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皇女は国に帰らない(紅い月・改)
U−3

「チャリィ!」
 《妖》が姿を見せた途端、ジルの鋭い指示がとんだ。
「うん!……ってチョット大きすぎ……!」
 チャリィは両手を真上に掲げ、《妖》を空中に縫い付けた。
 しかし重量オーバーらしく、完全に動きを封じることが出来ておらず、《妖》は毒液を吐きながら抵抗している。
「うわっ!……ジル、これは俺達の専門外だ!!対処はジルとチャリイに任すぞ!」
 毒液の一部がルイの近くに落下した。そこにあった不幸な樹木が溶けた。
 ルイ達武器(アルは拳法専門だが)を扱うものは、《妖》の毒液から逃げるだけでそれを防ぐことは出来ない。
 彰は、討伐隊の人々を結界で護るので精一杯らしい。
「彰くん!《妖》の弱点は!?」
「知らない!でも焼死、溺死、失血死はするみたいだよ!」
 ……沼に落ちて死んだアホな《妖》が存在するのだろうか?と、黒龍の面々はどうでもいい疑問を抱いた。
「……?まぁいいか。じゃあ取りあえず……。」
 ジルは黒い杖の先端に左手を添え、《妖》に向かって掲げた。そして、呪文の詠唱を始めた。彰が興味深そうに見ている。
「ジル、詠唱が必要な魔術を使うのか……。」
 ルイは呟いた。彼の呟きに気付き、他の“二十歳越え”二人は、“未成年”の二人を庇う体制になった。
 いきなりアンに抱きしめられたケイトは多少混乱しているようだが、哀しいことに、チャリィは慣れてしまっていたようだ。
 ジルは詠唱を完成させ、右手の杖で“妖”を示した。
「《闇明爆裂(ダークライト・バーニング)》……!!」
 刹那。妖は苦しげに叫びながら、爆発に巻き込まれた。
 倒れてピクリとも動かない《妖》を見て、人々はそれぞれ異なった感想(?)を述べた。
「決まった……!」
 アンが拳を握り締める。
「す、凄い!どんな術だろう……。」
 彰は頬を上気させた。
「……ノアは、頭から血が流れていただけだったのに……?」
 ケイトは疑問を口にした。
「普通はこうなる。――“アレ”は、非常識だ。」
 アルが、疑問に答えた。
「――最近、あれ好きだな、ジル……。ストレスでも溜まってるのか?」
 ルイは一人、場違いなことを呟いた。


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