。
「お姉さん、町は面白い…?」
「それはあなた次第よ」
顔を上げたケイトは、清々しい表情をしていた。
この子なら大丈夫だろうと思った。
「…どこ行ってたの?」
駅のホームでは待ちぼうけをくらったリナリーがすっかり怒っていた。
「その団服!」
「ポーカーに負けて取られた」
私はずっとホームに置きっぱなしにしていたトランクを持って、さっさと列車に乗り込んだ。
「シャーロック・ホームズもびっくりの名推理だったね」
「観察力と洞察力…よ」
本当は昔の経験がモノをいっただけだけど。
客に聞いてた話とか。
カタン カタン
列車が揺れて、村がどんどん遠ざかっていった。
あの子は…ケイトはこれから上手くやれるだろうか。
でも自分の足で歩むことで彼女の人生が変わることを信じたい。
「それでその団服のボタンを全部あげちゃった子は村を出るの?」
「!?…知ってたの?」
「観察力と洞察力…よ♪」
リナリーは笑いながらウインクした。
「これで本当に、この事件は終わりね…」
「兄さんへの報告と報告書の提出がおわったらね?」
「…チッ」
最後の最後で嫌な仕事を思い出した。
「もうっ!神田みたいなことしないの!」
「カンダ…?」
「あっ!ほら、もうすぐホームよ!」
"あそこはホームじゃない"
今口を開けば出てきそうな言葉は、リナリーの笑顔に免じて飲み込んだ。
to be next night...
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