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『糸の切れたマリオネット』


この歳で家出とか…あるのか?本当に何処かの国の王子様だったりして…。
男の話に、再び王子様説が浮上する。もしかしたら、ものすごく厄介な人と関わったのかもしれない。

「なんか…あんたもいろいろたいへんなんだな…」

王位継承の争いとか、婚約者とのドロドロとか、世継ぎの問題とか。そんなメルヘンなことを思い勝手に憐れんでいる俺に、男は「?」をたくさん浮かべていた。


「…でも、手当てくらいはしないと…やっぱり駄目かな?」

いろいろ壮絶な人生を歩んでいることはわかったけれど(?)、でもそれとこれとは別の話で。

男は暫く躊躇していたが、俺の熱意に負けたのかゆっくりとこちらに手を差し出した。

「……後悔すると思うよ」

「? 少しくらいグロテスクでも、俺は平気だから…」

ゆっくりとこちらに差し出された手。少しずつ明らかになる傷口は思った以上に酷い有様で、血液は赤黒く凝固し、裂かれた皮膚から覗くシルバーの金属と、カラフルなコードのようなものが千切れた肉片と絡み合い、所々破損していて……―――?




「…え?」








これは……………“何”?








「………、そうじゃない。…俺と関わったことに、後悔すると言ったんだ」





男の声が、遠くで聞こえた。










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