近接戦闘型魔術師(仮) この世界について 「おはよーございます、おかーさま」 心を殺し、頑張って三歳児の女の子を装って食卓までやってきた 「あら、おはようエリィ」 ……さて、そろそろいろいろと説明したほうがいいだろう まず俺。この世界での名前は、エリィ・ジークフリート ……OK落ち着け。落ち着くんだ ジークフリートというのは前世界の『EDO / エド』で俺が使っていたプレイヤーのハンドルネームだ。なんでかは知らんがそうなんだからしかたない とりあえず鏡で容姿も確認してみたが、瞳も髪も見事に水色一色だった。……まだ子供だからよくわからんけど、たぶん童顔 次に父さん。名前はラスク・ジークフリート。茶髪紫眼のイケメンである 次に母さん。名前はリア・ジークフリート。俺と同じ水色一色の美人だ。俺が自分を童顔だと判断したのはこの人が原因だ。だってこの人童顔 最後に、この家でたった一人の使用人。クロノ・ディスレイである。つまり執事。通称ジイ うん。現在俺が知ってる人はそれだけだ 後は、父さんの書斎で読みあさったこの世界についてだろうか ここはEDOに似た世界であり、本来より300年進んだ世界だ 仕様はEDOとまったく変わらず魔物も出るし魔法もある ……それに、なぜかステータスを引き継ぐことができていた AGIが神がかりと言えるほど圧倒的に高く一部のスキルも全てMAXまで鍛えられている ま、俺はAGIしか鍛えてないからSTRとかは通常の数値だし、Lvもなぜか1になってたけどな それにまだ幼いから、本来の1/10くらいしか力を出せないし あー……あとまだついでに見つかったことを言うと、俺、魔法使える EDOは職業×スキル制だ。前世界で俺は下級職業シーフを極限まで鍛え、一部のスキルもMAXまで上げた だがシーフでは、魔法を覚えることができなかった。それは魔法剣士系を除いた全ての戦士系に共通して言えることだ けれど今の俺は、魔法を扱うことができる つまり、今の俺は ーー世界で唯一の、近接戦闘型魔術師である EDOでは一つの職業にしか就くことができない 俺は前回、シーフを極限まで鍛えることに成功していた。そのお陰か、シーフ専用のシーフスキルもMAXで持っている つまりなにが言いたいのかというと…… 俺は魔術師でありながら、シーフの才能もある とは言ってもSTRなんざまったく上げてなく、超レアな短剣の性能にまかせて、急所をついて一撃必殺をかましてただけだから別にSTRやVITなんかに影響しない。しいて言うならレアドロップ率が上がる+盗賊技能が手に入る程度 あの武器、急所をついた場合のみ100%即死になるからまったく盗賊技能なんて役に立たなかったが 「エリィ?」 まぁシーフ専用のスキルが使えるのは嬉しい。普通は無理だから 「大丈夫? エリィ?」 よし決めた。俺はこの世界初の、近接戦闘型魔術師になる。この才能を生かさない手はない 「どうしたの? 熱でもあるの?」 それに魔術師に興味もあるし。元々EDOは魔術系が充実したVRMMOだったし 「エリィ!?」 あ 「あ、はい、な、なんですかおかーさま」 「さっきからぼぅっとしてるけど、大丈夫なの? 熱でもあるの?」 「ちがいます。ちょっとまだねむくて……」 「そうなの? もう少し寝ててもいいのよ? しっかり寝ないと大きくなれないんだから」 うん。前世界で徹夜ばっかりしてた俺には無理な話だ 「ありがとーございます、おかーさま。でももうだいじょぶです。め、さめましたから」 「そう? ならいいけど……無理しないでね」 「はい」 [*前へ][次へ#] [戻る] |