怖い話(ちょいなが) 危険な好奇心 2話 興奮の為、明け方まで眠れず、朝から昼前まで仮眠を取り、俺達は山に向かった。 皆、あの『中年女』に備え、バット・エアーガンを持参した。 山の入口に着いたが、慎が『まだアイツがいるかも知れん』と言うので、いつもとは違うルートで山に入った。 昼間は山の中も明るく、蝉の泣き声が響き渡り、昨夜の出来事など嘘のような雰囲気だ。 が、『中年女』に出くわした地点に近づくに連れ緊張が走り、俺達は無言になり、又、足取りも重くなった。 少しずつ昨日の出来事が鮮明に思い出す地点に差し掛かった。 バットを握る手は緊張で汗まみれだ。 例の木が見えた。女が何かを打ち付けていた木。 少し近づいて俺達は言葉を失った。 木には小さな子供(四・五歳ぐらいの女のコ?)の写真に無数の釘が打ち付けられていた。 いや、驚いたのはそれでは無い。その木の根元にハッピーの変わり果てた姿が。 舌を垂らし、体中血まみれで、眉間に一本、釘が刺されていた。 俺達は絶句し、近づいて凝視することが出来なかった。 蝿や見たことの無い虫がたかっており、生物の『死』の意味を俺達は始めて知った。 俺はハッピーの変わり果てた姿を見て、今度中年女に会えば、次は俺がハッピーのように・・・と思い、すぐにでも家に帰りたくなった。 その時、淳が『タッチ・・、タッチの死体が無い!タッチは生きてるかも!』と言い出した。 すると慎も 『きっとタッチは逃げのびたんだ!きっと基地にいるはず!』と言い出した。俺もタッチだけは生きていて欲しい。と思い、三人で秘密基地へと走り出した。 秘密基地が見える場所まで走ってきたが、慎が急に立ち止まった。 俺と淳は『!中年女?!』と思い、慌てて身を伏せた。黙って慎の顔を見上げると、慎は 『・・なんだあれ・?』 と基地を指差した。 俺と淳はゆっくり立ち上がり、基地を眺めた。 何か基地に違和感があった。何か・・・ 基地の屋根に何か付いている・・。 少しずつ近づいていくと、基地の中に昨夜忘れていた淳の巾着袋 (淳は菓子をいつもこれに入れて持ち歩いている) が基地の屋根に無数の釘で打ち付けてあるではないか! 俺達は驚愕した。 【この秘密基地、あの中年女にバレたんだ!】 慎が恐る恐る、バットを握り締めながら基地に近づいた 。 俺と淳は少し後方でエアーガンを構えた。基地の中に中年女がいるかもしれない。 慎はゆっくりとドアに手を掛けると同時に、すばやく扉を引き開けた。 『うわっ!』 慎は何かに驚き、その場に尻餅を付きながら、ズルズルと俺達の元に後ずさりをしてきた。 俺と淳は何に慎が怯えているのか解らず、とりあえず銃を構えながら基地の中をゆっくりと覗いた。 そこには変わり果てたタッチの死体があった。 『うわっ!』 俺と淳も慎と同じような反応をとった。 やはりタッチも眉間に五寸釘が打ち込まれていた。 俺はその時、思った。あの中年女は変態だ!いや、キチ●イだ!普通、こんなことしないだろう。 とてつもない人間に関わってしまったと、昨夜、この山に来た事を心から後悔した。 しばらく三人ともタッチの死体を見て呆然としていたが、慎が小屋の中を指差し、『おい!!あれ・・・』 俺と淳は黙りながら静かに慎が指差す方向を覗き込んだ。 基地の中・・・ 壁や床板に何か違和感が・・・何か文字が彫ってある・・ 近づいてよーく見てみた。 『淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺淳呪殺・・・』 無数に釘で淳・呪・殺と壁や床に彫ってあった。 淳は『え??・・』 と目が点、というか、固まっていた。いや、俺達も驚いた。なぜ名前がバレているのか! その時、慎が『淳の巾着や、巾着に名前書いてあるやん!』 『?!』 俺は目線を屋根に打ち付けられた巾着に持って行った。 無数に釘で打ち付けられた巾着には確かに 【五年三組○○淳】 と書かれてある。 淳は泣き出した。 俺も慎も泣きそうだった。学年と組、名前が中年女にバレてしまったのだ。もう逃げられない。俺や慎の事もすぐにバレてしまう。 頭が真っ白になった。 俺達はみんなハッピーやタッチのように眉間に釘を打ち込まれ、殺される。。。 慎が言った 『警察に言おう!もうダメだよ、逃げられないよ!』 俺はパニックになり 『警察なんかに言ったら、秘密基地の事とか昨日の夜、嘘付いてここに来た事バレて親に怒られるやろ!』 と冷静さを欠いた事を言った。いや、当時は何よりも親に怒られるのが一番恐いと思っていたのもあるが。。。 ただ、淳はずっと泣いたまま、 『ッヒック、ヒック・・』 何も掛ける言葉が見つからなかった。 淳は無言で打ち付けられた巾着を引きちぎり、ポケットにねじ込んだ。 俺達は会話が無くなり、とりあえず山を降りた。淳は泣いたままだった。 俺は今もどこからか中年女に見られている気がしてビクビクしていた。 山を降りると慎が 『もう、この山に来るのは辞めよ。しばらく近づかんといたら、あの中年女も俺らの事を忘れよるやろ。』と言った。 俺は『そやな、んで、この事は俺らだけの秘密にしよ!誰かに言ってるのがアイツにバレたら、俺ら殺されるかもしれん。』 慎は頷いたが淳は相変わらず腕で涙を拭いながら泣いていた。 その日、各自家に帰り、その後、その夏休みは三人で会うことは無かった。 その二週間後の新学期、登校すると、淳の姿は無かった。慎は来ていたので、慎と二人で『もしかして淳、あの女に・・・』 と思いながら、学校帰りに二人で淳の家を訪ねた。 家の呼び鈴を押すと、明るい声で『はぁーい!』と淳の母親が出て来た。 俺が『淳は?』と聞くと、おばさんは『わざわざお見舞いありがとねー。あの子、部屋にいるから上がって。』 と言われ、俺と慎は淳の部屋に向かった。 『淳!入るぞ!』と淳の部屋に入ると、淳はベットで横になりながら漫画を読んでいた。 以外と平気そうな淳を見て俺と慎は少し安心した。 [*前へ][次へ#] |