まいふぇあれでぃ
001 はじめまして、こんにちわ 後編
「まぁま!」
きゃきゃ、と嬉しそうに手をばたばたさせる少女の台詞に思わず恭弥も骸も固まる。
先に回復したのは骸で、少女と恭弥を交互に見やってから問題発言をした少女を凝視した。
「…今…この子なんて言いました…?」
「…僕は産んだ覚えなんて無いよ」
「ですよ…ね…」
漸く言葉を発した恭弥も思わず少女をまじまじと眺める。
嬉しそうに恭弥にきゅうきゅうと抱き着く少女には欠片も見覚えなど無い。
問題の発言をした少女は話が分かっていないのか、嬉しそうに恭弥に抱き着いたまま。
どうするかと思考を巡らせれば、少女のポケットから覗いたハンカチが眼に入った。
小さな子供の持ち物だ、名前か何かが入っているかも知れないと思って取り出してみれば、案の定名前の刺繍が入っている。
『名前』
小さく入った刺繍に書いてあるのはそれだけ。
手がかりが消えてしまった事に溜息を吐く。
こうなったら本人から聞くしかないか、と嬉しそうに抱き着いて居る名前の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、君何処から来たの?」
「う?」
恭弥の言葉にきょとんとした名前に、今度は骸が問いかけた。
「名前は何処から来たんですか?」
「ぱぁぱ! あにょね、ちょおちょさんといっちょ!」
恭弥へのママ発言の次はパパ発言。
焦りそうになる表情を何とか押し殺して名前の頭を撫でて恭弥と顔を見合わせる。
これ以上名前から聞き出せないと悟ると、二人とも大きく溜息を吐いた。
「まぁま? ぱぁぱ? いちゃいいちゃい?」
小さな手を伸ばして二人の頭を撫でようとする名前に思わず笑みが零れる。
「小さな子供は周りに敏感らしいですが…どうやらそのようですね」
「仕方ない。この子の親が見つかるまでこのままだね」
名前の手が一生懸命二人を撫でたところで、骸は名前を顔の前まで抱き上げて額を合わせた。
「よろしくお願いしますね、名前」
「? あい!」
にこぉと嬉しそうに破顔する名前。
そんなに嬉しそうに笑われるとは思っていなかった恭弥は、擽ったそうに笑うと名前の頭を撫でたのだった。
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