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『糸の切れたマリオネット』


イオからシャツを受け取った俺は、洗濯を再開した。
袖口の染み抜きをしてから、自分のものと一緒に洗濯機へ放る。だいぶ時間が経ってしまったから落ちるか心配だったが、それは存外スムーズに落ちた。

「服もなんとかしなくちゃなぁー…」

シャツを脱いだイオは、今俺の服を着ている。渡した服は支障なかったが、やはりイオの方が背がある分、俺の持っているものではこの先を凌げそうにない。くそう。あの長身が羨ましい。





ぐるぐると規則的に回転する洗濯物を意味もなく見つめながら、俺は先程の感触を思い出していた。
(スタートしたばかりではあるが、)イオとの生活は穏やかで、彼がアンドロイドであることをつい忘れてしまう。しかし事あるごとに、ああやって人間との違いを身をもって実感させられる。
正直複雑だった。その度にどう接したらいいのか、わからなくなる。

人工知能を持ったアンドロイド。その全ての行動は、予めインプットされている情報から起こるもの。学習能力はあるものの、やはりその根底にあるものは人工物の心なのだから、イオの感情は純粋な衝動ではなく、既存するデータから導き出される一つの可能性にすぎない。

でもそうしたら、たまに見せるあの表情は…?あれも作りものだというのか?

「あー!もうっ!やめやめ!」

ずるずると深みに嵌まってしまいそうな思考を、頭を左右に振ることで払拭する。
そんなことを考えていても、今の状況がどうこうなるわけじゃない。変な憶測は余計な混乱を産むだけだ。


俺は、胸に燻る疑問を奥深くへとしまい込んだ。





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