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『糸の切れたマリオネット』


風呂場のシャワー音が止んだ。
イオが脱衣所へと移動するのを壁越しに聴覚で捉える。
男も気付いたようで、部屋の奥へと視線を投じた。

「…時間切れだな。せいぜい今言ったことをその小さそうな脳みそでよく考えておけ。…正答にはたどり着かないだろうがな」

「し、失礼な奴だな!小さかねぇよ!」

「……まぁ俺達よりは高性能だろ」

なんだか会話が食い違う。
聞き取りこそすれ、さっぱり意味が理解できない。

「は?アンドロイドってすげぇ高性能じゃん。何…」

「…………………」

馬鹿にした…、というか、かなり呆れたような顔をされて、よくわからないが頭悪いことを口にしてしまったことはわかった。
……にしてもこいつの態度はいちいちムカつく。身長差もあるが常に上から目線で尊大な態度。言っていることも抽象的で回りくどくて、わざと相手を試すような言葉運び。…そうだ。試されている。そんな気がする……。

男はそのまま俺に背を向けベランダの柵に脚をかける。

「いいか、様子見だからな。今日のところは身を引くが、あくまでも見逃されているだけだってこと、忘れるなよ」

敵に場所はバレた。
相手とは並たいていのことじゃ敵わない程の勢力差。こうなったら俺なんかが足掻いたところで、悔しいがどうすることもできないだろう。あっという間に捕まって、イオを連れて行かれるのが関の山だ。
こいつがどういうつもりで今日は引き下がるのかはわからないが、ここは大人しく相手の動きを待った方が良さそうだった。





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あきゅろす。
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