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小説
I'm always be with you
北の国で、小さな少女が戦っているという。
少女は天から大きな武器を授かり一揆集を率いて圧制に立ち向かっているのだと。

「おさむらいなんて大嫌いだっ!少しでも田畑を荒らしてみろ!絶対に許さねえからな!」
大きな少女の目には、終わることの戦いからか、疲労の色が漂っていた。
「やめろ、一揆を起こして何になる!」
小十郎の声に少女は声を荒げる。
「おらたちだってこんなことはしたくねえだ!でも!おさむらいはおらたち農民のことなんかちっとも考えてくれねえだ!米という字を知ってるか?八十八の苦労があって初めて米ができるだよ!それを…それをおさむらいはなんにも考えず全部持って行く!おさむらいもおらたちも同じ人間じゃねえのか?おさむらいなら何しても許されるがか!?」
少女の言葉に小十郎は胸が痛んだ。
北の農民はここまで苦しんでいることを初めて理解する。

「小十郎!」
政宗の声に少女は大きすぎる武器を構える。
「おさむらいがまた来ただか!?…おらはちっとも怖くねえだ!おらには田の神様がついてるだ!農民たちはおらが守る!おらは本気だ!おさむらいは何かを失ったことなんてないべ!?おらたちは得るものの何倍も失っていく!みんなおさむらいが根こそぎもっていく!おらたちの苦労も知らねえで!」
政宗は少女に近寄るとしゃがんで目線を合わせる。
「…オレは大事なものを失ったばかりだ。お前と同じ、農民の娘だった」
「…おさむらいに斬られただか?」
少女は武器をおろす。
「…斬られたわけじゃねえ。お前みたいに戦うことはできなかったけどよ…。そいつは自分の命と引きかえに農民を守った。オレにとってそいつは大事な大事な娘だった。そいつは今…オレの刀になって一緒に戦ってくれている」
「その刀で…おらを斬るがか?」
「そんなことはしねぇよ。…そいつもお前と同じ夢を見ていたし、同じ未来を描いてた。みんなが笑って過ごせる平和な世の中を切に願っていた。…オレはもう農民たちに切ねえ思いはさせねえって決めたんだ。…お前、名前は何て言うんだ?」
「…別の知らないおさむらいはおらたち農民の名前なんて聞かなかった…。なして名前を聞くがか?」
少女の声はだんだん落ち着きを取り戻していく。
「…辛かったろ。もうお前一人で背負いこむ必要はねえんだ。オレが必ず…みんなが笑って暮らせる日ノ本を作る。約束する。だから…名前を教えてくれよ、な」

「おら、おめえさんのこと信じてもええがか?みんなと一緒に秋には金の稲穂を収穫できる未来を信じてもええがか?」
少女の姿に、政宗と小十郎は力強く頷く。
「おらの…おらの名前は…」



「あの娘…ちょっとだけお前に似てるよな。そう思うだろ美涼…」
刀に触れると、返事をするように稲妻が政宗の手に弱く絡みつく。
美涼の魂が宿った六本の刀は、必ず政宗に勝利をもたらした。
また、美涼は小十郎も守り、常に二人に寄り添ってくれていた。





ある夜、政宗は夢を見た。
一面の花畑。
政宗の隣には…他の誰でもない、美涼がいた。
小さな体を抱きしめて唇を重ねると、あたたかな風が吹いて花を、二人の髪を揺らす。
甘くて優しい夢。
政宗が目を覚ますと、一筋の涙がこぼれ落ちた。
そばに置いてある刀を見ると、淡い光を放っている。
『政宗様…。あなたのそばに私はおりますから…。どうか政宗様はあなたの信じた道を…』
どこからか、優しい美涼の声が聞こえた。

「美涼…。I'm always be with you…」





あなたのそばに(政宗)  終

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