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『糸の切れたマリオネット』
繋がれた絆と二人のかたち。

月光に照らされているイオは相変わらず綺麗だったけど、何か思い詰めているようなその表情はなんだか苦しそうでいたたまれなかった。

「イオ…、何考えてるの?」

傍に寄り、無意識にイオの着ている服の袖を掴んだ。
乞うようにその手を引くが、イオは表情を悟らせまいと瞳を閉ざしてしまった。
それがまるで拒絶されたようで悲しかった。





………そして俺は逆ギレした。

「…ズルイのはイオの方じゃん」

「………、」

イオが驚いたようにこちらを見たが、口走った言葉をいまさら取り繕うつもりはない。

俺は決して頭のいい方じゃないから、難しいことはよくわからない。でも、絶対にこのままではいたくないと思った。
だから思ったままを口にした。

「俺はそんなに頼りないかな?」

ここに来てからというもの、イオは自分の意見を言ったことがほとんどない。何が欲しいとか何処に行きたいとか、そういうことだけじゃなくて……本心を何も言わないようなんだ。
たまに、イオは何か思い詰めているような表情をすることがある。といってもごく僅かな変化なんだけれど、一緒に暮らす内に少しずつわかるようになってきていた。そんな姿が辛そうで見ていられなくて、たまにそれとなく聞き出そうとしてみるのだが…いつも必ずごまかされてしまう。そのことに触れようとすると、必ず。

「真紀……?」

質問の意図が読み取れないのか、イオはとても動揺しているようだった。
そんなイオに俺は言葉を探しながら続ける。

「最近、悩んでるようだから…」

その言葉にはイオも少し驚いたようだった。

「気づいてたの…」

「うん…なんとなく、そうかなって」

そう言うと、イオは困ったように微笑んだ。俺に…知られたくなかったということだろうか。
確かに俺は頼りないかもしれない。……いや、確実に頼りない。情けないけど紛れも無い事実だ。俺にできることなんてたかが知れているのだから。
それでも…………

「言いたくないことは無理に言わなくていいんだ。…けど、それでもやっぱり、イオが辛そうなのは嫌なんだよ。だから、もし俺にできることがあるのなら…頼ってほしい…。俺に話してどうにかなるもんでもないかもしれないけどさ。もしイオが俺に気兼ねしているのだとしたら、それはやめてほしいんだ。だって俺達、仲間…でしょ?」

イオがゆっくりと目を見開いた。

俺たちがどういう関係なのか、複雑すぎて既存の言葉では表せない。けどこれが一番違いような気がする。
イオが大切なんだ。






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