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短冊五枚目
 同じように仕事帰りに適当に食べたリキと共に溜息をつき、二人の短冊を手に取った。

 兄と妹って本当に似てるよね、行動パターンが。夕飯を適当に済ませてしまった事も、溜息のタイミングも短冊を手に撮るタイミングも一緒だった。

 そんな事を考えながら短冊をくるりと表向きにすれば、綺麗な字でそれぞれ――――


「穏やかに暮らせますように」

「長生きできますように」


 と書かれている。

 実に二人らしい願い事だ。

 実に二人らしいんだけど――――


「…………ってかさ、コレって、七夕って言うよりも正月の抱負みたいじゃない?」

「…………キサもそう思った? やっぱり兄妹って、同じ事考えるんだな」


 そのちょっと七夕らしくない願いに、私もリキも声を上げないようにくすくすと笑う。

 七夕らしくないというよりは、お爺ちゃん臭い。少なくともまだ未来ある若者が、穏やかだとか長生きだとかを短冊に書くのは少し変わっていると思う。

 だがそれが、言いようがないくらいとても二人らしかった。


「なーんか、皆個性出てるよね!」

「本当本当。うざってーくらい」

「あはははは、リキのもリキだって!」

「そっかぁ? ってか、キサは何って書くつもり――――」

「てめぇ、まだ書いてねぇのか?」

「「ボス!」」


 あの二人の願い事にちょっぴり何だかなぁな気持ちを抱いていて笑い合っていると、急に背後から声がした。

 慌ててリキと二人で体ごと振り返れば、そこには嘲笑を浮かべている我らがボスが立っている。今日も黒いスーツがよく似合っていた。


(ってか、ボス…………今更ってか、皆に言いたかったのですが)


 ノックくらいして下さい。

 此処は私の部屋です。

 ガールズルームです。

 まぁそれを言った所で何にもならないだろうから、ただ私は黙ってまだ書いてないと頷く。そして視線をボスの手元にやった。

 彼の手には、真っ黒な紙が握られている。向かい合っているせいか、ここからではよく読めない。


「……ボスは何って書いたんです?」

「さぁな」


 ボスはさっさと私達では手の届かない所に括りつけ、「はっ!」と嘲るような声だけ残すと、さっさと部屋を出て行ってしまった。

 残された私達は、無言で見つめ合う。


「…………リキ」

「オッケ」


 甘いよ、ボス。

 巨大な笹の天辺に括りつけられた紙は、確かに手を伸ばしても届かないけれども、私達はナンバーズ。リキの鎖を使って上手く笹を引き付けると、さっさと取ってしまった。

 しかし、それからが問題だ。

 手にしているのは、あのボスの願い事。

 傲岸不遜で、全てに敬愛されても何とも思わないような、あのボス。願い事なんてその高い実力で無理矢理奪い取れるような彼が、笹にくくりつけられた紙切れに託した願い事。

 見たいような、見たくないような。

 何故か緊張に胸が押しつぶされる。

 正直、呼吸が上手くできない。

 しかし恐れと不安で震える手を叱咤し、いっせーのーでで紙を表返した。

[* bACk][NexT #]

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あきゅろす。
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