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「ねぇ、十六夜。女の子に荷物持ちさせて悠々としてられるわけ? お前は荷物持ち以外利用価値がない、と言わんばかりの扱いじゃない?」


 そう、か弱い女の子(自分)に荷物持ちをさしている事だった。

 だが十六夜は笑みを消し、つまらなそうな一瞥で返す。これが一番麗夜を怒らすと知っている、確信犯的行為だった。


「まぁな。実際、戦闘時以外は、そのくらいしか役に立たないだろ?」


 麗夜の奥底で、何かがブチ切れた音がした。


(やばい。なんだかとてつもなく殺したくなってきた……)


 麗夜がそう思った瞬間だった。

 地の割れるような音が響き、辺りの景色の輪郭が二重にぶれる。

 右に左に揺れ動く大地は、暴れ馬のように不安定で激しい。

 だがこれは地震でも、天変地異でも――強いて言うなら、自然現象でもなかった。

 原因は、この一人の女の子。

 麗夜が思わず舌打ちした瞬間、十六夜の罵声が飛ぶ。


「また制御しなかったな!」


 そう、この揺れの原因は麗夜にあった。麗夜の持つ余りある程の力――俗に霊力とか言われてる物が、感情のまま暴走したのだ。

 強すぎる力は、コントロールする事が困難となる。

 一般の術者では比べる事さえ間違っている程、麗夜の力は強い。そして、上記の例にもれず、麗夜はコントロールが大変不得手だった。

 最強とは、より強い力をコントロール出来る者の事。強い力を持っててもコントロールしようと努力しない者は、所詮弱い者と変わりない。

 その事を一番恐れた両親は、神である緒里に麗夜の世話を押し付けた。なにしろ、神でしか麗夜の暴走は止める事が出来なかったのだ。

 麗夜の霊力面に関する世話は、十七年経った今でも未だに続いている。緒里は大変頑張っているが、完璧とは口が裂けても言えない状態だった。

 そんな――――大変強い力を有しているのに、コントロールが全く出来ない麗夜は、正直天災以外の何者でもない。それでも彼女が『弱い』に分類されないのは、彼女の力が神に限りなく近い事と、一応コントロールしようと努力している点を加味したからだろう。もしこれでコントロールの努力を怠っていたら、大事に至らない前に抹殺されても文句は言えない。


「……ご、ごめんなさい。つい、かっとなって…………そう、は思うんだけど――――『あぁ』じゃないでしょ!」


 最初はもの凄くしおらしく、後半部分は怒鳴っていると表現してもおかしくないくらい調子で麗夜は捲し立てた。

 だが十六夜は、麗夜の抗議の半分も耳に入っていない様子で、


「あ、そうだ。おい、麗夜」


 と切り出した。思わず麗夜は遠くを見てしまう。


(今度は無視ですか…………)

[* bACk][NexT #]
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あきゅろす。
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