[携帯モード] [URL送信]

『糸の切れたマリオネット』


二口目も差し出されそうだったので、慌てて取り返して自分で口に運ぶ。ちょっと残念そうな表情をしているイオは見なかったことにした。


「そういえば、イオは何か欲しいものとかってある?」

「欲しいもの?」

「うん」

イオがここに住むことはいいとして、まずやることがない。
俺は平日の日中はほとんど大学でいないし、バイトが入る日もあるから帰りが夜なんてことも少なくはない。その間、イオは一人でこの家にいることになる。
有り難いことに家事はやってくれているけど、ただそれだけをして毎日過ごすのもどうかと思う。

「ずっと家にいてばかりで暇だろ?娯楽なんてテレビしかないし。何かあるならと思ってさ」

いろいろとしてくれるイオに、何か返してやりたい。
しかし、イオは首を横に振る。

「ありがとう真紀。でも俺は大丈夫だよ。今のままで十分。それに、俺達は主人の役に立てることが何よりの幸せだから。そんなに気をつかってくれる必要もないんだよ?」

そう言って、イオは儚げに微笑んだ。






[*前へ][次へ#]

19/30ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!