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ドルチェ × ドルチ
番外 クリスマス/+20/妹視点
クリスマスくらい、みんなで過ごすのも悪くないでしょう?



周りのみんなが忙しくなる12月。
我が家のみんなも例に漏れず、屋敷内をぱたぱた駆け回っていて。
宿題も終わらせちゃったわたしは、ひとりぼんやりとしてるしかない。
クリスマスだからって、仕事もお休みになってなんてくれないから。

「パパンのお手伝いでも、しましょうか…」

確か、パパンなら書斎で書類整理をしていて、それ位だったらわたしにも出来るはず。
みんなが忙しそうなのに、わたしだけのんびりしてるなんてやっぱり嫌だから、何か手伝えるのなら手伝いたい。
朝からずっと缶詰のパパンに休憩のお茶を入れて一緒に持って、書斎の扉に立つ。
ノックをすれば、中から声が聞こえてきて、やっぱりここでずっとお仕事してたんだって判ったから。

「パパン、ちょっと休憩しませんかっ! あと、お手伝い、します!」
「おや、では折角ですし、休憩しますか」

パパンの好きな紅茶とチョコレートを出せば、にっこり笑って頭を撫でてくれる。
撫でられるのがすきなのはママン譲りで、パパンのおっきな手が撫でてくれるのが一番すき。
髪が崩れない様に優しく撫でてから、わたしにも座れるように椅子を持って来てくれるパパンはやっぱり優しい。

「パパンもママンも、みんな忙しそうです…」
「年の瀬、ですからねぇ…。ですが、この書類が終わったらゆっくりできますから、ね?」
「! はぁい!」

パパンが指差したのは1つの書類の山で。
でも、その山が終わったらゆっくりできるって、いうことならきっと今日中にはどうにかできるかもしれなくて。
紅茶を飲み終えたパパンは、時計を見やってからわたしに小さく笑いかけて記入済みの書類と判子を目の前に置いてくれた。

「それでは、桜弥は此方に判子を押して下さい」

1つ頷いて、言われたとおりに判子を押していく。
書斎には書類にサインすると音、判子を押す音だけが響く。
パパンが判子を押す書類を足して3回目が過ぎた時、ノック無く書斎の扉が開いて。
ノック無し、なんてするのは、我が家には1人しか居ないから。

「あ、桜弥は此処に居たんだね。骸、こっちは終わったよ」

お仕事の時にだけ着るスーツを着たママンがわたしの姿を視認して小さく笑ってくれて、わたしも思わずママンに小さく手を振る。
書斎に入ってきたママンは、書斎に備え付けてある簡易キッチンへと向かっていって。
それからお湯を沸かす音が聞こえてきて、わたしは手を止めて慌てて簡易キッチンへと向かえば、ママンはきょとんって首を傾げてわたしを見た。

「どうしたの、桜弥。あと少し、なんでしょ? お茶入れてあげるから、やってていいよ」
「だって! ママンだってお仕事、だったんでしょう? わたしが入れますから、ママンはゆっくりしてて下さいっ!」
「あのね…確かに仕事だったけど、桜弥だって勉強、してたんでしょ? 偶には僕が入れてあげるから、座ってな」

ほらほら、なんて言って、ママンに背中を押されてキッチンから出されてしまう。
わたしとママンの遣り取りを見ていたパパンは苦笑すると、あと少しの書類に目を向けて、また笑って。
そんなパパンにつられてわたしもちょっとだけ笑って、残りの書類に判子を押す。
ママンがお茶を入れてきてくれた時は、2人とも丁度終わって体を伸ばしてる時だった。

「2人とも、おつかれさま。疲れてるだろうからココアにしたけど、良かった?」
「有難う御座います、恭弥」
「うん。…ああそうだ、桜弥。恭雅もうすぐでこっち着くって言ってたよ」

ママンのその一言に、思わず凄い反応してしまうのは仕方ない事で。
だって、普段家に居ないおにいちゃんだから、会えるって言うのは凄く嬉しくて。

「おにいちゃん、お迎えに行きます!」

半分以上飲んでたココアを一気に飲み干して、キッチンのシンクへと入れてから廊下へと飛び出す。
廊下は走ったら駄目だから、早足で頑張って屋敷とボンゴレアジトの境目に向かえば、丁度扉を潜ったところにおにいちゃんの姿。
ボストンバック片手のおにいちゃんは、直ぐわたしに気付いたみたいで手招きしてくれる。

「桜弥、迎えに来てくれたの?」
「はい! おにいちゃん、明後日には直ぐ戻っちゃうんですか…?」

おにいちゃんはヴァリアーの幹部だから、月に1回、2日間だけ帰ってくるのでも一杯一杯らしくて。
大変だっていうのは判ってるけれど、でももうちょっと一緒にいたいなんて思ってしまう。
そんな思いが顔に出てたのか、おにいちゃんは苦笑するとぽむぽむ、ってわたしの頭を撫でると手を引っ張って大広間へと向かう途中に。

「年明けまで休暇貰ってきた。だから、暫くは家に居るよ」
「!! 本当ですかっ! 嬉しいですっ」

嬉しくて、繋いだおにいちゃんの手をぎゅぅって握れば、おにいちゃんも笑ってくれる。
大広間にはいつの間にかこっちに移動したパパンとママンが居て、お夕飯なのかお皿とフォークが並んでて。
草壁さんに促されて席に着けば、次々と美味しそうなディナーが出て来て、思わずパパンを見れば、クリスマスですから、なんて笑いかけられた。

「Buon Natale!」

パパンの一言でみんなでグラスを合わせて、食事を始める。
おにいちゃんは普段イタリアに居るだけあって、料理を食べる手付きも手慣れてて。
普段は静かな食卓も、今日だけはみんなで色んなお話をしながら食べるから楽しくて仕方ない。
デザートのケーキは、パパンの渾身の1作で、まるで一流のパテシエが作ったみたいに綺麗で、甘いものが実はだぁいすきなママンが凄く嬉しそうにしてる。
クリスマスだから、何処か行きたい、なんて思わないから、こうやってみんなで過ごせるだけで凄く嬉しくて。


みんなが楽しく過ごせれば、それで幸せ、なのです。

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