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まいふぇあれでぃ
001 はじめまして、こんにちわ 前編
軽い任務を終えてアジトに帰る為に森を抜けている時の事だった。

人ッ子1人居ない筈の森の中に微かに聞こえる泣き声。
動物のそれというよりも子供の声に近い音を頼りに足を進めれば、少し拓けた所で一生懸命に泣く子供が目に入った。

「ふぁあああああん」

年頃は2,3歳だろうか。
柔らかそうな猫ッ毛を2つに結んだリボンは解れかけている。
敵の罠ではないとは言い切れず、ムクロウを飛ばして周りを伺うが、他には誰も居ないようでムクロウは難なく子供の頭上を旋回すると未だに泣く少女の前に降り立った。

「ふぁあ…とりしゃ…」

えぐ、と泣き止んだ少女が吃驚したように目の前の梟をみれば視線を受けたムクロウは、ふわりと羽を広げると主に向けて合図をするように数度羽をはためかせた。

「こんなところで、どうしたんですか?」

姿を表した青年に顔を向けた少女は涙に濡れた瞳をぱちぱちと大きく瞬かせると、漸く人に会えたのが嬉しいのか大きくしゃくりあげた。

「おやおや…迷子ですかねぇ?」

困りました、と言って少女を抱き上げて安心させるように背中を撫でてやれば、小さな手が青年の服をぎゅうっと握り締める。

「このままにしておくのは後味悪いですから…、取り敢えず連れていきますか」

青年の呟きに少女は目を大きく瞬かせて首を傾げた。

「う?」
「こんなところじゃなく、ちゃんとした部屋に行きましょうね?」

少女に分かりやすいように話せば、同意を示すように青年のスーツをぎゅうぎゅうと握る。
大人しく腕に収まる少女を持ち直すと、彼はアジトへと足を向けた。

「戻りましたー」

忙しなく動くカメラに挨拶しながら、青年は目的の部屋へと足を運ぶ。
長い廊下を歩いていると、このアジトの主の腹心と鉢合わせる。
青年の腕の中に収まる少女を凝視すると、青年の顔と少女を交互に見やった。

「骸さん…こちらの少女は一体…?」
「あぁ…森で拾いまして。取り敢えず捜索願が出ていないか確認して頂けませんか?」
「はぁ…解りました」

不思議そうにしながらもきちんと会釈していく辺りは主の教育が行き届いているからか、それとも彼の性格か。
まぁ、どちらにせよ直ぐに調べがつくことは目に見えている。財団の情報網と言うのはかなりのものだ。

アジトの主が居るであろう部屋に着くと、普段は見せないやんわりとした笑顔で迎えられる。

「おかえり、骸」

丁度趣味の時間だったのだろう、生け花を片手に微笑んだ恭弥は、骸の腕の中に居る少女を見て眼を丸くした。

「丁度帰ってくる時に見付けたんですよ。そのままにすると君の言う風紀が乱れそうだったので連れてきたんですが…駄目でしたかね?」
「…いや、駄目じゃないよ…」

恭弥が何か口を開くに先手を打って言葉を口にすれば、途端に黙る恭弥。
そしてそのまま眼を彷徨わせると、生け花を置いた手を骸へと差し出した。

「今の所、迷子とかそういうのは無かったと思うんだけど…ちょっと良く見せて」

骸の腕に大人しく収まっている少女を抱き上げると、目の前に持ってきてよくよく眺める。
くりくりとした大きな瞳が不思議そうに幾度か瞬くと、嬉しそうに恭弥に向かって小さな両手を伸ばした。

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あきゅろす。
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