『糸の切れたマリオネット』
5
0017。イオが言っていたコードにそうあった気がする。
こいつは研究所の人間か―――
「なんのことか、さっぱり…」
「昼間連れ添う姿を確認している。しらばっくれても無駄と思え。第一、言葉だって交わしたんだ。身に覚えがあるだろう」
こいつと、話した…?
苦し紛れに告げる言葉ひとつひとつに冷たく返されてしまい、フリーズしそうになるのを堪え上手く動かない頭を必死にまわす。
いつの話だろうか。水族館ではとりわけ誰かと会話など………
「……ぶつかった…時?」
俺の言葉に、男は正解したことを褒めるかのように微笑する。
先程から微かに感じていた不可思議な既視感。男は初対面にも関わらず何かが解せなかった。昼間に見かけていたのなら、そのせいなのかもしれない。
でも、本当にそれだけ…?
「…ばれてるなら仕方ない。けど、イオをそう簡単に連れて行かせる訳にはいかない。…何があったかは知らないけどさ、それ相応の理由があって逃げてきたんだろ。あんた達は…信用ならない」
本当は足がすくみそうなくらい男の放つ空気が冷たくて痛かったけれど、負けじと睨めつける。
先程より強い威圧感に冷や汗が出た。
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