『糸の切れたマリオネット』
7
俺はどちらかというと甘い卵焼き派だ。ほんのり甘い中に少々の塩分が絶妙。
子供の頃から、母さんの作る卵焼きが格別に好きだった。…若干料理音痴な母が唯一成功する料理だったからかもしれないが。
「ごちそうさま」
ご飯粒も一粒残らず平らげた俺は、食後にイオが煎れてくれた緑茶をすする。お茶の煎れ方もこれまた最高だ。今日は朝から感動してばかりな気がする。
「イオはなんでもできるのな」
「…そうインプットされているだけだよ」
「?」
そう言って微笑むと、イオは立ち上がりキッチンへと向かう。気のせいか?若干陰りが………
「え!待って、洗い物は俺がやるよ!やってもらってばかりじゃ悪いし」
今日は朝から何もしていない。朝ご飯は作られていたし、ゴミ出しも済ませてあった。洗面所に行った時に気づいたが、そこは綺麗に掃除されていて、念のためバスルームも覗いたが床も壁もピカピカだった。キッチンもあんなに雑然としていたのに今はきちんと整理整頓されている。いったいいつ起きてやったのだろう。全く気がつかなかった…。
慌てて礼を言ったが、気のせいだとはぐらかされてしまった。そんなはずはない。
「いや、でも…」
「いいからっ、イオは休んでて!」
物言いたげなイオが渋々座るのを確認してから、俺は食器洗いを始めた。鍋などは食事前にイオが片付けてしまったから、数枚の皿しかないのだが。
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