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短冊四枚目
 そこには――――


「恋が実りますように」


「「乙女だ…………」」


 意外にも可愛らしい、女らしい望みが書かれていた。

 さすが、組織の中で一番常識に近い感性を持つ女性。相手は誰だか知らないが、叶うと良いなぁと思う。

 恋人の一人や二人が出来れば、少し態度が柔和になるかもしれないし。そうすれば今より、リキとシェルロが対立する回数も減るに違いない。

 私がそう云々と一人頷いていると、


「やぁ、キサ。リキ」

「相変わらず仲が良いな」


 そう、後ろから声をかけられた。

 ぱっと振り向けば、よくよく見知った顔が二つ、にこやかな笑みを浮かべて立っている。


「リィヤ、ヴァル!」

「やっほ〜」


 普段は愛想の悪いリキも、ヴァルの『相変わらず仲が良い』という言葉に機嫌を良くしたらしい。

 にこやかに私とボス以外に挨拶をするリキなんて、結構貴重だ。何がそんなに嬉しかったのか知らないが、リキは昔からよく分からないところがあるので、もう皆気にしない。


「これから一緒に蕎麦屋に行くんだ」

「上手い所を発見したからな。隣の和菓子屋も美味しくって、結構人気があるみたいだぞ」

「お蕎麦屋さん……?」


 そう言ってヴァルが手渡してきたのは、どうやらそのお店の住所が書いてあるメモ用紙。相変わらず、小さな字で事細かに書かれていた。

 その店を取り上げていたらしい雑誌の名前まで書いてあるのが、実にヴァルらしいと思う。というか、そこに書いてあるのは巷で人気の女性誌なのだが、ヴァルはそんな趣味があったのだろうか?

 確かに悪い性格ではないのだがどうもよく分からないヴァルと、手にしているメモ用紙を交互に見て、私は無言でそれを彼に返す。

 どうやら、深く考えないでおいた方が良さそうだ。


「ローディオも誘ったんだが、断られてな。二人は来るか?」

「んー、美味しいお蕎麦かぁ〜」


 結構グルメな私にとって、それはとっても心躍るような提案ではあるのだけれど。


「せっかくだけど、さっきお夕飯食べちゃったから良いや」

「オレも。任務の後で、腹減ってたからさぁ」


 そう。実はさっき、私は一人で仕事帰りに適当に食べてしまっていた。

 事前に聞いてれば、食べなかったんだけどなー。ヴァルがお勧めする所は大抵美味しいし。

 そう残念がると同時に、ふと名案を思いついた。


「あ、じゃあシェルロ誘ってあげて。たぶん彼女も食べてないから」


 仕事があった私やリキとは違い、彼女は確か今日は非番だった筈。ならば食べてないだろうと思い、二人にお願いした。

 ぶっちゃけ、ナンバーズ同士はもっと仲良くなるべきだと思う。

 どうでも良い雑魚ならともかく、私達は同僚であり仲間であり――――家族だ。

 もっと仲良くなりたい。

 もっと仲良くして欲しい。

 私のそんな願いが通じたのか、二人はにこりと微笑んで、頷く。さすが組織の中でも一、二を争う温厚二人組。


「そうか、じゃあこれからシェルロに声をかけに行くか」

「そうだね。じゃあ、二人共。お土産買ってくるから」


 余程そのお蕎麦が楽しみなのだろう。二人は早々に紙を括りつけていくと、足早に出て行った。

 これ程ウキウキしている二人も、珍しい。普段はどちらかというと穏やかで大人っぽい雰囲気を出している事もあってか、何だかもの凄く損をした気分になってくる。


「…………さっきのメモ貰って、今度二人で行ってみよっか?」

「そうだね…………あ、あの二人は何って書いたのかな?」

[* bACk][NexT #]

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あきゅろす。
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