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幼馴染み -Izayoi-
さぁさ、二人で作戦会議。

でもね、残念。女の子はちょっと理解出来てない。

そうだ、もう一度復習しようじゃないか。

この世界には神様がいるんだよ。











幼馴染み -Izayoi-










 空はすっかり夕焼けに彩られ、街から少し外れた所にある閑静な住宅街を鮮やかに照らしていた。古そうな家を守るようにあちこちに緑が覆っているここは、赤みが加わると、まるで別世界のような雰囲気を醸し出す。

 そんな古い家並みの中でも、特に立派なのは神社の敷地内にある日本家屋。それに見向きもせず、麗夜はその隣に位置する多少見劣りはするものの十分大きいと言えるであろう屋敷に、躊躇う事もノックする事もなく扉を開けた。


「ただいまー。ね〜、あたし明日学校休む! 『第百二十一回無言挨拶大会in東京』なんて、もう耐えらんないわよ! いくら皆勤賞狙ってるからって、こんな非常事態に暢気に学校に行ってるのってあたし馬鹿みたいだし!!」

「ようやく非常事態だと理解出来たのか、馬鹿が。それに大体、『ただいま』じゃなくて『お邪魔します』だろ。お前の家は隣だろうが。日本語さえも分からなくなったのか?」


 来るなり玄関で叫んだ麗夜を、戸口で待ち構えていた少年が冷たい目で睨んだ。そして冷徹な口調で、研ぎ澄まされた言葉の矢を次々に放つ。

 彼の名前は、皐月十六夜(さつき いざよい)。

 年齢は麗夜と同じ十六歳だが、イギリスに留学してきた時にスキップしたらしく、学生生活はとうに終えている。そんな優秀さと日本人離れした美麗な顔は、麗夜と彼の姉を抜かした女性からは絶大な人気を誇っていた。

 しかし麗夜とは、血液型も好みも性格も何もかもが正反対。性格の一部、負けず嫌いという所はかろうじて似ている。

 家がお隣で幼なじみというと、友達以上恋人未満の甘い関係を思わせるが――――実際に家に連れてきた友人の一握りはそう思っているらしいが、お互い犬猿の仲と言っても良い間柄だ。

 その仲の悪さは、二人の家族公認。何だかんだで一緒にいる事が多いが、口を開けば言葉の暴力と嫌味が飛び交うような中の二人である。今日もまた、然り。


「いいじゃん、幼馴染みの家なんだし。大体、あたしはあんたじゃなくて、緒里(いおり)さんに用が有んの」


 麗夜はそう言うと、十六夜の咎めるような視線を無視して、勝手に上がった。もちろん靴はきちんと並べてある。

 大変行儀のいい事だと誉めるべきか、勝手に了承なく我が物顔で上がるなというべきか、十六夜はしばし悩み、


「色々ツッコミたい所はあるんだが…………」


 とりあえずツッコむ事に決めたらしい。

 だが、そこで言葉を切ると、また考えこんでしまった。そしてしばらく後、麗夜の顔を見ながら、ため息をつく。


「まぁ、それも抜きにしておくか。言ったところで聞くような奴じゃないしな。それにしても…………無駄足ご苦労。姉貴なら、いないぞ」

「えぇ?! 何で? 来た意味ないじゃん!」

「……お前、本当に姉貴の事好きだな」


 意味がないと言われた十六夜の呆れかえったような言葉に、麗夜は素直に頷いた。

 十六夜の姉――皐月緒里は、とにかく優しい。ひねくれ者の弟とは雲泥の差だ。

 むしろ二人が似ている所は、頭の良さと見た目の綺麗さしかないと思っている。ついでに言うなら、十六夜の無駄に頭が良い所も顔の良い所も、麗夜にとっては余計苛立たせる原因でしかなかった。

 なので麗夜は、十六夜とは昔から仲が悪かったが、緒里は小さい頃から姉の様に慕っている。今回皐月の家に来たのも、緒里に会うためだったのに。


「叔父様か伯母様は?」

「二人共、お前の家。今回は二人とも何か特別なアクションはしないらしい」

「でも爺様は皐月の家に行けって…………何であんた一人なわけ?!」

「まだ分からないのか?」


 訳が分からず取り乱す麗夜に、十六夜は心底呆れていると如実に分かる溜息を吐いた。

 明らかに馬鹿にしてますというその態度に、麗夜の額に青筋がたつ。だがここでへそを曲げて貰っては困るので、黙って先を促した。


「先日の羽事件は知ってるな?」

「知ってるわよ。むしろ、それで直接被害を被ってるわよ。あんたみたいなヒッキーには分からないでしょうけどね、こっちが喋ってるのに無言で返されるのって結構大ダメージなんだから!」

「その原因は、神だ」

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あきゅろす。
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