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『糸の切れたマリオネット』



研究所から逃げてきたと言ったイオ。
相手も探し回っている可能性があるのだから、イオに外を歩かせて危険な目に合わせるわけにはいかない。

「デザインとか…あんまり好きじゃないかもしれないけど、そこは勘弁ね」

出会ってまだ数日のイオの好みなどわかるはずもなく、ましてやアンドロイドに好みという概念があるかどうかも知る由もなく。いろいろと思案を重ねたすえ、俺がイオに着て欲しい服となった。

服を手にして凝視したまま、イオは何も言わない。もしかしたら余計なことをしたのかもしれないと不安になったが、次の瞬間、顔を上げたイオに俺はほっと息をついた。

「真紀、ありがとう」

イオはとても嬉しそうに俺に微笑みかけた。喜んでくれたことに、俺も嬉しくなる。

「こんなにたくさん…。俺、人に物をもらうの初めてだ」

「え?」

意外な言葉に、俺は目を丸くする。

「…俺達は主人に尽くす道具だから。個人の所有物なんて認められない。それが普通なんだ。…だから、真紀みたいに、アンドロイドに物を買う行為はとても異例で……驚いた。でも、すごく嬉しい」

「イオ…」

服をぎゅっと抱きしめたまま、イオは更に笑みを濃くする。
そんなイオを見ていると、もっと、喜ばせてあげたいと思う。

「俺からイオへのプレゼント、だね」

服の他にも思い付く限りのものを買ってきた。
自分のせいで俺に負担をかけたとイオは申し訳なさそうにしていたが、でも……

「これから一緒に暮らすんだから、必要でしょ?」

俺がそう言うと、イオは柔らかく微笑んで、ありがとうと呟いた。





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