『糸の切れたマリオネット』
3
けっこうすごい流血だったから、相手のことも考えず強引に連れてきてしまった。そりゃあ、誰だって初対面の奴にそんなことされたら不審がるし警戒もする。
自分の軽率さに気づきばつが悪くなる。俺は無遠慮に伸ばしていた手を引っ込め、男から身を引いて距離をとった。
「ごめん…迷惑だったな」
「…そんなことはない」
男の気遣いにちょっとだけ安堵する。
しかしその微妙な空気は流れたままだ。
「あ。そういえば、」
はたと、まだ自己紹介もしていないことに気づく。
「えっと…、なんか今更なかんじだけど…あんた名前は?俺は杉本真紀。T大の2年」
「………、」
俺の質問に、男は困ったような顔をした。なんか俺、困らせてばかりだな…。さらに申し訳ない気分になる。
「あ、言いたくなければ言わなくていいよ。んと…、家、この辺なの?夜間対応の病院は近くにないし、早く手当てした方がいいと思うんだ。なんなら送っていくけど」
「…この辺ではない」
「そっか…」
「逃げてきた」
「……え?」
なんか……今ものすごいこと言った気がする。
逃げてきたって…………?
「え…なに、人に追われてるの?それとも家出とか?」
「そんなところだ」
まじかよー。
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