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「それで……関与出来ないのは分かったけど、何でいないの? 別に手を下すのが出来なくても、一緒にいるくらい良いじゃない?」


 その後、負けず嫌い二人組による壮絶な嫌味の応酬が続いた。それに終止符を打ったのは、麗夜だった。

 さすがに口論に飽きてきたのか、愛想120%の余所向きの笑みを浮かべると、可愛らしい調子で尋ねる。美少女を自称しているだけあって、大変可愛らしい。

 だが、その可愛らしい笑みに冷たく一瞥すると、十六夜は気のない様子で淡々と告げた。

 曰く、


「大学の遠足」


 …………人間に馴染みすぎだ。

 ぼそっとそう呟いて、麗夜は肩を降ろした。

 普段なら何の問題もない。結局人間も神も、力の有無こそあれ、生活スタイルにあまり変わりはないのだから。むしろ人間を見下すわけでもなく、拝むわけでもなく、自然と一緒にいれる緒里を好ましく思っている。

 だが今は緊急事態。そう、緊急事態である……はず?


「…………! こんな風にナゴナゴしてる場合じゃないし!」

「騒がしい奴だな」


 急に叫んだ麗夜に、十六夜は睨んだ。麗夜も負けじと睨み付ける。再び、双方一方も譲らない睨み合いが続いた。


「十六夜、早く緒里さんと連絡つけてよ!」

「俺の話聞いていたか? 最強の神である姉さんが、神が起こしたトラブルに関与する事は出来ない。何で神が神の敵になるのかと問題になるし、それでなくとも姉さんの存在はイレギュラーだからな。神全てが姉さんと敵対するかもしれない。それに姉さんに名を与えた冥王も、責任を問われるだろう。そんな事になったら、冥王まで敵に回す事になる」

「アドバイスくらいならオッケーでしょ?!」

「本当に煩い奴だな…………だ、か、ら、俺とお前に全ての処理を任して行ったんだ」


 ペンペン草も駆け出して逃げそうな絶対零度の睨み合いは、その一言で終幕した。

 カチンと音をたてて、麗夜は固まる。指先で釘が打てるかもしれないほど、見事に。

 頭の中では、先程十六夜に言われた言葉が虚しく繰り返されていた。

 俺とお前に任せていった…………俺と……お前に?

 …………俺とお前に??


「なっ、なっ、なんでよ! 皐月十六夜の馬鹿!」

「フルネームで呼ぶな! それより、もう遅いし煩いから寝てろ!」


 何でよ……と呟きながら麗夜は頭を抱える。

 その隙に十六夜は、麗夜を小脇に抱えると、近くの空いている部屋に放り投げた。その慣れた手つきは、百点をあげられる。


「最悪……よりによってあいつとなんて…………」










影は歌っていた。

いつの歌だか分からない、

どこの歌だか分からない、

歌かどうかも疑わしい歌。

それでも影は歌っていた。

愛おしい様に、狂おしい様に。

誰も知らない物語の歌…………





All is in the lap of the gods.
全テハ神ノ命ズルママ


[* bACk][NexT #]
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