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『糸の切れたマリオネット』
夏の夜空とプラネタリウム。



ふ、と意識が浮上した。
気がつくとひどく汗をかいていて、しかし体はとても冷えていた。

内容は覚えていないが、あまりよくない夢をみた気がする。



部屋の中は真っ暗で、どうやらまだ朝が近くはないらしい。何度か瞬きをして、暗闇に目が慣れるのを待つ。暫くすると、ぼんやりではあるが室内を認識できるほどになった。
ベッドから降り、冷蔵庫へ向かう。中からミネラルウォーターを取り出し、渇いた喉を潤した。半分ほど飲んだところで、ふう、と一息つく。

「…あれ?」

そういえばイオの姿が見えない。
いつもなら俺が眠るベッドの隣にいるはずなのに、そういえば先程は見当たらなかった。
一瞬で背筋が冷える。

急いで暗い室内を見回す。すると、イオはテレビの横で壁にもたれ掛かるようにして座っていた。
ホッと息を吐き、物音を立てないようにそっと近づく。

「……イオ?」

控えめに呼び掛けたが反応はない。
よく目を凝らすと、イオの体から伸びた細長い紐のような物がコンセントがある位置に刺さっていた。

「……充電中、か」

話には聞いていたが、実際には初めて見た。本当に家庭用のコンセントで充電ができるとは便利なものだなと、ざわつく心とは対照的に冷静にそう思った。


本当にアンドロイドなんだ。
普段のイオは自分と全然変わらないから、こんなふうな姿を見ると少し複雑な気持ちになる。

自分とは同じじゃない。

その事実が無性に俺を不安にさせた。


傍らまで近づくと、その場で膝をつき、そっとイオに手を伸ばした。
夜中だというのに空が幾分明るいようで、室内にいるイオの顔もなんとか認識できた。まるで精密な彫刻のような滑らかな肌。あまりの完成された美しさに、まるで人間らしさが欠落していた。固く閉ざされた瞼はもう開かないのではないのかと、更に不安を煽る。

「イオ…っ、」

もう少しで指先が頬に触れる、その瞬間……――――









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