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『糸の切れたマリオネット』


「…ふう」

冷たさのおかげで、幾分頭もすっきりした。
豪快に水を被ったので、髪は雫が垂れるくらいに濡れてしまった。適当に頭にタオルをかけ、洗面所を後にする。

部屋に戻ると、料理もあらかた完成しているようだった。
朝ご飯のいい匂いが鼻孔をつき、いろいろあって晩飯を食い損ねた俺の胃を刺激する。

イオはどこから見付けたのか、俺のエプロンを身につけていた。
俺は基本的に自炊をする。上手いとは言えないが、自分の胃を満足させるくらいの料理は作れる。
はじめのころは形からしっかりとやっていたが、最近では面倒臭くてエプロンなんてしていない。どこにしまったかすら忘れていた。

エプロン姿は妙にイオに似合っていた。均整のとれた綺麗なラインがどんな服装でも着こなしてしまうのだと思う。

相手が後ろを向いているのをいいことに、俺は無遠慮にイオを見る。
相変わらずの美しいスタイルに、柔らかく繊細そうな金色の髪。人形のようだとも思うけど、それは彼の絶世なる美しさからくるものであって、その一つ一つの身のこなしは人間そのものだ。アンドロイドなどとは到底思えない。…あの傷口を見なかったら、絶対に否定していた。





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あきゅろす。
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