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『糸の切れたマリオネット』









――ふと、意識が浮上した。


隣に誰か潜り込む気配。

(…イオ)

シャワーを終えたらしいイオが俺の隣に潜り込み、いつものように俺を胸に抱き込んだ。俺を起こさないようにと、それはもう慎重に。まるで壊れ物を扱うようで、少しくすぐったい気持ちになる。
はじめこそ抵抗感はあったが、今ではこれが二人で寝る時のお決まりとなった。やっぱりちょっと恥ずかしいし、はたから見てもこの体勢はどうなのかと思うけど、でも…ひどく落ち着く。

安堵のため息がこぼれ、無意識に、イオにすり寄る。
お返しに抱き締める腕に力が込められた。程よい束縛感が心地よい。

(俺…こんなに甘えるキャラだったかな…)

ちょっと考えたが、今は眠気の方が勝っていて、多少のことは気にならなかった。
心地よいこと優先。
再び襲ってきた眠気に、今度こそ意識を手放そうとする。






(…?)

イオが身じろぐ気配。
何だろう、と思った矢先に、―――首筋に柔らかい感触。

「…っ、」

「………」

突然のことにびっくりする。それでも瞼は閉じたまま。
多少強張った俺の体に気付いたはずなのに、イオはその行動をやめようとはしなかった。

触れられる箇所が、熱い。

首筋に落とされた唇や、肌に触れる指先、背中に感じるイオの体。
全てが熱くて、混乱しつつも頭はポーっとしてて、抵抗するっていう選択肢は思い付きもしなかった。
何より、イオが優しかったから。
触れ方が優しくて、変な雰囲気では決してなくて、どちらかというと、とても…温かい気持ちになったから。それが心地よくて、つい身を任せてしまった。

自然と互いの指が絡まる。
今度は首筋ではなくて、頭に口付けられる気配がした。

「…おやすみ、真紀」

イオのおやすみにちゃんと返せたかどうかはわからない。
意味深な行動の理由を尋ねることもないまま、俺は完全に意識を手放した。









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あきゅろす。
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