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『糸の切れたマリオネット』


けっこうすごい流血だったから、相手のことも考えず強引に連れてきてしまった。そりゃあ、誰だって初対面の奴にそんなことされたら不審がるし警戒もする。

自分の軽率さに気づきばつが悪くなる。俺は無遠慮に伸ばしていた手を引っ込め、男から身を引いて距離をとった。

「ごめん…迷惑だったな」

「…そんなことはない」

男の気遣いにちょっとだけ安堵する。
しかしその微妙な空気は流れたままだ。

「あ。そういえば、」

はたと、まだ自己紹介もしていないことに気づく。

「えっと…、なんか今更なかんじだけど…あんた名前は?俺は杉本真紀。T大の2年」

「………、」

俺の質問に、男は困ったような顔をした。なんか俺、困らせてばかりだな…。さらに申し訳ない気分になる。

「あ、言いたくなければ言わなくていいよ。んと…、家、この辺なの?夜間対応の病院は近くにないし、早く手当てした方がいいと思うんだ。なんなら送っていくけど」

「…この辺ではない」

「そっか…」

「逃げてきた」

「……え?」

なんか……今ものすごいこと言った気がする。
逃げてきたって…………?

「え…なに、人に追われてるの?それとも家出とか?」

「そんなところだ」


まじかよー。




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あきゅろす。
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