『糸の切れたマリオネット』
8
洗い物をしながらちらりと窺うと、イオは俺の方をじっと見ていた。まさか見られているとは思わなかったから一瞬どきりとする。
「な…なに?大丈夫だよ皿割るようなヘマはしないからっ」
俺が抗議の視線を送ると、イオはくすりと笑った。
「真紀のエプロン姿、可愛いなあと思って」
「は?」
相当マヌケな声が出た。
か…可愛い?誰が?…俺が?
…いったいどこにそんな要素があるのだろうか。
(……からかわれてる?)
エプロンは俺のものだけど、確実にイオの方が似合っていた。それどころか、できる男って感じでかっこよかった。
何を思ってそんなことを言うのかはわからないが、それ以前にエプロン姿が可愛い男って薄ら寒くないか?
イオが変なことを言うもんだから固まっていると、奴はこちらへ近づいてくる。
「そんなことしてると俺がやっちゃうよ」
スポンジを取られそうになって、慌ててそれを阻止した。
いざ一緒に過ごしてみてわかったが、イオは意外と意地悪だ。本当にアンドロイドかよっ!って、なんだか疑問に思ってきた。
昨夜はどことなく近寄りがたい雰囲気があったのだが、今のイオは敢えて人間味がありすぎるくらいだ。
まあ、そのほうがいいけど。
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