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『糸の切れたマリオネット』


潮の香りがする。海が近いのだろう。
俺達はチケットを買って館内へと足を踏み入れた。薄暗い館内に、キラキラとした光が揺らめく幻想的な碧。まるで海底から切り取ってきたかのようなそこには一つの世界が築かれている。

水族館なんて久しぶりだ。小さい頃に何度か家族で来た記憶はあるけれど、もう何年も前なのでひどく新鮮な気持ちで水槽を眺めた。
色とりどりの魚達や岩に生える植物達が織り成す光景は、老若男女を問わず魅了するものがあった。

つい一人で夢中になっていると、そういえばイオはと傍らを見遣る。イオも俺と同様、目の前の光景に目を奪われているようだった。
俺の視線に気づいたイオが、キラキラとした目を細めて笑んだ。そして再び水槽へと視線を縫いとめる。





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あきゅろす。
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