『糸の切れたマリオネット』
6
二口目も差し出されそうだったので、慌てて取り返して自分で口に運ぶ。ちょっと残念そうな表情をしているイオは見なかったことにした。
「そういえば、イオは何か欲しいものとかってある?」
「欲しいもの?」
「うん」
イオがここに住むことはいいとして、まずやることがない。
俺は平日の日中はほとんど大学でいないし、バイトが入る日もあるから帰りが夜なんてことも少なくはない。その間、イオは一人でこの家にいることになる。
有り難いことに家事はやってくれているけど、ただそれだけをして毎日過ごすのもどうかと思う。
「ずっと家にいてばかりで暇だろ?娯楽なんてテレビしかないし。何かあるならと思ってさ」
いろいろとしてくれるイオに、何か返してやりたい。
しかし、イオは首を横に振る。
「ありがとう真紀。でも俺は大丈夫だよ。今のままで十分。それに、俺達は主人の役に立てることが何よりの幸せだから。そんなに気をつかってくれる必要もないんだよ?」
そう言って、イオは儚げに微笑んだ。
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