『糸の切れたマリオネット』
2
イオがいるキッチンを抜け、玄関へ続く短い廊下にある二つのドアの内、手前のドアを開ける。そこには脱衣所を兼ねた洗面所があり、扉を隔ててユニットバスがある。
蛇口を捻り、冷水で顔を洗った。少し冷たいくらいが頭が冴えて調度いい。
「……夢じゃなかったんだ」
鏡を見ると、我ながらかなり情けない顔が写っている。
昨夜は突然突き付けられた現実に混乱していて、まともに頭が働いていなかった。しかし一晩経ち、冷静に考えてみると、自分はとんでもない選択をしたと後悔が押し寄せる。
「はぁ………」
幸福が逃げるんじゃないかってくらい盛大なため息が出た。
しかし、もう後には引けない。
今度はそんな雑念を消し去るように、頭から水を被った。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!