『糸の切れたマリオネット』
3
イオが俺の家に来てから数日経ったころに、イオがある本を熱心に見ていることに気づいた。それは暇潰しにでもと渡した写真集で、国内外の風景をおさめたものだ。空や海がメインな写真ばかりで、どこか心が和むような魅力がある、俺が好きな写真家の本。
写真を示しながら興味深げに尋ねてくるイオを見ていて、いつか本物の海に連れてきてやりたいと思っていたのだ。嬉しそうに水槽を眺めるイオを見ると、ちょっと無茶をしたけどよかったと思う。
無言のまま二人で眺めていたが、突然「あ」と言う声が聞こえて傍らを見る…と同時に強い力で引っ張られた。
「ぅえ!?ちょ…っと!」
「真紀、あっち!」
行くよ、行く…けどっ!
手、繋いでるんですが…っ!!
更に大きな水槽を見つけたイオは嬉々として歩き出す。対して俺はかなり焦った。いくら薄暗いとはいえ、休日の家族連れやカップルで賑わう場所でこれはマズイ。
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