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短冊六枚目
 おそるおそる覗いたそこには、短く達筆な字で一言。


「世界は俺のモノ」


 と、書かれてあった。ひっくり返しても、目を凝らしても、ボスの大きな掌サイズの紙にはそれだけしか書いてない。

 じっくり紙を見つめた私は、ゆっくりリキと目を合わせる。見れば、彼も似たような顔をしていた。双子は本当によく似ている。


「「…………」」


 どうしてだろう、空いた口が塞がらない。


「すっごくアレなんだけどさー」

「ボスなら叶いそうな気がするのは何でなんだろうね」


 いや、ボスの願いを叶えるために私達がいるんだけどね? そのための部下なんだけどね?

 何って言うか…………ボスのあの顔で、こんな子供が書くような事を短冊に書いているから。あんな凶悪な顔でこんな行事を率先して行って、しかもそんな事を結構真面目に書くから。

 本当、何って言えばいいのかなぁ。何と言ったら、このもやもや感が伝わるのだろう。

 逆にどんな願いだったらボスらしいと言えるのかも分からないし、むしろこの願いこそボスらしいとも言えなくもないんだけれど。

 でも一つだけ確実に言える事は、この願いはきっと叶うんだろうなという事。

 なんともすっきりしないもやもや感を抱いて首を傾げる私とは違い、リキはもう興味を失ったのか、上手く紙を笹のてっぺんに括りつけ直して笑った。

 もう彼の興味は別のモノ――――私に向けられている。


「キサは決まった?」

「…………うーん、あ!」


 そうだ。

 今日は年に一度の、織姫と彦星が会える日。

 じゃあ、もし私だったら?

 私は、一年に一回しか大切な人に会えなんて耐えきれる?

 ――――答えはNO。

 出来れば、ずっと…………皆と一緒にいたいんだ。

 同僚であり、仲間であり、家族である。

 皆とそんな関係で、ずっと生きていきたいの。


「ずっと皆と一緒にいたい」


 ねぇ、そう書いたら何故か叶いそうな気がしたよ。

 これからもずっと一緒にいてね。

 一年間に一度じゃなくて、一年間に三百六十五回会いたいの!!










短冊に願いをかけたら全て叶う気がした










「ねぇ、キサとリキも一緒に笹餅食べない? 美味しいって有名な和菓子屋さんで買ってきたんだけど」

「食べるー。気がきくね、優男の兄さん!」

「ところで、キチガイ娘は何って書いたのよ?」

「そりゃあ、『何故か自室を陣取ってる笹を誰かさっさと片付けやがれ』ってね」

「おい、ローディオ。いくら自分の願い事を見られるのが恥ずかしかったからって、やっぱりキサの自室に置くのはヤバかったんじゃないか?」

「うるせぇ…………」

[* bACk][NexT #]

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