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▽
「それで……関与出来ないのは分かったけど、何でいないの? 別に手を下すのが出来なくても、一緒にいるくらい良いじゃない?」
その後、負けず嫌い二人組による壮絶な嫌味の応酬が続いた。それに終止符を打ったのは、麗夜だった。
さすがに口論に飽きてきたのか、愛想120%の余所向きの笑みを浮かべると、可愛らしい調子で尋ねる。美少女を自称しているだけあって、大変可愛らしい。
だが、その可愛らしい笑みに冷たく一瞥すると、十六夜は気のない様子で淡々と告げた。
曰く、
「大学の遠足」
…………人間に馴染みすぎだ。
ぼそっとそう呟いて、麗夜は肩を降ろした。
普段なら何の問題もない。結局人間も神も、力の有無こそあれ、生活スタイルにあまり変わりはないのだから。むしろ人間を見下すわけでもなく、拝むわけでもなく、自然と一緒にいれる緒里を好ましく思っている。
だが今は緊急事態。そう、緊急事態である……はず?
「…………! こんな風にナゴナゴしてる場合じゃないし!」
「騒がしい奴だな」
急に叫んだ麗夜に、十六夜は睨んだ。麗夜も負けじと睨み付ける。再び、双方一方も譲らない睨み合いが続いた。
「十六夜、早く緒里さんと連絡つけてよ!」
「俺の話聞いていたか? 最強の神である姉さんが、神が起こしたトラブルに関与する事は出来ない。何で神が神の敵になるのかと問題になるし、それでなくとも姉さんの存在はイレギュラーだからな。神全てが姉さんと敵対するかもしれない。それに姉さんに名を与えた冥王も、責任を問われるだろう。そんな事になったら、冥王まで敵に回す事になる」
「アドバイスくらいならオッケーでしょ?!」
「本当に煩い奴だな…………だ、か、ら、俺とお前に全ての処理を任して行ったんだ」
ペンペン草も駆け出して逃げそうな絶対零度の睨み合いは、その一言で終幕した。
カチンと音をたてて、麗夜は固まる。指先で釘が打てるかもしれないほど、見事に。
頭の中では、先程十六夜に言われた言葉が虚しく繰り返されていた。
俺とお前に任せていった…………俺と……お前に?
…………俺とお前に??
「なっ、なっ、なんでよ! 皐月十六夜の馬鹿!」
「フルネームで呼ぶな! それより、もう遅いし煩いから寝てろ!」
何でよ……と呟きながら麗夜は頭を抱える。
その隙に十六夜は、麗夜を小脇に抱えると、近くの空いている部屋に放り投げた。その慣れた手つきは、百点をあげられる。
「最悪……よりによってあいつとなんて…………」
影は歌っていた。
いつの歌だか分からない、
どこの歌だか分からない、
歌かどうかも疑わしい歌。
それでも影は歌っていた。
愛おしい様に、狂おしい様に。
誰も知らない物語の歌…………
All is in the lap of the gods.
全テハ神ノ命ズルママ
[* bACk]
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