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『糸の切れたマリオネット』



「アンドロイドってのは万能じゃない。“限界”があるんだよ」

「………」

初夏の温度を含んだ微風が思い出したように頬をなぜ、細い髪の毛をふわりと後方に掬った。
先程までは心地よかったはずなのに、首筋や手の平に嫌な汗がにじんでそちらの不快感の方が勝った。

「所詮は人間が作り出した人工物。お前達のように永遠じゃない。許容範囲があるんだよ。言ってる意味わかるか」

明らかに馬鹿にした口調がカンに障ったが、本当によく意味がわからない。
アンドロイドは自分たち人間なんかより遥かに永遠に思える。しかし男は否と言う。そういう意味ではないのか…?

「感情に関するデータは膨大だ。それは正よりも、負の感情の方が些か大きい。…欲求への葛藤も。募ればそれは可能容量を超えて、多大な負荷がかかるんだ。人間だって悩めば頭痛がしたりするだろう。アンドロイドの場合それが深刻で、停止するか壊れるか、だ」

男は単語で区切るようにゆっくりと言葉を紡いでいく。その視線は真っ直ぐに俺に向けられて、まるで何か分析か査定かをされているようで落ち着かない気持ちになった。
言っていることはなんとなくだが理解はできた。そして、とても重要なことだということも。






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