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小説
憎しみをこめて
ゆらりと苦無を構えた吹雪は分身の術を使おうとくるりと回ったが、突如肩を押さえて膝をついた。
「…く…」
ぽた、ぽたと地面に血が落ちる。
あやめが闇雲に撃って急所は外れたものの、銃弾は確実に吹雪を捉えていた。
「猿飛様を…守らなきゃ…」
立ち上がろうとした吹雪に、あやめはためらいなく銃口を突きつけた。

「お前さえいなければ…!お前のせいであやめの人生めちゃくちゃですわ…!なるべく苦しんで死ぬといいですわ。あやめを苦しめた罰ですの。地獄で苦しむがいいですわ」
一発撃つと今度は吹雪の太ももに当たる。
「やっぱり吹雪は仲間を放っておけないという半兵衛様の読みは当たっていたのですわぁ。さすがあやめの半兵衛様…。ほらほら、吹雪得意の分身の技はどうしましたの?」
「あ…やめ…」
力を振り絞って苦無を一本投げるも、あやめは楽しそうに撃ち落とした。
硝子の苦無は粉々に割れ、月明かりを浴びてきらきらと光った。
「さっきまでの威勢はどこへ行きましたの?…吹雪、アナタは自害に見せかけてあやめが殺しますの。自害なら仕方ないって半兵衛様は思ってくれますわ。任務遂行の暁には半兵衛様がご褒美を下さるのですわ」
うっとりと夢を見るような瞳であやめは話を続ける。
「あやめが喜ぶものをくださるのですわ。あやめが喜ぶものと言ったら…半兵衛様はあやめと祝言をあげることに違いないのですわ」
「竹中がそんな褒美を与えるわけないだろう…!」
吹雪は膝立ちになると紐をつけた苦無を投げ、あやめの脚に絡みつかせるとそのまま引きずり倒し、じりじりと手繰り寄せる。
「きゃあっ!」
地面に叩きつけられたあやめは感情に任せて引き金を引き続けた。
「う…ああ…っ」
苦痛に顔を歪めながら、吹雪はなすがままあやめの銃弾を体中に浴びる。
こふっ、と吹雪の口から鮮血がこぼれた。
体中がひどく熱いのに、なぜか背中がぞくぞくするほど寒い。

「楽しい…楽しい…!吹雪があやめの目の前で死ぬところが見れるなんて…!これで…これで半兵衛様はあやめのもの…!ああ、半兵衛様…あやめはやりましたわ…。銃の前では所詮風魔一族の忍びもこの通りですわ…。キャハハハハハハハ、アハハハハハハハッ!なんて愉快ですの!?確かにあやめは分身の術や体術なんて使えませんけど、それを補うものを持てばいいだけの話!」
「最低だ…あやめ…」
起きあがろうとする吹雪に無言で引き金を引く。
「まだ死なないんですの?しぶといですわね」
「下手なんだよ、撃ち方が」
うつ伏せに倒れたまま吹雪が顔だけあやめに向けてゆっくりと話す。
「撃った反動でだんだん照準が合わ…なくなってきてるんだよ。だから…急所外すんだよ、せっかくいい武器…持って…るのに扱う人…が…これじゃあ…ッく…!」
だが、吹雪の体に撃ち込まれた銃弾は多すぎる。
「それじゃあ、これはどうですの?…とどめをさしてあげますわ!喜びなさいな!」
うつ伏せの吹雪の肩を狙って迷いなく引き金を引いた。
「か…は…ッ!猿飛様…ごめんなさい…!」
致命傷になったのか、吹雪はそれっきり動かなくなった。
あやめが近づいて吹雪の頭を軽く足蹴にしても動かない。
吹雪の周りには、おびただしい量の血が流れていた。

「死んだ…。吹雪が…死んだ…ッ!このあやめの手で!このあやめの手でェッ!嬉しい…嬉しい…!これで半兵衛様はあやめのもの、もう邪魔者は消えた!この泥棒猫!」
数度吹雪を蹴り飛ばしたあやめは歓喜の涙を流した。
「やりましたわ、半兵衛様…。半兵衛様はあやめのもの…。ふふふ…あははははっ!あーはははははははっ!」
しばらくしてあやめは最後の一人、佐助が残っていたのを思い出した。
「たかが猿飛…。すぐに片付けて半兵衛様のもとへ行きますわ」
吹雪を倒したことに自信を持ったのか、あやめの目は輝いていた。
「確かあっちの方に猿飛がいると言ってましたわね…。弾の補充をしておかないと」
あやめは佐助がいるとされる方に向かう。
「っとその前に…。吹雪、あやめの白無垢姿を見せれなくて残念ですわ。さようなら吹雪。あっけなく死んでつまんなかったですわ」
名残惜しそうに手をひらひら振ると、あやめは佐助がいるとされる方へ飛んだ。

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あきゅろす。
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